ドット絵アニメの作り方。イラストレーター・豊井さん(@1041uuu)インタビュー
取材・文/にゃるら
にゃるら(@nyalra)です。
今回は、テレビ番組『ザ・ノンフィクション』で紹介された、一癖も二癖もあるクリエイター方面のオタクたちが集まる「ギークハウス」の住民であり、レトロで美しいドット絵が国内外からの評価を受けているドット・イラストレーターの豊井(@1041uuu)さんへインタビューする訳ですが、今までも各メディアからインタビューを断り続けてきた方でして、今回も本来は断ろうとするところを友人である自分が、豊井さんが現在暮らしている和歌山の奥地まで行くという事で、なんとか了承して貰えました。
よって、これは激レアインタビュー記事となりますので、ありがたく読んで下さい。
因みに、豊井さんの描く美麗なドット絵はこちら(http://1041uuu.tumblr.com)から見れます。すごいですね。
──豊井さんは今までインタビューなど受けない方針だったそうですけど、それはどうしてでしょうか?
インタビュー受けると、なんか成功しました!って感じで気持ち悪いじゃないですか。でも、今回はにゃるらさんが山まで遊びに来てくれるって言うから……。だからあんまりインタビューとは思ってないです。
どこまで話して良いのかな。俺はエッチな動画を観るのが好きで、特にネットで転載されまくって画質の悪くなったような動画が好きなんですよ。もともと彩度を高めに調整された動画が圧縮されることで、映像の黒潰れした部分や白飛びした部分のノイズに、現実の風景には存在しないような色が混じるんです。
──えっちな動画の話から色調を大真面目に語る人初めて見た……。
──では、ドットを描く際の技術的な事を教えて下さい。
だから、その見づらいぶんを補うために分かり易く描く必要がある。似ている色を一つの色にまとめたり、ぱっと見で分かりにくい複雑な形を削ったり。そうしないとボヤけた色彩のゴチャついた絵になって、「見づらい」絵になってしまう。
あと、モチーフごとの佇まい。たとえば現実の金魚は複雑で細かい動きをしているけど、それを律儀に再現すると妙に堅苦しくなって、金魚らしさがなくなってしまう。そのために単色で長方形に描いて、単純な動きをさせたり、フレームレートを落としたりします。
電灯の光とかもそうで、アンチエイリアスとか掛けて丁寧に描くと電灯らしい光の鋭さが出ず、やぼったい「形」になってしまう。だから敢えて白い正方形をベタッと配置してみたり……そういうのを絵全体に適用しています。
動きに関しては、まずループを目立たないようにする。3の倍数でループする動き、4の倍数でループする動き…というのを掛け合わせることで、全体的なループの継ぎ目の目立ちにくい絵になるよう気を付けています。あと、動くものの配置のバランス。全体に動きを散りばめたり、量をコントロールすることを心掛けています。
たとえば、シネマグラフと呼ばれる、映画のワンカットをGIFでループさせる文化があるんですが、そういうGIFって背景の海とか雲「だけ」動いていて、手前の人物だけ静止してるんですよ。これはクソコラ感が出て滑稽に見えるし、「背景が動いてる」だけで「時間が動いてる」ようには見えないんですよね。
だから、全体に動きを散りばめて、本当は動いてない部分まで時間が動いているように錯覚させる。飛び道具として、背景がスクロールしたり、雨や花びらを散らすというのが便利です。
──安易な質問なんですけど、ドット絵を描き始めたきっかけって?
もともとペンタブでは絵を描いていたんですが、初めてドット絵を描いたのは中学か高校のときで、PCの授業中にエクセルやMSペイントで絵を描いてたんです。その時好きなゲームや漫画のキャラを、別のゲーム風のドット絵にしたりしていました。
その時はらくがき程度だったんですけど、東京へ来て無職を続けている時に、絵を描く道具がノートPCのタッチパッドしかなくて、それで暇つぶしにドット絵を描いてて。
格闘ゲームだけど、キングオブファイターズの背景が好きです。マリオとかカービィみたいな、いわゆるレトロゲームっぽいものより、現実の風景が一枚の絵に落とし込まれているのが好きなんですよね。
──僕はオタクなのでKOF2000でクーラが地面を凍らせる演出からの背景が好きですが、豊井さんは特にどの背景が好きですか?
96!
──急に元気になったな……。
ストリートファイターの背景は、どちらかというと誇張的ですよね。自転車で転ぶおっさんなんて現実でそうそう見ないよって言うか。
他にはギャルゲーの背景とかも好きです。八王子くらいの微妙な駅の広場とか。
──単に会社が近かったから背景に選んだんだろうなって場所ありますよね。
──絵へのこだわりとか教えて下さい。
こだわりとしては、一枚の絵で完結する、特定の文脈などに依存しない絵を描きたいと常に意識しています。国外の、ゲームとか知らない人にも見てもらえるような。
あと俺は完璧主義で、何を作っても風呂敷を広げすぎて頓挫するんですが、絵なら「目の前の1枚をとにかく良くする」ことだけ考えればいいので楽なんですよね。
──自分の絵の海外受けなどを意識したりしているんですね。
──絵の話は飽きてきたので、本人の話に入りましょう。上京のきっかけは?
──昔は、美少女のドット絵とか描いてたじゃないですか。僕はあのあたりが凄く好きなんですけど、最近は美少女とかは描かない感じなんですか?
分かりやすいんですよね。セーラー服の女の子ってそれだけで主人公的で、味の濃いモチーフだから、みんな注目してくれる。
──今は他の方のゲーム製作に携わっているんですよね。
という訳で、豊井さんへのインタビューでした。協力いただきありがとうございました。
豊井さんのパトロンは(https://www.patreon.com/1041uuu)こちらです。
因みに途中に貼った製作過程のGIFですが、元はかなりサイズがあって全部で200MB近くの大容量でして、「このまま載せてくれないと絶対イヤです!」と本人は嫌がらせで主張していたのですが、勿論勝手に修正しました。
基本的に僕も豊井さんも、毎日決まった時間に起きて働くという事が苦手でして、こうしてたまに仕事を受けては、それ以外の日は適当に遊ぶという事が日常です。そんな僕らが、こうして仕事という関係で交わり合った事実に感慨深いものがあります。
一番お見せしたかった写真は、夜の川で螢に囲まれた時なのですが、残念ながらカメラでは、あの自然な光を捉えることはできませんでした。いつか、あの日の幻想的な光景を豊井さんがドット絵という形で切り取ってくれる事を愉しみにしています。それっぽい締めで終わりです。