「パンティーテックス」などのギャグや、吉本新喜劇の中心メンバーとして活躍する島田珠代さん(54)。その奇天烈な芸風で人気を集める一方、2024年10月に上梓した初の自伝『悲しみは笑い飛ばせ! 島田珠代の幸福論』では、ふだんは見せない「女性としての顔」を披露している。そんな珠代さんに「女芸人と恋愛」論を聞いた。【全3回中の第2回。第1回から読む】
1988年から活動開始した珠代さんの、芸人としてのスタートは「心斎橋筋2丁目劇場」だった。ダウンタウンや今田耕司、千原兄弟、ナインティナインなど、1999年に閉館となるまで数多くの芸人を輩出した劇場だ。当時の彼らの人気ぶりはアイドル並みで、同じ舞台に立つ女芸人は女性ファンから目の敵にされたという。珠代さんが当時を振り返る。
「ステージ上で少しでも女っぽい仕草をする可愛い子が登場すると、ファンの女の子に囲まれて“今田さんに手を出したら許さないから”と詰め寄られるようなシーンはよく見てきました。『この世界では女を捨てなければ生き残れない』と思い知らされたんです。それに当時は、恋愛なんかしたら面白くなくなると思い込んでいました。これはきっと女芸人なら誰もが一度はハマる思い込みだと思います」
珠代さんは22歳の時、吉本新喜劇のメンバーに抜擢される。「女芸人に恋愛は御法度」という思い込みは、ここから溶け始めていったという。
「新喜劇に移った当初の私は、ウケが悪かったんです。新喜劇は喜劇ではあるものの、根底にあるのはお芝居。その役柄には、恋愛をする女性や男性を手玉に取る女性という設定もあります。それには恋愛という実体験も必要なんだと。(浅香)あき恵姉さんには、『実際に恋愛してみるのもいいと思う』と言われました。それまでの“恋愛なんてしたら笑いに鈍感になる”という思い込みがなくなりましたね。笑いに重要なのは人としての深みでもあり、女性である以上、その深みとは恋愛の悲喜交交を知ることでもあるんだと」
考えに変化があった珠代さんは、テレビ局のADの男性や、のちに28歳で結婚する吉本興業のマネージャーとの恋愛経験を積んでいく。「笑いにつながったかは不明ですが、私の人生の豊かな彩りになったのは間違いないですね」と振り返る。