司馬遼太郎生誕100年

ファンが魅せられる「知らなかった歴史や文化」 菜の花忌シンポ来場者に聞いた好きな作品

第26回菜の花忌シンポジウムで菜の花を受け取る来場者たち=12日午後、大阪府東大阪市(安元雄太撮影)
第26回菜の花忌シンポジウムで菜の花を受け取る来場者たち=12日午後、大阪府東大阪市(安元雄太撮影)

「学ぶきっかけになる」「人生の転換期にどう立ち向かえるか学べる」-。国民作家、司馬遼太郎さんが晩年を過ごした大阪府東大阪市で12日に行われた「第26回菜の花忌シンポジウム」のテーマは「生誕100年 司馬作品を未来へ」。会場を訪れた司馬ファンにも、好きな作品や次世代に読んでほしい作品を尋ねると、熱のこもった回答が寄せられた。

「司馬さんの本には私たちが知らなかった歴史や文化が書かれている」。京都府南丹市から夫婦で訪れた国府常芳さん(62)は司馬作品の魅力についてこう語った。

お気に入りの一つが「街道をゆく」で「読んでいると、その地域に実際に訪ねてみたくなる。学ぶきっかけになるのが司馬さんの作品で、若い人たちにも読んでほしい」と語った。

司馬作品を愛読していた国府さんが、その魅力を家族で語っているうちに引き込まれていった妻の明子さん(61)は現在、日露戦争を描いた群像劇「坂の上の雲」を読み返している。ロシアによるウクライナ侵略がきっかけで、明子さんは「ロシアとはどんな国なのか改めて気になった。さまざまなことを知ることができるのが司馬さんの本だと思う」と話す。

札幌市から家族で訪れた会社員、佃志保さん(42)は、戦国期に四国の覇者となった長曾我部(長宗我部)元親の生涯を描いた「夏草の賦」で、「歴史の悲哀が濃厚に描かれていて心が魅かれた」と話す。

堺市の男性(69)の一押しは、天下分け目の関ケ原の戦いを描いた「関ヶ原」だ。「人生の転換期にどう立ち向かっていくのか」と自分に引き寄せて考えることができたという。

兵庫県尼崎市の会社員、宮島広樹さん(35)は江戸期の海商、高田屋嘉兵衛を描いた「菜の花の沖」が好きな作品で「武士以外を描いた町人文化を書いていて、当時を知る上でも面白い」と説明した。

「生前の司馬さんを喫茶店や駅でよく見かけて以来のファン」と語る地元・東大阪市のパートの女性(65)は小学生向けのエッセー「二十一世紀に生きる君たちへ」を挙げた。「情報過多の時代で、大人でも惑わされる。見極める力、考える力が司馬さんの本を読むことで育まれるのではないか」と話した。

菜の花忌に地元・東大阪でシンポ 作家・学者が魅力に迫る

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