【理学研究科】物理学専攻の学生が日本気象学会で口頭発表を行いました

2024.11.27

本学理学研究科 物理学専攻の滝川 有希さん、理学部 宇宙物理・気象学科の髙木 征弘教授、および学内外の研究者を含む研究グループが日本気象学会2024年度秋季大会において、金星の紫外線反射率と大気循環の関係に関する口頭発表を行いました。近年発見された金星のスーパーローテーションの時間変動メカニズムの説明を試み、大変好評を得ました。

発表学会:日本気象学会2024年度秋季大会
場所:つくば国際会議場
題目:金星の紫外アルベド長期変動と大気大循環(2)
著者:滝川 有希、髙木 征弘、安藤 紘基、佐川 英夫、杉本 憲彦、神山 徹、松田 佳久
発表日:2024年11月14日 C358

近年の観測データから、金星の太陽光反射率(アルベド)が最近 10 年で数十%も変動し、それに伴って、金星上層大気の太陽光吸収による加熱率が上部雲層 (高度59–72 km) で大きく変化していることがわかってきました。このような太陽光吸収量の変動は地球では考えられない大きさであり、大規模な気候変動を、特に太陽光吸収量の多い雲層においてもたらすものと予想されます。実際、先行研究は雲頂の平均東西風 (大気スーパーローテーション) の風速が、アルベドの変化に同期するように30–40% も変動していることを指摘しています。 欧州の金星探査機Venus Express や日本の金星探査機「あかつき」の観測によると、雲頂での東西風速はアルベドが大きいとき(太陽光をたくさん反射するとき)80–90 m/s まで遅くなり、アルベドが小さいとき110 m/s 程度まで速くなります。本研究では太陽光加熱の変化に対して大気大循環がどのように変化するか、数値シミュレーションを用いて明らかにすることを試みており、前回の発表では雲頂付近の平均東西風の変化は主に熱潮汐波によってもたらされていることを示しました。今回の発表では太陽加熱を東西平均成分 Qz とそれからのずれ Qt に分け、Qz のみを時間変化させた場合と Qt のみを時間変化させた場合について調べました。
その結果、雲頂付近の平均東西風の変化は主に Qt 成分の変化によって説明できることが明らかになりました。この結果は東西風の変化が主に熱潮汐波によって作られていることを意味しています。また、高度 80 km以上では Qz 成分の寄与が大きいことや、Qz 成分のみを時間変化させた場合にも Qz 成分のみを変化させた場合とほぼ同等の熱潮汐波による平均東西風の加速効果が生じるといった興味深い結果も示されました。今回の結果は雲頂付近の平均東西風の変化が主に熱潮汐波によってもたらされているという前回の結果を支持していますが、熱潮汐波の効果は太陽加熱の大きさだけでなく東西平均風の空間構造にも強く依存するということを示しています。

口頭発表する滝川さん
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