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学校図書館のハテナ?(2)自治体格差 司書不在校

 子どもと本をつなぐ学校司書を巡っては、フルタイム勤務で業務に専念できる福岡県宇美町のケースがある一方、複数の学校の掛け持ちや、そもそもいないなど学校や自治体によってさまざまだ。小中学校全ては網羅できないものの、小学校を中心とした掛け持ち式を採用する福岡市の学校図書館の姿はどうなっているのだろう。ある小学校をのぞき、図書に関わる教員や司書に話を聞いた。

本、循環せず目立つ古さ

 校舎の一角にある図書館。書棚には図鑑や絵本、小説がずらりと並び、どこでも見られる光景だ。ただ、書物に近づくと違和感を覚える。図鑑の端は破れ、背表紙のタイトルは消えて見えない。平和をテーマにした漫画は使い込まれ、カバーの色が真っ白に。裏表紙をめくると、1980~90年代発行の本もあった。

 「子どもたちは色あせた本を手に取りません。まるで置物のようです」と担当する教員。休み時間に訪れる子どももまばらという。

 教員は専門の講習を修了した「司書教諭」の資格を持つ。司書教諭は12学級以上ある学校には配置が義務付けられ、図書館の運営や活用に中心的な役割を担う。だが、その多くが担任との兼務で時間をやりくりしながらの作業が続く。とりわけ学校司書がいない場合の負担は大きい。

 課題になるのが図書の購入と処分だ。福岡市の場合、購入費は1校当たり年15万~60万円ほど。図書を購入するにしても、子どもの流行や興味を読書という視点から知る必要がある。学校図書館には、学校規模に応じて数千冊から1万冊以上の維持というルールもある。

 しかし司書教諭が全ての蔵書を把握するには限界がある上、どんな本がどの程度読まれ、古くても残すべきなのかどうか、判断をする作業も追いつかない。計画的な図書購入と廃棄ができない結果、一時的なブームの本が何冊もそろい、色あせた本がたまる。「蔵書の半分くらいは本来なら廃棄したいんですが」

 限られた時間で新刊の配置を目立つようにし、館内の居心地をよくするなど読書をする環境は整える。「学校司書がいてくれれば」と教員は常に思う。

教員だけの作業には限界

 福岡市教育委員会によると、同市内の144小学校、69中学校に対して本年度の学校司書は計36人。非常勤で1日4時間、年間150日間働き、大半の司書は担当する2小学校に61日ずつ、2中学校に12日ずつ出勤している。離島を除いてほとんどの小学校は1年置き、中学校には毎年出向く態勢になっている。

 司書の収入だけでの生活は厳しい上、1年ごとの契約。継続雇用されたとしても毎年、別の学校に着任することがほとんどだ。

 市内で学校司書として働く高橋智子さん(仮名)は勤務する小学校で、まず図書の廃棄から始める。「もともと2冊もいらないのに」。手つかずに近い本を廃棄するたびに、心が痛む。

 中学校も同じ。司書の目線でじっくり考えれば、選ぶべき図書は随分変わると思うが12日間の勤務ではとても足りない。「限りある購入費の有効活用にはほど遠い」と感じる。

 別の司書、田中洋子さん(同)は教員との接点の薄さを痛感する。田中さんは勤務日、午前中から休憩を含め5時間、担当する学校の図書館に詰める。

 教員から授業で使う参考図書を求められれば、すぐにそろえる自信はある。しかし教員は授業や子どもの相手に忙しい。ちゃんと話すには、勤務時間外の放課後まで残る必要がある。信頼関係を築く前に1年は過ぎ去り、新たな学校での1年が始まる。

 そんな条件下でも、子どもとの距離は精いっぱい詰めてきた。本の読み聞かせをすると、目を輝かせて聞いてくれる。読みたい本が図書館にない時は個人で調達して貸し出しもした。

 「1年ごとの配置は見直してほしい。一つのキーワードに関連する本は本棚のあちこちにある。そんなわくわくするような気持ちを子どもたちには持ってもらいたい」。田中さんは、利用環境の格差改善を願う。

学校司書「配置ゼロ」 九州の2割 九州の公立小中学校の学校司書配置状況について、2016年4月1日時点の文部科学省の調査で、小中一貫の義務教育学校に移行した佐賀県大町町を除く232市町村のうち、約2割の44市町村がいずれも「ゼロ」と回答した。小学校にいないのは48市町村で、県別では福岡9、佐賀1、長崎2、熊本14、大分2、宮崎16、鹿児島4。中学校は55市町村で福岡12、佐賀1、長崎4、熊本17、大分2、宮崎14、鹿児島5だった。ただし、司書が年12回勤める福岡市の中学校も「ゼロ」に含まれている一方、「100%配置」と答えた小学校145市町村、中学校152市町村のうち、1人が複数の学校を掛け持ちしている場合でも「配置校」とした自治体もある。

=2019/02/10付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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