【初回】新納一哉さん(『世界樹の迷宮』プロジェクトリーダー)インタビュー

【初回】新納一哉さん(『世界樹の迷宮』プロジェクトリーダー)インタビュー

DS

タイトル:世界樹の迷宮(完全新作)

メーカー:アトラス

発売予定:1月

ジャンル:3DダンジョンRPG

 

 

世界樹の迷宮のプロジェクトリーダーの宇田洋輔さんと新納一哉さんにインタビューすることができました。

「世界樹の迷宮」は歴史の深いゲームメーカーのアトラスが、時代の流れにあえて逆行して世に送り出す3DダンジョンRPGです。

超執刀カドゥケウス(新納さんの前作)や新納さんに関して、様々なお話を聞きました。

かなり長丁場のインタビューとなりましたが、ぜひ最後までお読みください。

 

 

―NintendoINSIDEのscdと申します。宇田さん、新納さん、よろしくお願いいたします。お忙しいところ機会を作っていただき深く感謝しております。

 

新納:よろしくお願いします

 

宇田:お願いします

 

 

―前作の「超執刀カドゥケウス」も含め、新納さんのゲームの大ファンです!とても面白いです!

 

新納:ありがたいです。

 

 

―革のポーチ(キャンペーン限定アイテム)も頂戴しましたし……。

 

宇田:え、あれをゲットしたんですか!?

 

 

―はい、幸運にも。そのご縁から今回対談させていただく流れになりまして。不思議なものです。それは、本題に入らせていただきますね。

まずは、ファン垂涎の「世界樹の迷宮」のお話からお願いします。NintendoINSIDEに届いた質問は全部ご回答いただけるということですが、よろしいでしょうか?

 

新納:まあ、できるだけ(笑)

 

 

―承知しました(笑)。まずは、世界樹の迷宮のボリュームについてお伺いしたいのですが。

 

新納:なかなかのボリュームがあります。マップをプレイヤー自身が手書きする分時間を要しますので、ゲームの雰囲気を考えるとむしろプレイ時間は想定を遥かに超えるものになってしまいました。

 

 

―クリアまでのタイムは普通にプレイするとどの程度のなるのでしょうか?

 

新納:30時間程度で、やり込もうとすると40時間程度でしょうか。最初は15時間、やり込んで20時間程度にする予定だったんです。近頃のRPGのプレイ時間がやや長いと感じていましたので。でも、いつの間にか長くなりましたね。我が社のRPGのプレイ時間は大抵予定を超える長さになりますね(笑)

 

 

―やはり「地図の手書き」がプレイ時間のかなりの割合をしめるのでしょうか?

 

新納:それももちろんあるのですが、ストーリー部分も最終的には長くなりました、スタッフに「やっぱり普通に長くなったじゃないですか」って愚痴られました(笑)。

 

 

―1回で何分くらい遊ぶのがいいでしょうか?

 

新納:60分程度が限界かなと感じますが、普通は30~40分程度かと思います。サバイバル感が強いので、長時間プレイはしんどいと思いますよ(笑)。

 

 

―就寝前にちょっとですとか、会社の休み時間にちょっとですとか、そういうスタイルになりそうでしょうか?

 

新納:そうですね。短時間プレイを積み重ねる感じだとより楽しんでもらえるかと思います。一例として、どうプレイしても少しずつスキル・レベルがアップしていく……というゲームバランスにしました。その辺りはストレスフリーで、中だるみのないように心がけました。

 

 

―サブクエストがたくさんあるそうですね?

 

新納:サブクエストを酒場で受注できるシステムにしています。プレイしなくてもストーリーにはほぼ影響の出ないものとなっています。

 

 

―サブクエスト数もやはり膨大なのでしょうか?

 

新納:現在少し減らしておりまして、ギリギリ二桁に持っていければと考えています。最初はたくさんありすぎたので……。

 

 

―クエストの中には、本筋とは無関係にの俗に言う「アトラス難易度」のものもあるのでしょうか? ※アトラスのゲームは難易度が高いことで有名

 

新納:はい、ちらほらと(笑)。

 

 

―ですよね(笑)。「カドゥケウス」のXステージだと、地道にパターン化していくのが結局は近道だったと思いますが、世界樹の迷宮に関してもそういったコンセプトになるのでしょうか。

 

新納:カドゥケウスとはゲーム性が異なるので、お答えしにくいですね……。

でも世界樹の迷宮は「スキルポイントの割り振り」を考えて戦うものになります。マックスレベルがやや低めなので。

例えば「アザーズステップ」というスキルがレンジャーにはあるのですが、これを使うと特定のキャラをターンの一番初めに動かすことが可能となります(ただし、レンジャー自身の行動はそれで終わり)。これだけでも、ゲームに親しんでいる方であれば「ああ、こういう感じで戦えそう」とイメージしていただけるかと思います。

スキルの駆け引きや調整で難敵を突破していただきたいですね。

カドゥケウスと共通しているのは「ごり押しでは不可能」という事ですね。ですが、必ず攻略できるバランスになっていますので、持っているスキルを駆使して突破してください。という感じです。

 

 

―さらに難易度についてお聞かせください。アトラスとして世界樹の迷宮は難易度が高いと感じますか?

 

新納:恐らく、カドゥケウスのXステージレベルではないはずです……。それに「いきなり難易度がアップすることのないように」というコンセプトで世界樹の迷宮を作りましたし。後半に向けて徐々に自然に難易度が上がっていくといくようにと。RPGってそれが普通だと思うので改めて語るころでもないのですけど(笑)。

 

 

―確かにカドゥケウスでは「いきなり難易度がアップする場面」が何回もあったと思います。

 

新納:そういったハードルをクリアすると一気に自分のテクニックがアップしたように思えますよね。ですから「階段的な難易度の上がり方」にしたんです。

 

 

―そういうお考えだったんですね。では「世界樹の迷宮の注目ポイント」は新納さんとしてはどこだと感じていますでしょうか?

 

新納:いい意味で混ざり気のないところ。そしてやはり戦闘ですね。FOEについては特に自信がありまして、「あ、そろそろ死にそう」と数ターン前から察知できるようになっています。「ああ、あと3ターンで全滅だわ」という声がスタッフのテストプレイでも聞こえました。これは我ながら個性的だと思います。

 

 

―「このようにプレイしてほしい」というものはありますか?

 

新納:ちょこちょこ少しずつプレイしてほしいですね。そして、ご友人やネットなど、色々話しながら遊んでいただければ最高ですね。「こんなの絶対負けるだろ!アトラスめ!」みたいに、プレイしていただいて、そこから話のネタが拡がると嬉しいです。

 

 

―やはりそこですよね。細かい部分ですけど、ターン数がバトル画面にいつも出ていますよね。あれが好きなんです。「3ターンであいつ撃破したぞ!」とかお友達とワイワイ話せそうですし。

 

新納:手ごたえにあるシークレットボスもたくさんいますので、初見は「絶対勝てないだろ?」と感じるかもしれませんが、工夫して撃破してほしいと思います。そのために、システムバランスを犠牲にしている部分もありますしね。「これとこれの組み合わせで、大ダメージが出るけど大丈夫なの?」とヒヤヒヤして、戦闘の調節担当のスタッフに確認したんですが「OKでしょう。そういうのがあった方が面白いですよ」と返してくるんですよね(笑)。

そして、腹をくくったつもりでも「ああ、でもマズいかなあ」と、一緒に唸っています(笑)。

 

 

―体力は3ケタまでなのに、平気で1000以上のダメージが飛んでくるんですよね(笑)。

 

新納:多分HPを限界まで上げると560くらいになると思いますが、4000ダメージとかも普通にきますね。

 

一同:(大笑い)

 

新納:メチャクチャではあるんですけど、スキル同士のシナジーで「あれ、全然平気じゃん!」となる調整にしています。メチャクチャ具合で言うと「ロマンシングサガ」に似ていると感じますが、あれも「あえてどこかがメチャクチャになるように」作っているのではないかと予想しています。「楽しいメチャクチャ感」とでも言うのでしょうか。

 

 

―しかし、その調整は一筋縄ではいきませんよね。

 

新納:おっしゃる通りです。そこのバランスを取るために多大な時間を使っています。

 

 

―聞けば聞くほどバランスコントロールが要だと思えるのですが、新納さんは現在ほぼバランスコントロールのみをしているのでしょうか?

 

新納:そうだと思います。さっき説明した戦闘面の調整をしてくれているスタッフが、バランスコントロールをしてくれているので、私はそこに修正案を出す感じです。自分で全部ダイレクトにスキルバランスを弄っていますが、何回やってもしっくりこない気がしてドツボにハマることが良くあります(笑)。世界樹の迷宮はスキルが命なので、そこはパーフェクトなものにしておく必要があるんです。あとは、細かい部分を直したり、ゲーム全体の運びを調節したりと、地道な作業をひたすら行うことになります。

 

 

―バランスコントロールは非常にキツそうですね。

 

新納:実際、現在難航しています(笑)。でも長年積み重ねてきたRPGのノウハウがアトラスにはあるので、「どうしよう!」とスタッフに質問を投げかければ、10人に1人は「これだ!」と目から鱗が落ちるような意見をくれますね。「スタッフの誰かが答えを持っている」という感じです。

 

 

―やはり高難易度を好むスタッフさんが多いのでしょうか?

 

新納:そういう傾向はありますね(笑)。でも、単に高難易度なら良いかというとそうではなくて、戦闘面のスタッフさんもピリッとしたバランスにはしますが、自分自身は簡単なゲームの方が好きらしいです(笑)。

 

宇田:アトラスのゲームの難易度は高過ぎるという意見もよくいただきますが、無理矢理難しくしているつもりはありません。「ゲーム全体の仕組みとマッチするような難易度にすること」を心がけているだけです。

 

新納:そうですね。無意味に難しくしたり、簡単にしたりしないように。でも意味があるなら、どんな極端な難易度にもするつもりです。「プレイして楽しいか」が最優先ですので。