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性に悩む男性に医学知識を 看護師マッキーさん 新著「教養としての射精」が話題 

男性特有の健康問題「メンズヘルス」の啓発に取り組むユーチューバー、看護師マッキーさんが初の単行本『教養としての射精』(ライフサイエンス出版)を著した。9月末の発売前に重版が決まった話題作が扱うテーマは、男性器まわりの困りごと。タブー視が根強い事柄に、マッキーさんが正面から向き合った背景には、表に出にくい男性たちの生きづらさがあるという。今月19日の「国際男性デー」を前に、男性の性の悩みに目を向けたい。

「教養」と「射精」。一見、結びつきづらいワードが書名に並ぶ。

「このタイトルに私の思いを込めました」と話すマッキーさんは、小児科や泌尿器科などで10年以上勤務し、現在はフリーランスで活動する看護師だ。毎日午後10時に配信するユーチューブチャンネルで、メンズヘルスの情報発信を続けている。

執筆動機はユーチューブに寄せられる男性たちの赤裸々な声だった。

「99%が『下着の中』のこと、具体的には射精と自慰行為に関する悩みです。男性たちが不安を感じ、私のユーチューブにコメントを寄せてくれるのは、そもそも性機能の『正常』が何か、医学的な知識を持っておらず、しかも誰にも相談できないからだと気付き、強い問題意識を持ちました」

無意識の思い込み

著書の目次には「陰茎」「勃起」「自慰行為」「ED」といった言葉が連なる。卑猥(ひわい)な言葉と受け止め、驚く人もいるだろう。

「男性機能はさまざまな疾患に気が付く健康のバロメーター」と語る看護師マッキーさん(篠原那美撮影)
「男性機能はさまざまな疾患に気が付く健康のバロメーター」と語る看護師マッキーさん(篠原那美撮影)

だがマッキーさんは問いかける。「そこにはアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)が潜んでいるかもしれません」

日本ではそもそも性教育が乏しく、生物学的な男性の体の仕組みや機能、役割を科学的に学ぶ機会が男女ともに少ない。性に関する情報源がアダルトコンテンツに偏るケースも多い。そこから医学的な知識を得るのは難しい。

「実は男性機能はさまざまな疾患に気が付く健康のバロメーターでもある。健康を守るための教養、ヘルスリテラシーの向上に役立ててもらいたいという思いで、執筆しました」

親しみやすい文体

これまでマッキーさんのもとに寄せられた疑問、質問から50項目を選び、Q&A形式で回答した。

看護師マッキー著『教養としての射精』(ライフサイエンス出版)の表紙
看護師マッキー著『教養としての射精』(ライフサイエンス出版)の表紙

「56歳男性。体重が100kgまで増え、勃起力が衰えました」など男性たちのリアルな声を差し込むことで、「自分だけが悩んでいるのではないことを知ってもらうことにこだわった」という。

親しみやすい文体だが、記述の裏付けは徹底している。版元は医学専門書を扱う出版社。「最新の研究論文にあたるなど参考文献は100以上に上った」と担当編集者。「息子の性教育に役立てたい」という女性の購入者も多いそうだ。

マッキーさんの望みは、この本が病気の早期発見に役立つことだという。

「男性特有の症状を専門に診てくれるのは泌尿器科ですが、受診をためらう男性は多い。男性が自身の健康に関心を持つきっかけになればうれしいです」

(篠原那美)

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