防衛省統合幕僚監部は23日、ロシア軍のIL38哨戒機1機が同日、北海道・礼文島付近の領空を3度にわたって侵犯したと発表した。航空自衛隊のF15戦闘機が緊急発進(スクランブル)し、赤外線誘導ミサイルなどを攪乱(かくらん)する「フレア(火炎)」を発射した。対領空侵犯措置としてフレアを使用するのは初めて。
木原稔防衛相は防衛省で記者団の取材に応じ「極めて遺憾」と述べ、外交ルートを通じてロシアに強く抗議し、再発防止を求めたと説明した。
林芳正官房長官は官邸で記者団に、訪米中の岸田文雄首相から国際法と国内法令に従って冷静かつ毅然(きぜん)と対応するよう指示を受けたと明らかにした。首相は米国をはじめとする関係国との緊密な連携や、国内と国際社会への適切な情報発信も求めた。
政府は官邸の内閣危機管理センターに情報連絡室を設置し、関係省庁で対応に当たった。
防衛省によると、ロシアのIL38哨戒機1機は23日午後1時3~4分ごろ、同3時31分ごろ、同3時42~43分ごろの計3度にわたって領空侵犯した。対応した空自機は無線を通じて呼びかけ、自らの機体を揺らして退去するよう警告を続けた。3度目の侵犯の際に、強い警告の意思を伝えるためにフレアを発射した。防衛省はフレアの発射は武器使用には当たらないとしている。
空自機による対領空侵犯措置では、旧ソ連軍機が昭和62年に沖縄本島や鹿児島県の沖永良部島、徳之島の上空に侵入した際、警告のため信号射撃を行った例がある。
防衛省によると、ロシア機に対する緊急発進回数は令和元年度以降の5年間、中国に次いで2番目に多い。元年度は268件だったが、5年度は174件。今年度は8月までに70件行われた。
8月下旬には、中国軍機が初めて長崎県の男女群島沖の日本領空を侵犯した。