少年事件でわが子の命を奪われた遺族らでつくる「少年犯罪被害当事者の会」は28日、東京都内で記者会見し、加害者側からの賠償や謝罪の有無などについて、会員の遺族に実施したアンケート結果を公表した。賠償の支払いが請求額の2割以下しかないとの回答が半数に達し、謝罪がないとする遺族も半数を占めた。謝罪を受けたとする遺族も全員が「謝罪に誠意はなかった」とした。
アンケートは、加害者の賠償金不払いについて取材する産経新聞の要請などを受けて昨年実施。同会で活動する20遺族のうち、事件から11~31年が経過した16遺族が回答を寄せた。
アンケート結果によると、加害者側から民事訴訟などで確定した賠償の支払いについて、全くないが1遺族、請求額の1%以下が3遺族、1%超~20%以下が4遺族。支払いが滞った場合、加害者側に「自分で督促している」が3遺族、「弁護士を通じて督促」が5遺族、「何もできていない」が6遺族だった。
また、謝罪の有無について問うたところ、回答した14遺族のうち「ない」としたのが半数の7遺族。「あった」とした7遺族も全員が「誠意が感じられたとはいえない」とした。
同会の武るり子代表(68)は会見で「加害者から誠意ある謝罪や損害賠償が支払われていないことがはっきり分かった」と指摘。「加害者は裁判で『一生かけて償う』と謝罪するが、守られていない。加害者は自分の罪と向き合うことが重要だ」と訴えた。
賠償金不払いや謝罪がない背景に、少年院での矯正教育が不十分なことなどがアンケートで判明したとして、同会は28日、被害者支援の充実を求める要望書を斎藤健法相や谷公一国家公安委員長らに提出した。
「賠償金(全額)が支払われて当然だと思っていないが、なぜ被害者側が自ら行動を起こさなければならないのか」。武代表は会見で、遺族の苦しい立場をこう強調した。
武さんは平成8年11月、高校1年だった長男の孝和さん=当時(16)=を他校生の暴行によって失った。その後、加害者側を相手に民事訴訟を起こして賠償は確定したが、支払いはほとんど進んでいない。「子を殺された相手に自ら連絡を入れることには葛藤があり、怒りも苦しみも増すことになる。相談できる弁護士が少ないことも問題だ」と話す。
20年に当時19歳の少年に故意に車ではねられ、次男を殺害された千葉県成田市の沢田美代子さん(66)も会見に同席し、「民事裁判に勝訴したら払ってもらえていると(一般的に)思われているが、実際のところは払われていない」と訴えた。
自身の民事裁判では自分で内容証明を出したり、裁判所に足を運んだりと負担が大きかったと振り返り、加害者側に支払い能力がないケースが多いとも指摘。「国の方で何かできないのかという思いだ」として、国による賠償金の立て替え制度創設などを求めた。