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IP電話悪用、詐欺相次ぐ 福岡は事件の96%…“重宝”されている緩さ

 インターネット回線を使い、データ通信で音声をやりとりする「IP電話」を悪用した偽電話詐欺が相次いでいる。福岡県警が今年1月から電話番号を確認できた628件(11月末時点)の詐欺事件を分析したところ、96%で使われていたことが判明。携帯電話に比べて規制が緩く、温床になったようだ。詐欺に使われた番号を特定して利用を停止させても、詐欺グループは別の番号に切り替えているとみられる。いたちごっこの状態になっている。

 福岡県の女性(75)は9月、IP電話を利用した詐欺で約460万円を失った。

 男から「百貨店であなたのクレジットカードが使われている」と電話があり、「全国銀行協会」に連絡するよう言われた。女性がかけるよう指示されたのは「050」で始まる電話番号。女性は取材に「どこかの市外局番だと信じてしまった」と話す。とっさのことで冷静に判断できなかったという。連絡後、訪れた男にキャッシュカードをだまし取られ、現金が引き出された。

 詐欺グループからの連絡も多くはIP電話だ。番号は「050」に限らない。一定の条件を満たせば、東京「03」、福岡「092」など実際の市外局番を冠した固定電話の番号を使うこともできるという。実在する公的機関などを装う際に利用しているとみられる。

 かつてはレンタル式の携帯電話を悪用するケースが多かったが、2008年の法改正で本人確認が厳格化され、レンタル事業者への罰則も設けられたため、こうした規制がないIP電話に移行したようだ。

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 福岡県警などは今年9月、偽電話詐欺の収益を資金洗浄(マネーロンダリング)したとして、組織犯罪処罰法違反容疑で、IP電話回線を転売する会社「ボイスオーバー」(東京)の経営者らを逮捕した。捜査の過程で明らかになったのは、同社が大手通信会社から大量の回線を購入し、転売した回線が詐欺事件に使われている実態だ。

 県警によると、転売した回線は約4600件の詐欺事件に用いられ、被害額は約80億円に上るとされる。警察は、詐欺に悪用された番号が判明すれば大手通信会社に利用停止を要請しているが、詐欺グループはそのたびに、別の番号を購入していたという。

 捜査関係者によると、詐欺グループは、偽の身分証を使って回線を入手しているケースが多く、容疑者にたどりつくのは困難。このため、同社のような業者を詐欺の「共犯」として立件するのも難しいという。

 相次ぐ詐欺被害を受け、警察庁や総務省は対策を強化。詐欺に悪用された回線を利用停止にできる対象として従来の携帯電話と固定電話の番号に加え、今年11月から「050」の番号に対しても適用できるようにした。

 被害を防ぐためには、IP電話利用者の身分確認を徹底するなど、さらなる規制強化の検討も求められる。県警の捜査幹部は「現状では、IP電話は詐欺グループに重宝されている。被害に遭わないよう不審な電話に注意してほしい」と話す。

 (小川勝也、小笠原麻結)

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