12シーズンぶりにJ1の舞台に戻ってきた京都サンガが始動した。生まれ故郷の京都で2季目の指揮を執る曺貴裁(チョウキジェ)監督の下、初日から京都府城陽市のグラウンドで、強度の高い練習を実施。「全試合、勝利を目指してやっていくことを約束する」と話す闘将は、全員がハードワークする強固な組織づくりには定評がある。ボールを「ハントする(狩る)」アグレッシブな戦いで昨季のJ2を席巻した京都サンガが、今季のJ1でも旋風を巻き起こすかもしれない。
初日から頭を使う練習
報道陣に公開された8日の初練習。ペース走やストレッチ体操などで入念に体を温めた後に行われたビルドアップ(攻撃の組み立て)のトレーニングは独特だった。多色ビブスを用いてグループ分けを行い、ボールをつなぐビブスの色の順番を「緑-青-赤」などと固定。ミニコートでボールのタッチ数を限定するとともに、パススピードを速めて連係強化を図った。「頭を休めないこと」などと曺監督からゲキが飛ぶ中、選手らは鋭い動きでボールをつないだ。
同日午後に京都市内のホテルで行われた新体制発表会で登壇した新加入の選手に初練習の感想を尋ねると、かえってきたのは「頭を使わないといけないなと思った」(DFアピアタウィア)▽「少しこんがらがったところもあったので、整理して臨みたい」(MF金子)▽「テンポの速い練習が楽しかった。頭も体も疲れる練習だった」(GK松原)-といった答え。曺監督は「僕は考えなくなると、成長しないと思っているので…」と、選手の反応を歓迎した。
「シャトルのプレー」を意識
10日の練習もユニークだった。体に負荷をかけるサーキットトレーニングなどを行った後、曺監督はおもむろにバドミントンのラケットとシャトルを取り出すと、次のように選手に説明した。
「(ラケットでシャトルを打つと)すごいスピードで上がっていくが、ずっと同じではない。徐々に落ちていく。これから『シャトル』という言葉を使っていこうと思う。ボール保持や位置取り、攻撃の組み立てが大事だといわれるが、このピッチの中で誰かのビシッとした動きがないと、いくらボールを保持しても意味がないと思う。どこかでテンポを変えないといけない。そうしたシャトルのプレーが何回できるかというイメージで、これからの練習に取り組んでほしい」
具体的には、タッチ数を限定したミニゲームで、選手がコートの内と外で次々と入れ替わった。個人的な印象では、元日本代表監督のイビチャ・オシム氏が取り入れていた練習にも似ている気がする。ゲーム中に曺監督は「シャトルのプレー、どこかで崩すイメージを持つ」「シャトルをサポートするプレーを怠らない」「パスを出した後のサポートや追い越す動きを怠らない」-などと選手に指示。攻守がめまぐるしく入れ替わるミニゲームで、選手らはギアの入れ替えを意識し、初練習から3日目とは思えないほどの激しいプレーを披露した。
サンガのオリジナルを生み出す
練習後、オンラインで囲み取材に応じた新加入のFW豊川は「監督がやりたいサッカーを自分の中で落とし込んでいかないといけない。自分の良さを出したい」、MF金子は「(曺監督のサッカーは)アグレッシブに攻守の切り替えを速くし、スピーディーにプレーするのが特徴だと思う。うまく適応していきたい」と抱負を話した。
一方、曺監督は「継続することも大事だが、続けていくだけではダメだと思う。ボール保持率や位置取り、切り替えの速さは大切だが、そういうのは当たり前。目に見えないところで、自分たちの軸でみせるものを選び出していきたい」と強調。その上で、「J1仕様というのではなく、サンガのオリジナルを生み出していきたい。みようみまねも大事だが、自分たちの信じた道を進めたい」と、新たな「サンガスタイル」をつくる意気込みを口にした。
昨季のJ2で2位に入ったメンバーから14人が抜け、12人が加入した。31失点はリーグ最少だが、決して引いて守りを固めるチームではない。過去、J1では2002年前期の6位が最高位。このときもJ2からの復帰1年目だった。
「(始動時の選手の状態は)昨年と比べてもいい。ウチのテンポの速さに戸惑いをみせた選手もいるが、今はいうことはない」と曺監督。国内最高峰の舞台で、どんなサンガスタイルを披露するか。開幕が待ち遠しい。