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ニュースリリース
大学図書館向け学術情報システムを36年ぶりに一新
学術資料のデジタル化に対応した目録所在情報サービスを2022年から順次運用開始
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、大学図書館を中心に約1,300機関が利用する目録所在情報サービス(以下NACSIS-CAT/ILL)の再構築を開始しました。
これは、「大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」(*1)の下に設置された「これからの学術情報システム構築検討委員会」(*2)が取りまとめた『これからの学術情報システムの在り方について(2019)』を踏まえたもので、大学図書館のシステムと連携し、デジタル化された学術資料(電子ジャーナル、電子ブック等)への対応を含む新たな図書館システム・ネットワーク構築の一環として整備するものです(図1)。
電子リソース管理サービスは2022年、新NACSIS-CAT/ILLシステムは2023年の稼働開始を目指し、新たな共同利用システムとして、大学図書館のシステム業務の軽量化・合理化と学術資料アクセスのデジタルトランスフォーメーション(DX化)に寄与いたします(図2)。
図1: 図書館システム・ネットワークと今回整備を行う範囲
背景
目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/ILL)は、全国の大学図書館が所蔵する資料を対象とした総合目録データベースの形成と図書館間相互利用を支援するサービスで、1985年に運用を開始しました。その後、国立情報学研究所の前身である学術情報センターの中核事業として発展し、現在では参加機関数1,336、書誌1,301万件、所蔵1.47億件(2021年3月末時点)の規模となり、研究者や学生の学術資料の入手を支えています。一方で、近年では、デジタル化された学術資料(電⼦ジャーナル、電⼦ブック、データベース等。以下、電子リソースと呼ぶ。)の普及などで資料の流通・管理のあり方が大きく変貌しています。そのため、研究者、学生の情報利用や研究・教育のプロセスがますます電子的手段を前提とするものになっている状況への対応が急務となっており、そのための新たなシステムが求められていました。
新たに更新・構築するシステム
これまでのシステムでは、共同利用するシステムをNIIが提供し、NII独自のメタデータ交換形式であるCATPを通じて各図書館が個別に導入する図書館システムと連携していました。そこでは、主に印刷体を対象とした総合目録データベースの形成と図書館間相互利用に活用されてきました。一方、「これからの学術情報システム構築検討委員会」が取りまとめた『これからの学術情報システムの在り方について(2019)』では、クラウド環境や、電子リソースと印刷体を区別なく扱うことのできるシステムを利用した、新たな図書館システム・ネットワーク(図1)が提示されました。今回整備を行う範囲は、この図書館システム・ネットワークのうち、共同利用システム部分(「新NACSIS-CAT/ILL」および「電子リソース管理サービス」)です。
新たに構築するシステムでは、将来にわたる継続運用や新たなニーズへの柔軟な対応のため、国際標準を基本としたパッケージシステムを採用し、電子リソースへ対応します。加えて、現在「これからの学術情報システム構築検討委員会」で検討している「電子リソースに対応した図書館システムの共同調達・運用」の実現により、将来的には大学図書館機能の高度化とシステム業務の軽量化・合理化も期待されます。なお、運用開始までのスケジュール(予定)は図2のとおりです。
図2:運用開始までのスケジュール(予定)
実現する機能
- 電子リソース管理サービスとして、国内外の出版社・学会等から大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)(*3)に提出された電子リソース製品の利用条件やタイトルリスト等、共通性の高いデータを蓄積し、公開許諾が得られたデータについて利用可能にします。
- 新NACSIS-CAT/ILLでは、メタデータの高度化に向けて、RDA(Resource Description and Access)、日本目録規則 2018 年版のほか、米国議会図書館が主導する新たなメタデータスキーマであるBIBFRAME等の新たな国際標準への対応を可能にします。
- 現在のNACSIS-CAT/ILLの機能は当面維持し、参加する約1,300機関が利用する図書館システムとの接続の継続性を確保します。
利用するシステム
整備にあたっては、以下のパッケージシステムを利用し、日本向けに必要となる機能を追加します。システムは、株式会社 紀伊國屋書店(代表取締役会長兼社長:高井 昌史、東京都新宿区)を契約窓口として提供されます。
- 新NACSIS-CAT/ILLの基盤システムは、アメリカを本拠地とするOCLCのCBS(Controlled Bibliographic Service)を利用します。CBSは地域および国レベルの総合目録のために設計されたシステムで、イギリスを始め、オランダ、ドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国、さらにオーストラリアですでに導入されています。日本での今回の実装では各図書館とは従来の形式(CATP)で動作する一方で、システム内部で管理されるメタデータは国際目録形式であるMARC21にも準拠しているため、国際的に流通するメタデータとの相互のデータ交換が容易になります。また、図書館間相互貸借(ILL)サービスは株式会社シー・エム・エスが構築し、CBSとのシームレスな連携を行います。
- 電子リソース管理サービスでは、Ex Libris社のAlmaを利用します。電子コンテンツの増加に伴い、電子資料の管理・利用環境の整備が重要な課題となります。Almaは、電子時代の資料管理プラットフォームとして世界の多数の大学およびコンソーシアムで導入されています。Almaを基盤に新たに構築する電子リソース管理サービスにより、全国の図書館から電子リソースのタイトルリストやライセンス情報を利用可能にします。
関連リンク
ニュースリリース(PDF版)
大学図書館向け学術情報システムを36年ぶりに一新
学術資料のデジタル化に対応した目録所在情報サービスを2022年から順次運用開始
- (*1)「大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」は、我が国の大学等の教育研究機関において不可欠な学術情報の確保と発信の一層の強化を図ることを目的として設置され、国公私立大学の図書館と国立情報学研究所との連携・協力の推進に寄与しています。詳しくは https://contents.nii.ac.jp/cpc/ を参照。
- (*2)「これからの学術情報システム構築検討委員会」は、「大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」の下に設置され、「電子情報資源を含む総合目録データベースの強化」について企画・立案し、学術情報資源の基盤構築、管理、共有および提供にかかる活動を推進しています。詳しくは https://contents.nii.ac.jp/korekara/ を参照。
- (*3)「大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)」は、「大学図書館と国立情報学研究所との連携・協力推進会議」の下に設置され、「バックファイルを含む電子ジャーナル等の確保と恒久的なアクセス保証体制の整備」を推進しています。詳しくは https://www.nii.ac.jp/content/justice/ を参照。
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