◆宗派で大きな違い

 白熱する大論争を他の浄土宗の僧侶たちはどう考えているのか。ペット供養を行ない、3月からはペットとの共葬ができる墓地を開眼する東京・世田谷の感応寺の成田淳教住職は、

「教義では自分で念仏し往生するのが基本ですが、他の人が念仏して供養し、阿弥陀仏様から御光を照らしていただき浄土へと送るパターンもある。感応寺では犬や猫は後者の立場で、浄土での再会を期しています」

 と、林田氏の意見に賛同する。

 長圓寺(福岡県北九州市)の吉水友晃住職は「動物は転生してから往生する」という安達氏と同じスタンスでありながらも「数年前に愛猫を亡くした時、できることならば、今生で極楽往生してほしいと思いました。ペットを子供と同じように考えている方も多い現在、今後は『往生できるかもしれない』というように、解釈の柔軟性が必要になっていくのでは」と時代の流れによる変化の可能性を示唆した。

 他の宗派ではどうなのか。天台宗では「山川草木悉皆成仏」すなわち「動物、植物でも命あるものはすべて成仏する」との教えがあるため、早くから機関誌『天台ジャーナル』で「ペットの法要と供養の必要性」を説いてきた。

 日蓮宗のある住職は、「ペットの死後や供養自体がここ数年で広まってきた現象のため宗派としての公式見解は出されていない」と前置きしつつ、「日蓮上人は自分の身代わりになって死んだ犬を供養したという伝承があり、大事な教えである法華経には動物が成仏した説話もある。動物でもそのまま成仏できると考えます」と答えた。仏教でも宗派によってさまざまなようだ。

 ちなみに、宗教学者の島田裕巳氏は仏教以外の宗教における「ペットの死」の考え方をこう説明する。

「キリスト教では人間と動物は完全に分かれており、そもそも埋葬の対象にならない。神道も同様で、境内に動物を入れないのはその区別を明確にするためです」

 宗教学者の島薗進氏は「ペットと宗教」の今後は大きく変わっていくと予測する。

「そもそも仏教とは、本来人間がどう生きるかのためにあるもので、動物のためにあるものではありません。とはいえ、ペットの家族化が進む中、犬や猫の死による飼い主の悲嘆をどう癒すかも宗教的に今後は論じられていくはずです。それによりペットに対する供養のあり方、祈り方も変化していくでしょう」

 我が愛しのペットを見送るその日までに結論は出るだろうか。

※週刊ポスト2017年3月3日号

関連キーワード

トピックス

『金スマ』が放送終了へ(TBS公式サイトより)
《TBSも社内調査へ》中居正広『金スマ』謎の赤い衣装の女性100人の正体「鉄の掟」と「消えた理由」
NEWSポストセブン
サガン鳥栖で活躍する福田(本人Instagramより)
《5年ぶり2度目の女性トラブル》人気Jリーガーが中絶・不倫騒動 インスタのDMで「会いたい」…以前語っていた「反省してもう一度やり直す」はどこへ
NEWSポストセブン
渋谷被告
《一夫多妻70代ハーレム男が判決言い渡し直前に死亡》10代女性への性的暴行事件、ともに公判中だった元妻・千秋被告も昨年亡くなっていた
週刊ポスト
投打の二刀流をついに復活させるドジャース・大谷翔平
投手・大谷翔平、2度目の肘の手術を経て誕生する新たな投球スタイル 以前とは違った変化の“新スイーパー”を軸に組み立てへの期待、打撃専念シーズンの好影響も
週刊ポスト
騒動の中心になったイギリス人女性(SNSより)
「目出し帽にパンツ1枚の男たちが…」金髪美女インフルエンサー(25)の“乱倫パーティー”参加男性の衝撃証言《タダで行為できます》
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告
《あとで電話するね》田村瑠奈被告をクラブでナンパした20代男性が証言「“ハグならいいよ”と言われて抱き合った」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
男はスマホで動画を回しながらSPらに近づき中指を突き立てた
突然、中指を立てて…来日中の米ブリンケン国務長官に暴言を吐いた豊洲市場スタッフが“出禁”になっていた
週刊ポスト
逝去したアイ・ジョージさん(共同通信)
《訃報》紅白12回出場歌手のアイ・ジョージさんが逝去 91歳 関係者が悼む「昨年も元気にマッコリを飲んで…」ラテン歌謡ブームを牽引
NEWSポストセブン
北海道江別市で起きた集団暴行致死事件で、札幌家裁は川口侑斗被告(18)を主犯格と認めた
《江別・大学生集団暴行》「“イキり”で有名」「教師とケンカして退学」情状酌量の余地なしと判断…少年らのリーダーだった18歳の男が“グレた理由”  浮かび上がる主犯格らとの共通項「弱そうな人や歳下ばかり狙って…」
NEWSポストセブン
渡米した小室圭氏(右)と眞子さん(写真/共同通信社)
【独占】「眞子と呼んでください…」“NYの後見人”が明かす小室夫妻の肉声 海外生活の「悩み」を吐露、圭さんから届いた「外食は避けたい」のLINE
週刊ポスト
交際が順調に進んでいるSixTONESのジェシーと綾瀬はるか
綾瀬はるか、ジェシーの会食やパーティーに出席し“誰もがうらやむ公認カップル”に 結婚は「仕事に配慮してタイミングを見計らっている状況」か
女性セブン
シューズブランド「On」の仕掛け人として知られる駒田博紀氏
大人気スニーカーブランド「On」仕掛け人経営者が“不倫&路上キス” 取材に「ひとえに私の不徳の致すところ」と認める
週刊ポスト