<主張>リニア開業延期 川勝知事の妨害許されぬ

社説

静岡県の川勝平太知事=静岡県庁
静岡県の川勝平太知事=静岡県庁

JR東海が東京・品川と名古屋を結ぶリニア中央新幹線について、目指していた令和9(2027)年の開業を断念した。

29日、国土交通省で開かれた中央新幹線静岡工区に関する専門家会議で、丹羽俊介社長が明らかにした。

静岡工区の工事が、契約締結から6年4カ月が経過した現時点でも静岡県の反対で着工すらできていないためで、丹羽社長は「新たな開業時期は見通せない」と述べた。

誠に残念である。

リニア中央新幹線は、国鉄時代から研究・開発されてきた超電導リニア技術を使って時速500キロ運転を実現させ、東京―名古屋間を40分、将来的には東京―大阪間を約1時間で結ぼうというもので、平成26年に着工された。相模原市内にできる神奈川県駅(仮称)などは、姿を現しつつある。

最大のネックとなっているのは山梨、静岡、長野3県にまたがる総延長25キロに及ぶ南アルプストンネルだ。山梨、長野両県の工区は既に着工している。だが、川勝平太静岡県知事は当初から大井川の水量が減少するのを問題視し、「県民の生死にかかわることだ」「水一滴も県外流出は許可しない」などと反対して着工を認めていない。

大規模工事に伴う環境対策はもちろん必要だ。JR東海は工事中に出る水を大井川に戻すなど具体的な環境対策案を幾度も提示している。

それでも知事は頑(かたく)なに態度を変えない。知事の言動が科学的知見に基づいているとはみえないのはどうしたことか。

もともと難工事が予想されている南アルプストンネルが着工すらできていない現状では、3年後どころかいつになったら開通するかメドすら立たない。

リニア中央新幹線が大阪まで開通すれば、人口6600万人以上を擁する首都圏と中京、近畿圏が一体となった巨大都市圏が出現することになり、経済のみならず日本社会に与えるインパクトは計り知れない。いわば日本再生のカギを握る大プロジェクトが、一知事の「妨害」でストップしている現状は看過できない。

今こそ国の出番である。岸田文雄首相は、知事の説得をJRや国交省任せにせず、前面に立って国家プロジェクト推進に全力を挙げてもらいたい。

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