現在地
Home > プレスリリース > 量子人材育成プログラム開始~量子センシング技術の社会実装加速に期待~

プレスリリース

量子人材育成プログラム開始~量子センシング技術の社会実装加速に期待~

掲載日:2024年12月16日更新
印刷用ページを表示

発表のポイント

  • 固体量子センサは優れた特徴を有すものの、従来のセンシング技術とは異なるため、取り扱うことができる量子人材が不足していました。
  • QST、東京科学大学、東北大学は連携して量子人材育成プログラムを構築しました。
  • 産業界における量子人材の育成と量子センシング技術の普及の加速が期待されます。

概要 

 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長 小安重夫、以下「QST」)は、国立大学法人東京科学大学(理事長 大竹尚登、以下「東京科学大学」)及び国立大学法人東北大学(総長 冨永悌二、以下「東北大学」)と共同で、固体量子センサコンソーシアムを立ち上げ、その活動の一つとしてテストベッドを用いた量子人材育成プログラムを開始します。

 ダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)に代表される固体量子センサは、高感度に磁場や温度計測が可能、ナノレベルの微小領域のセンシングが可能、温度と磁場の同時計測といったマルチセンシングが可能といった優れた特徴を有します。さらにピコテスラからテスラといった10桁以上の幅広い範囲を飽和なく計測できることや、極低温から数百度の高温まで計測できるといった利点も有します。

 一方で、従来のセンシング技術とはセンサ材料や計測手法(光やマイクロ波を利用したスピン制御と読出し)が異なること、またそれらを取り扱える量子人材が不足していることから、企業などにとって新規参入が容易ではありませんでした。

 その課題に対して固体量子センサの分野では産業界からの問い合わせも多く、研究機関が協力して測定技術の共通化を進めながら産業界に応えていくことが必要と考え、QST、東京科学大学、東北大学は連携して量子人材育成プログラムの構築、開始に至りました。

 本取組みは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「先進的量子技術基盤の社会課題への応用促進」によって実施されました。

QSTが進める量子人材育成プログラム

量子技術におけるQSTの役割

 今、量子技術は次世代の基盤技術として世界レベルで研究開発競争が激化しています。日本においても「量子技術イノベーション戦略」をはじめとした国家戦略が打ち出され、量子技術の研究開発や社会実装に向けた取組みを積極的に推進しています。その取組みの一環として、日本が強みとしている技術領域における国際競争力を確保・強化する観点から国際的な研究開発拠点として、「量子技術イノベーション拠点」が形成されました。高崎量子技術基盤研究所は、量子技術イノベーション拠点の一つである量子技術基盤拠点として、産業界に対して量子技術の一つである量子センシングの利活用について、積極的に情報提供すると共に、技術開発・事業化支援の役割を担っています。

量子に触れる

 その取組みの中で、量子センシングに興味のある企業から聞こえてきたのは、量子技術について「見て、触れて、試す」機会がない、社内に量子技術を検討・評価できる人材がいない、量子技術について相談や意見交換できる環境がないという声でした。

量子人材を育てる

日本地図

これらの産業界からの声に応えるために、私たちは、国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「先進的量子技術基盤への社会課題への応用促進」に「固体量子センサの社会実装促進に向けた実践環境の構築」を提案し、採択されました。本提案に基づき、QST、東京科学大学、東北大学に、量子センサの基礎から実際のセンシング手法までを体験しながら学ぶことのできる「テストベッド」の整備を進めています。また、量子技術基盤拠点として、固体量子センサコンソーシアムを立ち上げ、このテストベッドを活用した量子人材育成プログラムを運営いたします。東京科学大学および東北大学は、量子センサや量子融合・スピントロニクス技術の強みを生かし、人材育成・社会実装に向けた教育・研究を推進しています。このプログラムの参加者は民間企業の研究者や技術者を想定しており、レベルに応じた講義や実習などを通して学んだ技術を自社の製品開発などに活かすことができます。

量子センシング人材育成プログラムの流れ