Yahoo! JAPANがクラウド構想を発表。オープンなプラットフォームとして開放へ
Yahoo! JAPANが国内でのクラウド戦略を初めて明らかにしました。同社が持つサービスやインフラのオープン化を推し進めることが戦略の骨子。IDや課金プラットフォーム、Amazonクラウドに対抗できるHaaSなどを提供したいと、8日に都内で開催されたイベント「SaaS World / Tokyo 2009」の基調講演で、ヤフーのR&D統括本部 大矢俊樹氏が説明しました。
クラウドを利用する顧客サイトへの誘導も
ヤフーのクラウドサービスは、ネットビジネスを行う企業に対して提供することを想定しており、利用する企業にとって「売り上げを上げられるか、コストを下げるか、どちらかに貢献するサービス」にしたいと大矢氏は説明します。
「今後さまざまなサービスやネットビジネスが生み出される土壌を整備、支援していくことで、ヤフーにも長期的なメリットにつながると思っている」(大矢氏)
主な顧客としては100名程度かそれ以下の比較的小規模な企業を想定する一方で、中堅以上の企業に対しても、システムインテグレータなどのパートナーと連係して提供していくとのこと。
顧客が得られるメリットとしては、すぐに利用可能なサービスを組み合わせられることで得られる開発コストの削減や開発スピードの向上、そしてビジネス機会の創出の3つを大矢氏は挙げました。
さらに、ヤフーが持つ集客力や蓄積した多くのユーザーデータを活用することで、マーケティングの面でも付加価値を提供できるだろうと、同社ならではの強みにも言及しています。
「集客も外(クラウドを利用する顧客のサイト)へ誘導していく。広告との兼ね合いもあるので詰めていかなければならないが、集客力をクラウドの方に流していけないかなと考えている」(大矢氏)。
ID、ウォレット、ポイントなども外部と連係
ヤフーのクラウドサービスは、Yahoo! JAPANの機能やサービスを外部に開放することで実現される見通しです。開放される予定のサービスとしては、サーバやストレージなどのインフラ、ID、課金、個人認証などのプラットフォーム、開発環境やAPIなどのミドルウェア、そしてYahoo! Mailなどのアプリケーションなどがあります。
こうしたさまざまなレベルのサービスを顧客が自社システムに取り入れたり、システムインテグレータが顧客向けにカスタマイズして提供することになるようです。
例えばYahoo!ポイントを企業が販促ツールとして利用したり、Yahoo!ウォレットを使って自社の商材を販売することも可能になると、大矢氏は説明。すでにヤフーの広告配信や映像配信の機能を自社サイトの機能として組み込んで利用することも、一部では始まっているとのことです。
「デベロッパーがアイデアを簡単に具体化できるようにしたい。できあがったアプリケーションがYahoo! JAPANと連係するなどで、お互いの価値を高められたらと思っている。今後はAPIや開発環境を整備して外部に開放したり、開発系ツールやドキュメントの整備、デベロッパーが参加しやすいコミュニティを活性化していく」(大矢氏)。
価格面で競争力を高めたHaaSも提供する
ヤフーのクラウドでは、インフラ機能の提供も視野に入れています。同社は昨年、ソフトバンクIDCを買収し、自らデータセンターを保有する企業となったため、サーバやストレージなどのインフラを提供するサービスにも積極的に取り組んでいくとの発言がありました。
「この分野はAmazon EC2など競合するプレイヤーが多いが、Yahoo! JAPANまで含めたスケールメリットをサービスに還元することで価格面での競争力を高めることと、サポートの付加価値を高めて、かゆいところに手が届くものにしたい」(大矢氏)。
大矢氏は、今後さらに顧客とのコミュニケーションを密にし、意見交換をしたうえで同社のクラウドサービスを魅力的なものにしていきたいと、基調講演での発表を締めくくりました。
Yahoo!クラウド構想はこのように発表されましたが、同社広報によると具体的なサービス提供の日付はまだ調整中で、今後発表する予定とのことです。