酒の安売りを規制するため、議員立法で出された酒税法改正案などが衆院を通過し、今国会で成立する見通しだ。
過度な安値販売を禁じる基準を設け、違反業者には罰金や免許取り消しなどの処分を科す。量販店による安売りから、地域の小規模店を保護するのが狙いだという。
しかし、厳しい罰則を恐れて安売り業者が萎縮し、経営努力による適正な値引きまでやめてしまう恐れはないか。そうなれば、安くて多様な商品を求める消費者の利益を損なう。問題の多い法案と言わざるを得ない。
ライバル店の排除につながるような不当廉売は、独占禁止法に基づき、公正取引委員会が取り締まる仕組みがすでにある。
酒の安売りだけを新たに規制するのは、選挙の際の特定業種からの集票を意識したからではないのか。だとすれば、消費者の利益とは無関係だ。
改正案では、財務相が酒類販売の公正な取引基準を設け、仕入れ原価を下回るような安売りを禁止する。これを守らない業者は名前を公表したり、改善命令を出したりする。それでも効果がない場合、50万円以下の罰金や販売免許の取り消しに踏み切る。