岸田首相の人権メッセージに相次ぐ疑問の声、 「差別の少ない国なのに」 擁護コメントも

岸田文雄首相(春名中撮影)
岸田文雄首相(春名中撮影)

岸田文雄首相が「共生社会と人権」を巡るシンポジウムに寄せたビデオメッセージに対して、SNS上で疑問視する声が相次いでいる。首相の発信は「偏見によって放火などの犯罪被害にあう事案が発生している」「雇用や入居で外国人が不当な差別を受けている」などと社会的少数者に差別的な待遇が横行していると強調して伝わりかねない表現ぶりとなっており、「日本は差別の少ない国だ」といった反論の声が上がっている。

「不当な差別が少なくない」

首相がビデオメッセージを寄せた3日のオンラインシンポジウムは法務省や全国人権擁護委員連合会などが主催。川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例に基づき、SNS上の差別投稿などを認定する市差別防止対策等審査会会長が条例について講演した。

首相はメッセージで「残念ながら、わが国においては、雇用や入居などの場面や、インターネット上において、外国人、障害のある人、アイヌの人々、性的マイノリティーの人々などが、不当な差別を受ける事案を耳にすることも少なくない」と語った。

「近年、外国にルーツを有する人々が、特定の民族や国籍に属していることを理由として、不当な差別的言動を受ける事案や、偏見により、放火や名誉毀損等の犯罪被害にまであう事案が発生している。次は自分が被害にあうのではないかと日々恐怖を感じながら生活することを余儀なくされている人もいる」と訴えた。

「周りの当事者に差別経験ない」

X(旧ツイッター)上では首相のメッセージに対し「世界で最もマイノリティーに対する差別の少ない国。マイノリティーが跋扈(ばっこ)し、マジョリティーがおびえている面さえある」「日本人は外国人、LGBT、アイヌなどを差別していません。侮辱するのは止めて」「何処に差別があるのか」「(慰安婦募集の強制性を認める)河野談話 に匹敵する」などと懐疑的な投稿が多い。

いなりずしの魅力を広める活動をしている「全日本いなり寿司協会」の「いなり王子」こと坂梨カズ氏も産経新聞の取材に「私も、私の友人である当事者たちも差別された経験などない。暴力的に特権や優遇を訴えているのはどちらだろうか。首相に(ビデオメッセージなどを)レクチャーしている人に偏りを強く感じる」と指摘した。坂梨氏は「おかま」であることを公表している。

一方、「首相の言っていることは正しい。差別する心は普遍的にある。乗り越える仕方を見つけていくのが共生という言葉に込められている」などと首相を擁護するコメントも一定数あった。(奥原慎平)

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