新型コロナウイルス特別措置法に基づく蔓延(まんえん)防止等重点措置の18都道府県での期限延長をめぐっては、4日の基本的対処方針分科会(尾身茂会長)で経済系の専門家ら2人が反対を表明し、医療系の専門家との足並みの乱れが改めて印象付けられた。軽症が多いが感染力が強いオミクロン株を前に、政府は社会経済活動との両立に向けた「出口戦略」を描けずにいる。
「重点措置の延長に反対する。私権制限を続けなければならないほどなのか」
分科会で大阪大の大竹文雄特任教授(行動経済学)はそう表明した。「感染抑制効果が小さいにもかかわらず、莫大(ばくだい)な税金を使って飲食店への協力金を支払う合理性がない。子供や若者らの人生へのマイナスの影響が大きい」とも訴えた。
尾身氏によると「感染症の専門家の多くはリバウンド(再拡大)する可能性が高いという認識をもっていた」という。実際、オミクロン株より感染力が強いとされる派生型「BA・2」への置き換えと、卒業式、入学式などの社会的行事が増える桜の季節が重なることへの懸念は強い。
厚生労働省に助言する専門家組織の有志は2日、「オミクロン株感染の致死率は、季節性インフルエンザよりも高いと考えられる」との見解もまとめている。だが、大竹氏は「オミクロン株が相当程度危険だといえるのか疑問だ」と譲らなかった。
インフルエンザとの比較に関しては、医療関係者の間に「コロナとインフルエンザは別の病気だ。比較すること自体がナンセンス」との反発もあり、専門家の足並みは乱れるばかりだ。
濃厚接触者の扱いも焦点となっている。濃厚接触者の自宅などでの待機期間は当初14日間だったのを、7日間に短縮したが、社会機能の維持に支障が生じているとの声はいまなお強い。
専門家有志は2月24日、「濃厚接触者特定と行動制限が社会活動維持の弊害の要因になる」として、濃厚接触者への対応の転換を提言。感染拡大のスピードが速いオミクロン株の場合、特定しても「連鎖は止められない」と指摘した。
新型コロナ対策分科会は「ワクチン・検査パッケージ」の再開を議論しているが、賛否は割れたままだ。
厚労省幹部はこう語る。
「どれくらいリスクを甘受し、不便を受け止めていくかという中で、何ができるかが決まる。これは政治の話かもしれない」(坂井広志)