「今の時代で決めるものではない」 安倍元首相の銃撃現場、計画通り整備

安倍晋三元首相が銃撃された現場周辺=7月8日、奈良市(本社ヘリから)
安倍晋三元首相が銃撃された現場周辺=7月8日、奈良市(本社ヘリから)

安倍晋三元首相の銃撃事件で、奈良市の近鉄大和西大寺駅北側にある現場をめぐり、同市の仲川げん市長は4日、記者会見で慰霊碑などを置かずに当初の計画通り、歩道と車道を整備すると発表した。周辺に花壇を整備し追悼の場とする方針だが、事件の概要を説明するプレートなども置かないとしている。

仲川市長は「渋滞緩和や歩行者の安全といった整備計画の目的を重視した」と説明。その上で「花壇が安全や平和の願いの対象になる。事件を記憶する場となるのでは」と話した。

現場一帯では、7月8日の事件発生前から、市が管理する駅前道路の改良も含めた周辺整備が進められていた。市は事件を受け、①現場を車が通行できない地帯のままにする②当初計画を修正して歩道を広げ、慰霊碑などを設置する③当初計画を維持して車道とし、慰霊碑などは設けない―の3案を検討してきた。

その上で、有識者らから意見を募ったところ、「交通に支障が出る」「通るたびに事件を思い出す」などと慎重な意見が相次ぎ、市は渋滞緩和や歩行者の安全といった計画の本来の目的を重視することにした。

仲川市長は「賛成反対とさまざまな考えがあり、個人に絞った形で表現すると世論の分断を生むという面があった」と説明。一方で「100年、200年先に歴史を振り返るとき、(慰霊碑などを)考えてもらうのは可能。今の時代で決めるものではないのかなと思う」と述べ、判断を後世に委ねる考えを示した。駅前整備は本年度中に終わる見通し。

市によると、安倍氏の政治家としての評価が定まらない中で慰霊碑などを設置することに、市民らから疑問の声が上がっていた。4日昼時点で計画変更に賛成の意見が34件、反対意見が69件寄せられていた。

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