CYODとは
CYODは「Choose Your Own Device」の頭文字を取ったもので、「企業が選定した複数の業務端末の中から、従業員が好きなものを選べる」という管理方針のことです。
パソコンやスマートフォン、タブレットなど、業務で使用する端末はすべて企業側が選定・購入し、従業員に支給します。支給される端末は従業員が複数のラインナップの中から好きに選べるため、業務内容や働き方に適したものを選べるのが特徴です。
CYODは、業務端末のプライベート利用については定義していません。そのため、それぞれの企業のポリシーによって業務端末のプライベート利用を一部許可するケースもあれば、業務以外での利用は禁止しているケースもあります。
CYODのメリット
CYODは、企業と従業員の双方にメリットがある端末管理方法です。具体的にどのようなメリットがあるのか、企業のメリットと従業員のメリットに分けて解説します。
企業のメリット
CYODを採用する企業側のメリットには、以下のようなものがあります。
- セキュリティの強化
- 管理の効率化
- 従業員満足度の向上
CYODでは業務用端末の選定を企業側が行うため、必要なセキュリティ水準を満たしたデバイスを支給できるのがメリットのひとつです。また、ウイルス対策ソフトを事前にインストールしたり、従業員が勝手にアプリケーションのインストールできないよう制限したりするなど、端末の支給前にセキュリティ対策を施すこともできます。
また、CYODは業務端末の種類や数を企業側が把握しやすいため、管理を効率化できるのもメリットです。デバイスのラインナップを、自社のIT部門で管理しやすい数に抑えることで、管理やサポートにかかる手間や負担を軽減できます。
他にも、業務用端末のラインナップ内であれば、従業員が好きなものを選べるため満足度の向上も期待できるでしょう。「外出が多い営業社員は持ち運びやすいタブレットを選ぶ」「設計など高度な専用アプリケーションを使う部署は性能の高いデスクトップパソコンを選ぶ」など、それぞれが自身の業務に合った端末を自由に選びとり、仕事を快適に進めることができます。
従業員のメリット
CYODを採用すると、従業員は自分の業務に最適なデバイスを選べるのがメリットです。業務内容や働き方に合わせてデバイスを選ぶことができ、生産性の向上にもつながります。
なお、企業が業務端末を選定して支給する管理方針には、CYOD以外に「COBO(Corporate Owned, Business Only)」もありますが、特定の端末を一律で支給し、私的利用を禁止する点でCYODと異なります。COBOでは自由に端末を選べないため、従業員によっては使いづらい端末を変更できず、ストレスになる場合もあるでしょう。
一方、CYODなら複数のデバイスの中から自分で好きなものを選べるため、従業員は業務に最適な端末を使って快適に働けるのが大きなメリットです。
CYODのデメリット
CYODには多くのメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。企業側と従業員側のデメリットについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
企業のデメリット
CYODを取り入れると、コストが増加しやすいのがデメリットです。業務用端末をすべて企業が購入して従業員に支給するため、導入時に大きなコストがかかります。また、デバイスには耐用年数があるため、定期的にデバイスの購入費もかかり続けることになります。
加えて、業務に必要なアプリケーションの購入費や月額使用料、通信費なども企業側が負担するのが一般的です。従業員数や導入する端末数が多いほど、コストが多くかかる点に注意してください。
従業員のデメリット
CYODの従業員側のデメリットは、必ずしも従業員の使いたいデバイスが選択肢にあるとは限らない点です。複数の業務用端末から好きなものを選べるとはいえ、ラインナップの中に好みの端末が含まれていないケースもあるでしょう。
企業が業務用端末を選定する際は、従業員のニーズだけでなく、予算やセキュリティ水準なども考慮します。そのため、すべての従業員のニーズを満たすのは難しいケースもある点を理解しておきましょう。
CYODを導入した方がよい企業とは
CYODの導入が適しているのは、以下のような企業です。
- 従業員のニーズが多様な企業
- 従業員のエンゲージメントと生産性向上を目指す企業
- セキュリティとデバイス管理を一定のレベルで保ちたい企業
- IT管理の効率化を図りたい企業
それぞれの企業の特徴について、以下で詳しく見ていきましょう。
従業員のニーズが多様な企業
異なる職種や部門が存在する従業員のニーズが多様な企業には、CYODが向いています。例えば、外出や出張の多い営業部門と、基本的にデスクワークが中心のバックオフィス部門では、業務用端末に求める要素が大きく異なります。
CYODは、従業員が自分の業務内容や働き方に最適なデバイスを選べるため、従業員それぞれのニーズに柔軟に対応できるのがメリットです。「外出時に外でメールをチェックできるタブレット端末を使いたい」「デスクワークが中心なのでディスプレイが大きなデスクトップパソコンを使いたい」など、さまざまなニーズが混在する企業にはCYODが適しているでしょう。
従業員のエンゲージメントと生産性向上を目指す企業
従業員が好きなデバイスを選べるCYODは、従業員のエンゲージメントと生産性の向上を目指す企業にもおすすめです。例えば、同じ部署でも人によって最適だと感じるデバイスが異なる可能性があります。従業員一人ひとりのニーズに答えて、エンゲージメントを高めたい企業にはCYODが向いているでしょう。
CYODは、従業員のエンゲージメントを高めるだけでなく、生産性向上にも大きく寄与します。毎日使用する業務端末だからこそ、使い勝手を考慮した判断が重要です。
セキュリティとデバイス管理を一定のレベルで保ちたい企業
CYODは企業が承認したデバイスだけを業務利用させるため、セキュリティとデバイス管理を一定のレベルで保ちたい企業にも適しています。「求めるセキュリティ水準を満たせるか」「使用中の業務システムに対応しているか」などを考慮してデバイスを選定すれば、一定のセキュリティ基準を担保できるでしょう。
なお、従業員が個人所有するデバイスを業務利用させる「BYOD(Bring Your Own Device)」という管理方針と比べると、CYODのほうがセキュリティ要件を満たしやすいです。
BYODとは?|導入に向いている企業とメリット・デメリットを解説
BYODについては「BYODとは?|導入に向いている企業とメリット・デメリットを解説」の記事で詳しく解説しています。
IT管理の効率化を図りたい企業
業務用端末の種類を絞るCYODは、IT管理の効率化を図りたい企業にもおすすめです。業務利用するデバイスの種類やOSが限られるため、業務システムへの対応状況などを把握しやすく、不具合や操作方法の問い合わせなどITサポートの負担も減らせるためです。
BYODのように多くの機種やOSが混在する状況では、「従業員が希望するデバイスが業務システムに対応していない」場合が考えられます。業務端末の種類が多すぎると、問い合わせ対応やシステム改修に追われる可能性が高まり、IT部門の負担増につながりやすいです。IT管理の効率化を重視する企業は、CYODを選ぶと良いでしょう。
CYOD導入時のポイント
CYODの導入時には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- デバイスリストの作成
- セキュリティポリシーと利用ルールの策定
- IT管理ツールの選定
- コスト管理
それぞれのポイントについて、解説します。
デバイスリストの作成
はじめに、業務用端末として支給するデバイスを選定してリストを作成しましょう。業務システムとの互換性やセキュリティ水準などを考慮し、業務利用に支障のないデバイスを選定します。デバイスリストを作成する際は、さまざまな従業員のニーズを満たせるラインナップになっているか確認してください。あらかじめ各部署からの希望をヒアリングしておくと、ニーズ把握がスムーズになります。
デバイスリストは、一度作成した後も更新が必要です。導入中の端末に新しい機種が発売されたときや、従業員の要望に応えて端末のラインナップを増やしたときなどは、忘れずに更新してください。
セキュリティポリシーと利用ルールの策定
CYODはセキュリティ水準を満たしたデバイスを選定できるため、セキュリティ強化につながるのがメリットです。よりセキュリティを高めるには、セキュリティポリシーと利用ルールを策定して従業員に守ってもらう必要があります。
IT管理ツールの選定
デバイスの管理を効率化するために、必要なIT管理ツールを選定しましょう。デバイス管理に役立つツールには、次のようなものがあります。
- MDM:モバイル端末を一元管理するツール。紛失時のリモート制御やセキュリティ管理などが可能。
- MAM:デバイスにインストールしたアプリケーションを一元管理するツール。アプリのセキュリティ設定の強化や不要なアプリのインストール制限などが可能。
- MCM:デバイス内の文書や画像といったコンテンツを管理するツール。コンテンツごとのアクセス権の設定や機能の制限などが可能。
上記のようなツールを活用すると、デバイスのセキュリティ設定を一括で適用させるなど、効率的な管理が可能です。特に、導入する端末数が多い場合は導入を検討してみてください。
コスト管理
CYODは企業が業務端末を購入して支給するため、適切なコスト管理も求められます。支給するデバイスごとの価格と導入予定台数から導入コストを試算し、予算に合うかどうかの確認が必要です。併せて、必要なアプリケーションの利用料や通信費についても確認しておきましょう。
従業員が好きなデバイスを選べるのがCYODのメリットですが、必要以上のデバイスを支給するとコストが膨らむ原因となるため注意してください。例えば、「デスクワークが中心の従業員が業務用スマートフォンを希望している」場合は、コストをかけて対応すべきとは言い難いです。
従業員の要望に可能な限り応える姿勢を保ちつつも、企業としてどこまで投資すべきか、慎重な判断が必要でしょう。
まとめ
CYODは企業が求める水準をクリアした複数のデバイスの中から、従業員が自分で好きなものを選べる管理方式です。企業と従業員の双方にメリットがあり、特に「セキュリティ対策をしながら従業員の幅広いニーズにも応えたい」という場合におすすめです。
CYODの導入を成功させるためには、従業員のニーズに応えたデバイス選定が求められます。複数のデバイスを提示したとしても、その中に業務に最適なものがなければ従業員に満足してもらえません。必要に応じて各部署へのヒアリングなどを行いながら、快適に仕事が進められるデバイスを選定しましょう。
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