立憲民主党が提出した細田博之衆院議長に対する議長不信任決議案が自民、公明両党などの反対多数で否決された。
立民が同時に提出した内閣不信任決議案も自民などの反対多数で否決された。
細田氏の場合、否決されたからといって、議長としての資質に疑問符のつく数々の言動が、何もなかったことにはなるまい。
一票の格差を是正するための衆院選挙区「10増10減」は、平成28年の法改正で導入が決まった計算式「アダムズ方式」に基づく。だが、細田氏は中立の立場を忘れてこれに異論を繰り返した。女性記者へのセクハラ疑惑もある。
昨年の衆院選をめぐり、労務実態が不明朗な状態のまま、地方議員に労務費を支払った公職選挙法違反の疑惑も新たに浮上した。
セクハラ疑惑については「事実無根」とするコメントを出しただけである。公選法違反疑惑についても細田氏は、公の場で国民に堂々と説明すべきである。
国会が来週会期末を迎えるのをいいことに問題をうやむやにしようというのなら、三権の長として無責任である。細田氏は恥を知るべきだ。猛省を促したい。
立憲民主党は提出理由について細田氏が10増10減を否定する発言を繰り返していることや、セクハラ疑惑について「公の場で説明していない」ことを挙げた。
解せないのは、細田氏が疑惑について否定するだけで一度も説明していないにもかかわらず、自民などが反対したことだ。信任するかしないかの話なのに、国民民主党と日本維新の会は、細田氏がセクハラ疑惑を否定していることなどを理由に棄権し退席した。
与党内には細田氏への不信任決議案について、参院選を前に、立民などがイメージダウンを狙って仕掛けてきたとみる向きもある。時節柄、野党側にそうした思惑があるのは否定できないだろう。だが、それは問題の本質から目をそらす方便に過ぎない。
問われているのは、細田氏が女性記者らにセクハラを繰り返した疑惑であり、国会の決定に異論を唱える非常識な発言である。議会の決定を自ら覆す発言は議長として著しく適性を欠く。
細田氏を議長に推した古巣の自民の責任は重い。不信任決議案は否決されたが、細田氏に説明を促していくべきである。