不法移民のルワンダ移送は「違法」 英最高裁が判断

6月2日、ロンドンのホテル前で、居住環境について抗議する難民申請者とみられる人々(ロイター)
6月2日、ロンドンのホテル前で、居住環境について抗議する難民申請者とみられる人々(ロイター)

【ロンドン=黒瀬悦成】英最高裁は15日、難民申請をするために英国にたどり着いた不法移民を東アフリカのルワンダに移送する英政府の計画を違法とする判断を全員一致で下した。厳格な移民政策をとってきた保守党のスナク政権に大きな打撃となるのは確実で、来年にも実施される総選挙で移民流入の阻止を公約に掲げる同党の選挙戦略にも影響を与えそうだ。

昨年4月にジョンソン英政権(当時)は、フランスから英仏海峡をボートで渡るなどして英南部沿岸から不法入国した者を国内に滞在させず、直ちに母国または「安全な第三国」に移送する計画を発表。第三国にはルワンダを選定し、移民の受け入れと引き換えに経済発展支援として1億2千万ポンド(約230億円)を投資すると表明していた。

これに対し、移民側が政策は違法だとして提訴し1審は「合法」としたものの、2審は「ルワンダは安全な第三国とは呼べない」として、非人道的な扱いを禁じる欧州人権条約に違反すると判断。政府はこれを不服として上訴したが、最高裁はこの日、「ルワンダで移民らが迫害を受ける恐れがある」と指摘して2審の判断を支持した。

最高裁は一方で「(計画では)迫害のリスクが取り除かれる必要がある」としており、英政府が今後、改訂版の移送計画を出す余地も残された。

スナク英首相は判断を受け「不法移民の阻止に向けてあらゆる手段を講じる」との声明を発表した。

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