政権交代期待高まる立民 「まっとうな政治」を目指すなら今こそ「立憲共産党」結党を

一筆多論

記者会見で東京都知事選に立候補すると表明した立憲民主党の蓮舫参院議員=5月27日午後、東京・永田町の党本部
記者会見で東京都知事選に立候補すると表明した立憲民主党の蓮舫参院議員=5月27日午後、東京・永田町の党本部

報道機関の世論調査によれば、自民党派閥パーティー収入不記載事件で批判を浴びる岸田文雄政権に代わり、立憲民主党などの野党による政権交代に期待が高まっている。だが、立民にその決意があり、準備が整っているとは言い難い。

衆院で100人弱の立民の次期衆院選候補予定者は約180人にとどまる。過半数の233人にさえ届かないが、泉健太代表は4月の衆院3補欠選挙全勝の勢いに乗り、目標と定めた200人から増やす意向だ。

ただ、実際は容易ではないので、他の野党との選挙協力が視野に入る。日本維新の会、国民民主党と軋轢(あつれき)がある中、有力な相手は共産党だ。

立民と共産は補選で連携の威力を存分に発揮した。東京15区では共産が候補を取り下げて支援した立民の新人が次点に約2万票差の4万9476票で勝った。選挙の構図は異なるが、過去の15区の結果を見ると共産候補は2万~3万票を獲得する力があり、共産が候補を出していれば結果は違っていた可能性が高い。

選挙戦では野田佳彦元首相が共産の小池晃書記局長と立民候補への支援を訴えた。保守系とされる野田氏と革命政党幹部の共闘は共産機関紙「しんぶん赤旗」で好意的に紹介された。

しかし立民は煮え切らない。泉氏は共産との連立政権を否定する一方、選挙協力の態度は曖昧だ。

共産は綱領で日米安全保障条約の廃棄、自衛隊の廃止を明記しているが、他党との連立政権に入る場合は綱領を「持ち込まない」と主張する。政権を担っても実現させない綱領に何の意味があるのかはともかく、国の根幹への姿勢が異なる党同士の国政選挙での連携は、立民が掲げる「まっとうな政治」ではない。まさかとは思うが、選挙だけは共産に協力してもらい、政権を獲得したら排除する暴挙をするはずもあるまい。

そもそも、肝心な立民の政権構想がよく分からない。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認した安保関連法について、立民は令和4年の政策集で「憲法違反」と断言した。特定秘密保護法は「廃止」だ。安保3文書にある反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有も、党文書で「賛同できない」と明記した。

立民政権になれば、米国が眉をひそめても、中国や北朝鮮が大喜びする憲法解釈の再変更などに着手するだろう。例示した立民の方針すべてに賛同する共産は心強い味方だ。何が何でも実現させなければ約束違反を繰り返した旧民主党政権の「悪夢」の再来になる。

さらに踏み込み、綱領を作り直して「立憲共産党」を結党したほうが分かりやすい。立民には「立憲共産路線て、なにが悪いんですかね?」(石垣のり子参院議員の5年5月のX=旧ツイッター)との声もある。共産は7月の東京都知事選に立候補する立民の蓮舫参院議員の勝利に向けて「全力を尽くす」(小池氏)という。もはや躊躇(ちゅうちょ)する障害はあるまい。

政治資金パーティー禁止法案を提出した立民は、幹部がパーティーを計画し、予定通りの開催を明言した。泉氏も容認したが、世論の批判を受けると一瞬で方針転換した。このまま政権交代したら旧民主党政権のドタバタ劇が再び起きることは必定だ。やはり心機一転、「立憲共産党」で出直したほうがいい。(政治部長兼論説委員)

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