「英語の文章を読み上げるだけで、英語力が伸びるわけがない」
「英語の音読なんてやる意味ない」
英語の音読、というと学校の英語の授業で教師から指名され「何ページから、はい読んで」と言われたシーンを思い出す方も多いかもしれません。
たしかに昔の学校の授業のように、ただ「英文を読み上げているだけ」では学習効果はありません。また、「音読だけ」では英語力は上がらないのも事実です。
しかし正しいやり方で、他の勉強法とも平行して行えば、音読は英語力アップにとても効果的です。
受験や定期テスト対策だけでなく、ビジネスシーンでも使える確かな英語力を支えてくれます。
この記事では、学習効果の出やすい音読のやり方を、おすすめの無料サイトやアプリなど身近で利用しやすい教材を紹介しながらお伝えしていきます。
音読は、英語の文章さえ手元にあれば場所や時間を選ぶことなく、初心者から上級者まで独学で気軽に行える学習法です。
「勉強を続けているのに、思うように英語力が伸びない」
このようにお悩みの方はぜひ、普段の学習に音読を取り入れてみて下さい。
- 執筆者:Lin
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小4までアメリカの現地校に通い、帰国後は「英語はネイティブ並みでしょう?」という周囲の誤解とプレッシャーゆえに、英語の勉強から遠ざかった過去あり。中途半端な英語力にコンプレックスを感じ、大人になってから再勉強。英検1級。ケンブリッジ英検CAE。TOEIC910点。さらに英語指導者(TEFL)や児童英語指導者(TEYL)の資格を持つ。プロフィールの詳細はこちら
目次
英語の音読は意味ない?実は音読こそ英語理解に必要なステップ
私自身、実は長い間「英語の音読なんて無駄」と思っていました。
学校時代の「はい、何ページから次の人読んで」という、退屈極まりない状況からくるトラウマだったのかもしれません。
ただ読むだけで面白くないし、人の音読を聞いていると眠たくなるし、音読にいったい何の意味があるのかと、本気で思っていました。
しかし大人になり、英語を勉強し直し始めてあることに気づきました。それは「読めない、内容が理解できない文章は、読み上げることができない」ということです。
「文章を読み上げる=音読ができる」ことが、その文章を読み、内容を理解するために必要なステップであるということに、遅ればせながら気づいたのです。
もちろん、よどみなく読み上げられているからといって、内容を完全に理解しているかどうかは別問題。
しかし、少なくとも声に出して読み上げることは「内容を理解する助け」くらいにはなると、今の私は実感しています。
また、以前イギリスの小学校に娘を通わせていたときに、音読がとても重視されていたことも、私自身の音読に対する意識が変わったきっかけでもあります。
娘が通う現地の小学校では、文字を習得し始める4歳、5歳児から毎日、音読の宿題が課せられました。正しい読み方は学校で教師から習い、家で反復練習をさせるのです。
親は毎日子どもの音読を聞き、「音読ノート」に感想を書き、サインをし、翌日提出。親子ともにかなりの負担でしたが、このやり方で娘は難なく英語が身についたのは事実です。
このように「音読に対する意識」が180度変わった経験を持つ私が、実際に感じた音読で得られるメリットを紹介します。
英語の総合力が伸びる勉強法「音読」のメリット
英語音読のメリットは4つあります。
英語音読のメリット
- 自然な発音と英語のリズムが身につく
- リスニング力が上がる
- 意味のまとまりで英語を理解できるようになり読解力が上がる
- 中学生・高校生の定期テストや大学受験にも効果あり
自然な発音と英語のリズムが身につく
英文を黙読すると、「正しい発音の仕方が不確かな単語」や「強勢位置がよくわからない文章」を読み飛ばすことができます。
ですが音読をするとなると、読み飛ばすことはできません。
もし単語の発音やアクセントがわからなければ、声に出して読むことができないため、その時点で発音が身についていないことが明確になります。
つまり、音読をすることでわからないことが曖昧なままにならずに済むのです。
わからないことを明らかにした上で、正しい知識を効率よくインプットできるので、自然な正しい英語がどんどん身についていきます。
リスニング力が上がる
正しい発音とアクセントが身につくと、自分で発することができるようになるだけでなく、相手が言っていることもわかるようになり、リスニング力が上がります。
多くの日本人が「英語のリスニングが苦手」というのは、耳から入る英語と、目から入る英語、そして頭のなかにある英語がバラバラに存在しているのが原因です。
正しいやり方で音読をすることで、これらの点在している英語を結びつけられるようになり、リスニング力が上がっていきます。
意味のまとまりで英語を理解できるようになり読解力が上がる
正しく音読をするには、文章の息継ぎの箇所を意識することが必要です。
英語の息継ぎ(=ポーズ)の箇所は、意味の区切りと一致します。
息継ぎの箇所を意識しながら英語を声に出して読み上げることは、つまり英文の意味の区切りを意識して読むことになり、内容理解がしやすくなります。
中学生・高校生の定期テストや大学受験にも効果あり
最近の傾向として、定期テストや受験で避けて通れないのが、まとまった分量の英文を読ませて読解力を測る長文問題です。
配点が高いこともあり、英語の成績に直結しがちなこの長文問題対策には、英文の意味のまとまりを意識しながら読み上げる音読練習が有効です。
また音読は得意・不得意の差がつきやすいリスニング対策にもなります。試験での点数アップを効率よく目指したい中高生には、音読は特におすすめです。
英語の音読は1日何分・何回やれば効果があるの?音読の頻度
学習効果がもっともあらわれやすい音読のやり方は、私は「毎日、短時間」取り組むことだと考えます。
音読は、音の細部にまで気を配る必要があるので集中力がいります。長い時間を費やして、漫然と「ただ読み上げるだけ」になっては、時間の無駄にしかなりません。
しっかり集中して、まずは1分から始めてみましょう。発話スピードにもよりますが、150語程度です。
お手本を1回聞き、自分で発声を2回しても3分です。意味の下調べを含めても5分もあれば一通りのことはできます。
普段の学習前に行う、軽いウォーミングアップのつもりでチャレンジしてみましょう。
音読をしたときと、していないときで英文の読み取り精度が違うことに、1度でもやれば気づけるはずです。まずは1週間、続けてみて下さい。
学習効果を最大にする英語の音読の正しいやり方
音読は「ただ漫然と英文を読み上げる」だけでは、学習効果はありません。効果が出やすい、おすすめのやり方を説明していきます。
英語音読の効果的なやり方
- 黙読で知らない単語の意味をチェックする
- 声に出して音読する(1回目)
- お手本音声を聞いて正しい息継ぎの箇所に印をつける
- 印を意識して音読する(2回目~)
- 音声を聞きながら同時に音読する
1. 黙読で知らない単語の意味をチェックする
まずはざっと黙読をして、知らない単語や言い回しに印をつけていきます。
わからないところはそのままにせず、辞書で調べておきましょう。単語の意味だけでなく、どこにアクセントを置くのかもこの時点で確認しましょう。
意味のわからない言葉は、声に出して読んでみたところでわかるようにはなりません。
音読の前に、「知らない単語の意味を辞書で調べる」という下準備を面倒がらずにしっかり行うことで、学習効果を高めることができます。
2. 声に出して音読する(1回目)
下準備が済んだら、いよいよ声に出して英文を読んでいきます。読み上げるスピードは、ゆっくりで大丈夫です。
「速く読むこと」ではなく、「リズムよく読むこと」を意識しましょう。
息継ぎやポーズをいれる箇所は「意味の区切り」と重なります。
目から入る文字をただ読み上げるのではなく、この「意味の区切り」を意識しながら音読できると、文脈をしっかり捉えながら読み進められます。
3. お手本音声を聞いて正しい息継ぎの箇所に印をつける
音源を聞き、息継ぎの箇所や文・言葉のイントネーションを確認します。
原稿に印をつけていくと、自分の読み上げ方との違いが目視できて改善箇所が明確になります。
4. 手順1でつけた印を意識して音読する(2回目~)
お手本を聞いた後、2回目の音読をします。原稿につけた正しい息継ぎの箇所やイントネーションを意識しながら、読んでいきましょう。
つかえずに読めるようになるまで、音読を繰り返します。ここでもスピードを上げることよりも、リズムよく読むことを意識しましょう。
ゆっくりでも、つかえずに読めるようになれば、繰り返す内に自然とスピードも上がっていきます。
5. 音声を聞きながら同時に音読する
つかえずに読めるようになったら、最後に仕上げとしてチャレンジしてほしいのが音声を聞きながら、同時に音読をする「オーバーラッピング」です。
英語らしい、自然なリズムが無理なく身につきます。
英語の音読をするときに気をつけることや注意点
音読は正しいやり方でやらないと効果はありません。取り組む際、特に気をつけたい点を見ていきましょう。
文章の意味の区切りを考えながら音読する
音読は「何も考えずにただ英語を声に出すだけ」では、学習効果を期待できません。
文章の意味の区切りをしっかり意識することができて、初めて「正しい」音読ができます。
お手本音声を聞くときに息継ぎの箇所を確認し、そこが文章の意味の区切りであることを頭に置きながら、自分で発声してみることが大切です。
文章全体のリズムを意識しながら音読する
英語の文章を、日本語と同じリズムで読んでしまうと非常に平坦で、ブツ切りに聞こえてしまい「英語らしいリズム」からはほど遠くなります。
「単語一つ一つの発音を正確にしよう」と意気込むよりも、文章全体の流れを止めずに読むことを意識しましょう。
強勢の位置、イントネーションの上がり方・下がり方などを、お手本音声を参考にしながら身につけていきます。
ちなみに日本語はアクセントをつけなくても通じる言語なので、日本人にとってアクセントの重要性は実感しにくいかもしれません。
ですが、アクセントがつかないと、英語は本当に伝わりにくいです。
同じ言葉でも、アクセント位置が違うだけで意味が違うものもあります。(例:dessert 前:砂漠 後:デザート)
もちろん聞き手は前後の文脈から、適している意味を判断するわけですが、この「なんか発音違うけど、きっとこの意味合いで言ってるんだな」といった「マッチング作業」があまりに多くなってしまうと、相手の負担は計り知れず、コミュニケーションの妨げになります。
「日本人と韓国人の英語は、ぶつぶつ切れて、平坦で、何言ってるかわかりにくい!」「聞き取れない!もっと抑揚つけて話して欲しい!」と散々イギリス時代の英語講師(イギリス人)と、クラスメート(スウェーデン人とオランダ人)に言われたことを思い出します…。
英語上級者はシャドーイングも取り入れて
英語上級者は、文字を読み上げるだけでの音読では、なかなか今以上に英語力が上がりません。一歩進んで、シャドーイングを行うことをおすすめします。
シャドーイングとは、文字を読まずに耳から聞こえた音声を、追いかけて復唱する学習法です。
リスニング力アップに効果があるので、「音読だけでは最近物足りない」と感じはじめた方はぜひチャレンジして下さい。
音読は教材選びが大切!おすすめ音読教材を紹介(無料あり)
効果的に音読をするには、適切な教材選びが欠かせません。教材選びを間違えると、いくら正しいやり方で音読しようとしても、期待する効果は得られないでしょう。
音読用の教材を選ぶときは、「難易度」がポイントになります。
まず英文が難しすぎると、下準備の「言葉を調べる」ことに時間がかかりすぎてしまいます。
結果的に英文を口に出して読む「音読」にかける時間が減り、学習の意味を成しません。負担が大きすぎて、挫折しがちです。
逆に簡単すぎると、新しい語法や言い回しがインプットされません。ただ英語を読み上げているだけになってしまい、これも「音読」の学習の意味を成しません。
「音読」は「英語を声に出す」という行為からアウトプット学習にも思えますが、実は新しい知識を定着させるためのインプット学習でもあります。
そのため、やさしすぎる内容では学習効果はあらわれません。中学生が小1の国語の教科書を読んでも、国語の成績は上がらないのと同じことです。
辞書なしで読んでも文章の大意はとれるが、自分にとって「わからない」「知らない」ことが2~3カ所ある。そのようなレベルの教材が最適です。
「教材選びが大変そうだな」と思った方は、次におすすめの音読教材を紹介するので、こちらも参考にしながら、教材を選んでみて下さい。
音読の効果を引き出す音声つきの本・参考書
音読は、原稿に印をつける作業があるので「紙の教材の方が扱いやすい」という方も多いかもしれません。
音読専用の参考書もたくさん出版されていますが、音読専用の参考書でなくても大丈夫です。
ここでは書店などでも手に入れやすく、音読学習に適している教材をご紹介していきます。
中高生には英検の参考書が手軽でおすすめ
音読を通じて効率よく英語力を上げて、試験で高得点を狙いたい中高生におすすめなのは、英検対策用の参考書です。
お手本音声が無料アプリで確認できるのはもちろん、対訳や派生語などが日本語でも記載されているので、下調べの時間が省け、音読に専念できます。
また、抑えておきたい重要表現がわかりやすくピックアップされている点も、効率よく学習を進める助けになります。英検の受験予定がなくても、一読の価値がありますよ。
さまざまなトピックの文章を読むことで自然と背景知識がつくのも嬉しいメリットです。
あまり背伸びをせず、準2級・3級くらいのテキストからチャレンジしてみましょう。
「【音声アプリ対応】英検準2級 文で覚える単熟語 4訂版」といった、文単シリーズは非常におすすめです。
社会人や上級者にはテキストと音声がついた時事ニュースがおすすめ
試験対策よりも、日常的に使う英語力を鍛えたい社会人や大学生など英語上級者の方には、会話の引き出しも増やしてくれる時事ニュースを音読教材に使うことをおすすめします。
CNN English Expressは朝日出版社が提供する英語学習雑誌で、リスニング用教材として定評があります。プロのアナウンサーが読むお手本音声が、アプリで聴き放題なんです。
文章内で使用している英語の語彙レベル、アナウンサーの読み上げスピードなどから難易度も示してくれているので、自分の英語力に合った文章が選びやすくなっています。
あなたの音読を採点してくれる無料アプリ
独学で行える音読は、読み方や発音がどうしても自己流になりがちです。
客観的に、音読の精度を判定してほしいときに、頼りになるのが音読採点をしてくれる無料アプリです。
英語学習アプリELSA Speakは発音矯正に役立つアプリですが、単語の発音の正誤だけでなく、文章全体のイントネーションもチェックできます。
ゲーム感覚でも取り組めるので、定期的にチェックしてみると自分の成長も目視できて楽しみながら学習を続けられますよ。
ちなみに、ELSA Speakは無料で始めることができます。さらにELSA Premiumプランを利用すると、月額2,316円(年間プラン27,800円、税込)ですべての機能が無制限で利用できます。
発音矯正だけでなく、より実践に近いスピーキング練習を独学でやりたい方は、ぜひチェックしてみて下さい。
【音読の補助教材】文章をコピペすると英語を読み上げる無料サイト
音読をしていても、正しくできているのかわからない。音読したいスクリプトに、ネイティブのお手本音声がついていない。
そのようなときに活用できるサイトが、「音読さん」です。
テキストをコピーして貼りつけると、ネイティブ音声で読み上げてくれます。
同じ英語でも、北米、イギリス、インドといった地方別のアクセントや、話者の性別も選べるので、違いもわかって面白いですよ。
音読学習の補助教材として活用してみてはいかがでしょうか。
英語の音読に関するよくある質問
- 英語力を上げるために音読をしたいです。長文と短文のどちらを音読すると効果が高いでしょうか?
- 長文を読むようにしましょう。といってもいきなり大量に読む必要はありません。まずは1パラグラフごと、200語〜300語程度ずつに区切って音読してみることをおすすめします。前後の文章との関係性を見極めながら、文章全体の大意をとることを意識できるとぐっと読解力が上がります。
- 長文の音読を何回もしているとのどが痛くなります。大きな声を出さないで小声で読んでも効果がありますか?
- 小声で読んでも音読の効果はあります。息継ぎの箇所やイントネーションを意識して、英語らしい抑揚をつけながらリズムよく読むことを意識しましょう。
- 音読すれば英語を話せるようになりますか?
- 残念ながら、音読練習だけでは英語を話せるようにはなりません。英語を話せるようになるには、その場その場にふさわしい語彙力・表現力を駆使して、目の前にいる相手に臨機応変に対応していく力が必要だからです。
用意された文章を「読み上げている」にすぎない「音読だけ」では、こうした柔軟な対応力は鍛えることができません。
音読でインプットした英語を実際に使う、アウトプットを適宜組み合わせていかれれば、話す力も着実に上がるでしょう。 - 英語の長文を音読するとき、読みながら内容を頭に入れることができません。どうしたら内容がイメージできるでしょうか?
- 長文のなかに、知らない言い回しや単語が多すぎるのかもしれません。まずは音読に取り組む前に、辞書などを使って言葉の意味を調べておきましょう。実際に音読するときは、息継ぎやポーズの箇所に意識を向けてみて下さい。意味のまとまりを意識することにつながります。また一度に大量の文章を読んでも集中力が持ちません。3分間だけ、1パラグラフごと、など自分で読む量をコントロールすることも大切です。
- 英語の音読をするとき、口が回らず、スラスラ読めないので悩んでいます。ゆっくり読んでも意味ないでしょうか?
- はじめはゆっくりで問題ありません。大事なのは、息継ぎの箇所とイントネーションといった英文を読み上げるリズムです。このリズムさえ一度身につけば、繰り返していく内に自然なスピードで読めるように必ずなります。
【まとめ】「正しい音読」ができれば英語力アップに効果がある
この記事では音読という学習法について、そのメリットから正しいやり方、おすすめの教材などをご紹介してきました。
音読は独学が可能で、読み上げる英文さえあればどこでも行える優れた学習法です。
しかしその反面、正しいやり方で行わないと効果は充分にでず「やっても意味がない」と言われがちでもあります。
今回記事で紹介したように、英語学習のひとつとして音読を取り入れれば、あなたの英語力アップに繋がることは間違いありません。
独学で音読したあと、きちんと発音できているか確認したいときは、英会話アプリやオンライン英会話等でアウトプットし、フィードバックをもらうとよいですね。
ぜひ「正しい音読の仕方」を身につけて、英語力に一段と磨きをかけていきましょう。