デジタルの世界で不老不死に AIであなたとそっくり「クローン」公開へ

今年5月、説明会で公開されたデジタルクローンのデモ画面(オルツ提供)
今年5月、説明会で公開されたデジタルクローンのデモ画面(オルツ提供)

AI(人工知能)に自分自身の発言や思考法を学習させ、口癖までそっくりな「デジタルクローン」を生成するサービスを、AI企業のオルツ(東京都)が開発した。利用者の死後もクローンは残り、家族や友人らの「相談相手」になることができる。8月中にも日本語、英語、中国語に対応したバージョンを発売する予定で、将来的には誰もが自分自身のクローンを作れるようにしていく。

サービス名は「CLОNEdev」(クローンデブ)。利用者の顔や声、さらにはSNSに投稿した文章や著作もAIに読み込ませ、本人の考え方や価値観、発言のパターンを学習させる。生成されたクローンは画面上に映し出され、本人の顔、声、言葉遣いで表情をつけて話し、他の人と対話することもできる。

生前のデータを使うことで、亡くなった人とのコミュニケーションも疑似的にとれるようになる。同社の西川仁・CTO(最高技術責任者)は「発想自体は真新しいものではない。例えばミイラは、将来の復活を前提に作られたもの。データを保管しておけば故人を再現することが、テクノロジーで可能になってきた。ある種の『死後の復活』に近く、社会的な意義がある」と説明する。

価格は非公開だが「AIの計算にはリソースが必要なため、一定のコストを負担できる方になる」(西川CTO)としており、サービスは富裕層から広げていく。

これまでのところ問い合わせは企業の経営者からのものが多いといい、創業の精神を後世に残したり、生前であっても自らの「分身」を各拠点に置きたいニーズがあったりするためとみられる。西川氏は「自身が企業の顔、ブランドになっているような方には有効になる」と説明する。

一方で、AIに「人格」を持たせることには、悪用への懸念も大きい。

昨年9月、安倍晋三元首相の国葬の直前、ネット上に安倍氏の肉声をAIで再現したとされる動画が投稿され、物議を醸した。今年4月には、自動車のF1シリーズで7度の年間総合優勝を果たし、スキー事故で重傷を負ってからは公の場に出ていないミヒャエル・シューマッハーさんのAIによる偽インタビューが独週刊誌に掲載された。

西川氏は悪用の防止には「まずはデータを使用する権利を有している人が誰なのか、明確にすることが必要ではないか」と話した。(織田淳嗣)

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