QSTの産学連携について
当機構(QST)では、量子科学技術に関する研究開発や放射線の人体への影響、被ばく医療並びに放射線の
医学的利用に関する研究開発等の科学技術の水準向上を目指して、国内外の研究機関・大学産業界との連携や
人材交流を図り、量子科学技術等に関する研究開発を総合的に行うとともに、その成果を社会に還元する活動を行っています。
共同研究の推進
民間企業や大学、公設研究所など外部の機関(外部機関)の研究者と対等の立場で、共通の課題について共同で研究を実施することにより、
優れた研究成果を創出し、得られた研究成果を社会に還元するため、共同研究を積極的に推進します。
共同研究/委託研究に伴う特別試験研究に係わる税額控除制度
企業等が当機構と共同研究または委託研究を行った場合「特別試験研究費税額控除制度」を活用することができます。
制度利用に関しては「特別試験研究費の額の確定手続マニュアル」 をご確認ください。 認定申請書の様式は、
経済産業省のウェブサイト「特別試験研究費税額控除制度の報告書様式・申請書様式について」から入手してください。
特別試験研究費の額の確定手続マニュアル(外部公表用) [PDFファイル/81KB]
※特別試験研究費の額の認定を受けることを予定されている場合、上記マニュアルをご確認いただくとともに、
契約を締結する前にご相談ください。
連携重点研究制度による共同研究
将来の創造的な科学技術の基盤となる基礎的研究活動の効率的推進を目指し、QSTと国立研究開発法人日本原子力研究開発機構、
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科原子力専攻が共同で研究を行う制度です。
(上記の三者以外の機関が共同研究に参加する場合もあります。)
公的研究費の使用ルールに関する相談窓口
共同研究、委託研究等に係る研究資金を当機構から受け入れる場合等において、公的研究費の使用に関するルールや
事務処理手続についての相談を受け付ける窓口を下記のとおり設置しています。
イノベーション戦略部 研究協力推進課
Tel:043-206-3146,3023 Fax:043-206-4061
E-mail:[email protected]
知的財産の実用化促進
当機構が保有する特許など知的財産権やノウハウの産業界による実用化、機構が保有する技術等による受託試験、
技術指導の実施を促進しています。
知的財産の実用化事例
機構では、研究成果を知的財産として管理し、実用化を促進しています。
ここでは製品というかたちで社会に還元されている研究成果の例をご紹介します。
タウタンパク質の蓄積を画像化するPbb3
特許ライセンス
放医研が開発した、認知症の神経細胞死に直結するタウタンパク質に集積する化合物(Pbb3)を用いたPETイメージング薬剤を、株式会社ナード研究所が製品化しました。
これにより、発症初期からの認知症の鑑別診断、及び疾患の進行度の客観評価が可能になりました。また、Pbb3はモデルマウスを活用したタウ蓄積抑制治療薬の評価や、その後のヒトでの新規治療薬の評価など、認知症の根本治療法の開発への貢献も期待されます。
参考リンク:認知症で神経細胞死を引き起こす異常タンパク質の生体での可視化に世界で初めて成功
微量血漿中放射能濃度測定システム「μFmpc」
共同研究→特許ライセンス
CD-Well
解析ソフト
株式会社島津製作所と放医研との共同研究成果により、PETを用いたマウス等の小動物による薬物動態解析や薬力学的評価を支援するツールである微量血漿中放射能濃度測定システム「μFmpc」を実用化させました。
抗がん剤や脳疾患の診断薬・治療薬などの新規医薬品の開発では、PETを用いて、投与薬剤の体内動態を撮影し、生体機能を定量評価することができます。しかし、正確に評価するためには血漿中の放射能濃度の経時変化に関する情報(Tac)が必要になります。
従来は一条件あたりの採決量が数十μLと多くなるため、小動物でのデータ取得は困難でしたが、この技術により、採決量が1~4μLと少なく、短い時間間隔での血液採取が可能になり、高いTacを得ることができる上、煩雑な血漿の分取が不要となりました。
これにより、小動物に対するPET定量分子イメージングが可能となり、創薬、新規治療法の開発の促進が期待できます。
共同研究先:株式会社島津製作所
ナノ粒子型MRI用造影剤
共同研究→特許ライセンス
放医研・分子イメージング研究センターでは、生体内の組織・細胞・分子機能を検出して画像化する様々なプローブ(センサー・造影剤)を、全国の大学・研究所や企業と共同で開発しています。
大阪府立大学と放医研の共同研究成果であるデンドロン脂質をリポソームに組み込む要素技術を発展させ、造影効果が非常に優れたナノ粒子型MRI血管造影剤・試薬を実用化させました。
従来の造影剤は1錯体という小さな分子でできていて、一つの造影剤が一つの錯体(粒子)に包まれています。
この新しい技術では、多数の造影剤を結合可能な化合物(デンドロン脂質)を、ナノメートル・サイズの粒子(ナノ粒子)であるリポソーム表面に多数組み込むことにより、リポソームの表面に非常に多くの造影剤を付着させることができました。
粒子1つあたりの造影剤の数が多いので、従来と比較して非常に高い感度でMRIでの観察が可能になり、その結果、50ミクロン以下の顕微鏡に迫る解像度の実現にも繋がりました。それに加え、がんへの集積性を利用した腫瘍検出イメージングや、抗がん剤等を搭載して「診断しながら治療」する応用(セラノスティクス)が可能です。
共同研究先:大阪府立大学
参考リンク:腫瘍部位の検出に有効な前臨床用MRI造影剤の実用化 MRIのコントラストを飛躍的に高めるナノ粒子を作成
高速ホットスポットモニターR-eye
共同研究→特許ライセンス
株式会社天野研究所との共同研究成果である予測応答型放射線検出器をさらに発展させ、応用光研株式会社との共同研究で従来の持ち運び型の放射線サーベイメータの30倍もの高速で放射線の量(計数率)を予測することができる高速ホットスポットモニターを実用化させました。
予測応答機能は、ホットスポットからの計数率を短時間で予測し、広範囲を効率的に測定することを可能にした機能です。
この高速性を利用して、次のような利用方法が考えられます。
- 福島での除染作業の前後で汚染の度合いを把握
- 除染後の各家庭の庭などの定期的な汚染有無の確認
- 放射線施設などでの定期的な汚染検査
共同研究先:株式会社天野研究所、応用光研株式会社
参考リンク:高速ホットスポットモニター“R-eye”の開発に成功 -測定を点から面で行うことが可能に-
方向検知型モニタリングポスト
(独)科学技術振興機構:独創的シース展開事業「委託開発」による共同研究→特許およびノウハウライスセンス
従来の原子力発電所からの放射性物質・放射線の漏えい検知用モニタリングポストは空間線量率のみを計測するものでした。
本装置では空間線量率に加えて放射線の飛来する方向を計測して示すことができ、高線量率が指示された場合に原子力発電所原因か自然原因かを放射線が飛んでくる方向から判断することができます。
この装置は国内にある原子力発電所の放射線監視センターに導入されており、また最近ではこの技術を応用した福島のホットスポット探査装置の開発が進められています。
共同研究先:日立アロカメディカル株式会社
関連リンク
技術移転・技術指導
機構が保有する技術等による受託試験(試験、分析、測定、解析、評価等)技術指導を行っていますので、
ご関心のある企業等は、イノベーション戦略部研究協力推進課までお問い合せください。