枝野幸男さん、「上川陽子首相で電撃解散するのでは」立民も女性党首で迎撃?~夜の政論④

焼き肉を楽しむ立憲民主党の枝野幸男前代表=東京都新宿区四ツ谷の「龍月園」(酒巻俊介撮影)
焼き肉を楽しむ立憲民主党の枝野幸男前代表=東京都新宿区四ツ谷の「龍月園」(酒巻俊介撮影)

立憲民主党の枝野幸男前代表と、東京・四谷の老舗焼肉店「龍月園」を訪れた。「もう自民党は岸田文雄首相で次の総選挙を戦ってくれない」と語り、次の自民総裁には、サプライズとしてあの女性閣僚を抜擢すると予測する。首をすげ変えた直後に衆院解散を打たれたら‥。その場合の大胆な迎撃策に、同席した一同は言葉をのむ。

枝野さん「夜の政論」少しだけ動画で

知名度ないからかえっていい

同席した酒井充政治部長が「枝野さん、ちょっと悠々自適の時間が長すぎるんじゃないですか。代表退任から2年が経つんですよ」と差し込んだ。

「豊臣秀吉が関白になってから関ヶ原の戦いまで、徳川家康は何年待ちましたか」

枝野さんの問いに、松本学野党キャップが「15年くらい」と即答した。枝野さんは「以上だ。私は永田町の中でズレていて、そういう見方をするのだ」。今から15年も過ぎたら75歳になってしまいますが。

「じゃあ、鈴木貫太郎が首相になったのは何歳?」

酒井部長が「77歳」と即答した。「今の政治家は目先のことに先走りすぎだ。次の総選挙とか次の代表選とかね。どうでもいいことに走りすぎるから政治がよくならない。『バカは経験に学び、賢い奴は歴史に学ぶ』というでしょ」

狐につままれたような気分になっていると、枝野さんが「肉をもう少し食べたいな」とつぶやいた。すかさずおかみさんが「ミノは人気」と答える。

枝野さんのリーダー論を聞いて、ふいに岸田文雄首相の顔が浮かんだ。私が知る首相は頑固で、政策面で党内の慎重論に妥協したことは少ない印象がある。他方、9月の内閣改造・自民役員人事では派閥の意向を聞きすぎて、結果的に自らの首を絞めた気もする。

自民では、ネクストバッターサークルで茂木敏充幹事長が素振りしていますが。

「岸田さんが次の総裁選に出ないとしても、茂木さんにいくかなあ。僕は上川陽子外相が出てくる気がしてならないんだ」

枝野さんの番記者を務める児玉佳子記者が「知名度という点は大丈夫ですか」と尋ねたが、枝野さんは「知名度がないからかえっていいんだよ」と即答した。

上川さんは法相時代、オウム真理教事件に絡み13人の死刑執行を命じたことで知られ、決断力と責任感は高い評価を得ている。9月人事では外相に抜擢され、今や最も注目される閣僚だ。ただ、確かに次の首相候補としてまともに取り上げられたことはない。派閥のリーダーなど、仲間を束ねるような研鑽も積んでいない。

しかも、上川さんは首相が会長を務めていた宏池会(岸田派)所属だ。自民内で同じ派閥から首相を連続して出すのは忌避される向きもある。酒井部長は「岸田さんは上川さんを後継者とは思っていない」と指摘したが、枝野さんは「だからこそ、上川さんがあると思う。だれも彼女を宏池会と思っていないでしょう。だから候補になるのでは」とたたみかけた。

代表候補は辻元、蓮舫、西村各氏‥

女性党首同士の対決?次期衆院選を大胆に予測する立憲民主党の枝野幸男前代表(酒巻俊介撮影)
女性党首同士の対決?次期衆院選を大胆に予測する立憲民主党の枝野幸男前代表(酒巻俊介撮影)

仮に岸田さんが辞めて上川さんが総裁選に出馬し、地滑り的勝利を収めたとする。直後の上川政権が衆院を解散したらー。これが立民にとっては最悪のシナリオでしょうか。

「そのとき、うーん、こちらも女性党首を担ぐか。後出しの形になるし、安直かなあ。これまでの経験や実績からいって、辻元清美参院議員や蓮舫参院議員、西村智奈美前幹事長か」

ときの流れが一瞬止まった。劇薬には劇薬ですか。「現状では数少ない女性リーダーを、そんな安直に利用しちゃいけないんだよなあ」

うーん。「意外と冗談じゃないかもな」と、酒井部長がつぶやいた。

「上川さんは優秀だし、自民の中ではまともな議員だ。でも、政治家として揉まれていない。就任後、半年くらいでボロが出るような気もする」

上川さんが外相に就く前は、自民の幹事長代理として茂木さんに仕えていた。ある党幹部は当時、上川さんに「党内の政局全般を学ばせたい」と狙いを語っていた。

「50歳を超えた後に政局を学ばせ始めるって‥厳しいと思うな。そういうポジションに就けても、できない人は変わらない。立民でも中堅・若手を育てるために『それなりのポジションに就けなければならない』といわれることがある。ただ、できる奴はそんなことを考えなくても『ここに就けよう』という話に自然になる」

酒巻俊介カメラマンが「若い奴を育てるというが、『育てるってなんだろう』と思ってしまう」とうなずいた。

「そう。冷たいといわれるが、『勝手に育って来いよ』と思ってしまう。ましてうちは企業じゃない。一国一城の主である国会議員の商店街連合会だ。誰かに育ててもらおうなんて思うなよ」

ジャズピアノの軽快なBGMと、カルビを焼く音だけが卓上に響く。

あえて聞きますが、立民を立ち上げて代表になったときは、政権を取れると思ったのですか。

「もちろん」

首相になる覚悟はあったのか。

「そうでなければ辞めるよ。もう1回政権を取って、首相になるつもりでやっている。その可能性がなくなったと思ったら、その瞬間に、私は引退しますから」(聞き手 水内茂幸)

枝野幸男さんの「夜の政論」(番外編)は12月13日午前11時30分にアップします。

【龍月園】東京都新宿区四谷1ー20 玉川ビル1F。電話03ー3357ー1088。定休日は日曜。

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