「わが国の技術で、月面へのアクセスに新たな道が開けた。海外にもさまざまな知見を提供していけるだろう」。小型実証機「スリム」の日本初の月面着陸が20日未明に成功したことを受けて開いた同日未明の記者会見で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川宏理事長はこう語った。
だが、晴れがましい席にもかかわらず表情はさえなかった。着陸は成功したが、直後に機体の太陽電池が発電していないことが判明。数日を予定していた月面での活動を、数時間に短縮せざるを得なくなったためだ。
JAXAの国中均・宇宙科学研究所長も、壇上で「辛口だが、ぎりぎり合格の60点だ」と苦虫をかみつぶし、集まった報道陣からは「着陸成功の記者会見だというのに、なぜそんなに表情が硬いのか」との質問が出た。
同席したJAXAの藤本正樹・宇宙科学研究所副所長は、「着陸後のスリムから送られたデータをすぐに分析し、機体がどんな状態にあるのかを一刻も早く知りたくて仕方がないからだ」と、気もそぞろの面持ちで説明。実際、スリム計画の責任者であるJAXAの坂井真一郎・プロジェクトマネージャは、データの分析を急ぐため、会見には出席しなかった。