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iLAC(アイラック)社長 佐藤孝明さん(62) 日本人全ゲノム解析、海外流出阻止

iLAC(アイラック)の佐藤孝明社長
iLAC(アイラック)の佐藤孝明社長

――すべての遺伝情報を解析する全ゲノム解析を展開している

「全ゲノム解析では海外に後れを取っていた日本の状況を変えようと、筑波大発ベンチャーとして学内に設立した。ゲノム解析は前処理に人手がかかり、人為的ミスも多いが、当社は全自動前処理ロボットを導入して高い精度を維持し、解析能力は年1万8000人分。国内トップレベルの実績をあげている。島津製作所との協業で、血液中の代謝物なども合わせて複合的に解析できるのが当社の強みだ」

――令和2年に伊藤忠商事の出資を受けた。同じ伊藤忠グループで健康診断代行などを手掛けるウェルネス・コミュニケーションズ(WCC)とも今夏から連携している

「WCCが持つ健診データとゲノム解析データを組み合わせて、がんなど疾病の予防、早期発見・治療につなげていく。個人に最適な薬や治療につながる個別化精密医療の実現を目指していく」

――政府は9月末に決めた経済安全保障推進法の指針でゲノム学を特定重要技術とした

「日本は島国のため、日本人のゲノムは外国人と比べて均質性が高い。創薬に必要なゲノム情報が外国人1万人分に対し、日本人は1000人程度で済む。世界中から注目されているが、中国などに解析が委託されてきた。日本人のゲノム情報が海外流出して生物兵器に悪用される恐れがあり、安全保障上、大問題だと政府に訴えてきた」(遠藤一夫、写真も)

さとう・たかあき 北大水産卒。昭和57年味の素入社。米コロンビア大医学部、島津製作所、京大薬学部・最先端創薬研究センター連携教授などを経て、平成24年iLACを設立し社長。現在、筑波大プレシジョン・メディスン開発研究センター長(特命教授)、島津製作所シニアフェローも務める。愛媛県出身。

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