臨時講演「『源氏物語』宇治十帖の地をめぐる」を開催しました

2024.12.19

2024年11月9日(土)、臨時講演「『源氏物語』宇治十帖の地をめぐる」を開催しました。午前中、宇治橋東詰に集合し、宇治市源氏物語ミュージアム→宇治上神社→宇治神社→平等院を回りました。
まず、京阪宇治駅の宇治十帖古跡の「東屋」と「椎本」について、歩きながら説明をしました。「東屋」の古跡には「東屋観音」とよばれる石仏があり、一方「椎本」の碑は彼方神社の小さな境内に建てられています。今回、十帖全ての古跡を回ることはできませんでしたが、市内を散策する中で宇治市では『源氏物語』を大切にしていることを感じることができます。
宇治市源氏物語ミュージアムでは見学の前に家塚 智子館長からミュージアムの概要と宇治十帖古跡の碑やモニュメントについて解説をしていただきました。お話を聞いた後に展示を鑑賞したことで理解が深まったという声が聞かれました。
東屋観音
源氏物語ミュージアム付近にて
歩道には宇治十帖古跡の案内が設置されています
次に世界文化遺産である宇治上神社を訪れました。神社の境内には「桐原水」が湧き出ています。これは宇治七名水の一つで、現存する唯一のものです。階段を下りていくと、この湧水を手水として用いることができます。参加者は手を清め、興味深く見学をしていました。その後、現存する最古の神社建築である本殿(平安時代後期)と鎌倉時代に建てられた拝殿に参拝しました。
そこから宇治神社へと移動します。道中、宇治十帖古跡「早蕨」の碑を発見しました。
宇治七名水「桐原水」
階段を下りて手水を使います
宇治十帖古跡「早蕨」
宇治神社と宇治上神社は元々は二社一体で「離宮社」などと総称されており、ご祭神として菟道稚郎子命(うじのわきのいらつこのみこと)がお祀りされています。菟道稚郎子命が河内国から宇治に向かう途中、道に迷っていると一羽の兎が現れ、振り返りながら道案内をしたという伝説があります。このことから「神使のみかえり兎」として崇められ、宇治神社の境内に掲げられる提灯には、振り返る兎の姿が描かれています。
宇治神社を出た後は、宇治川右岸にて匂宮と浮舟が宇治川で小舟に乗る場面をモチーフとした宇治十帖古跡を象徴するモニュメントを見学し、朝霧橋を渡って橘島を通り、さらに橘橋を渡って宇治川左岸に至りました。
宇治神社のみかえり兎
朝霧橋から見る宇治川の流れ
午後は平等院を訪れて、まずは鳳凰堂内部を拝観しました。本尊阿弥陀如来坐像と雲中供養菩薩像にお参りし、壁扉画を鑑賞しました。その後、平等院の塔頭である浄土院にて神居 文彰住職に浄土信仰と『源氏物語』についてお話をしていただきました。平安貴族の間で盛んであった浄土信仰と、『源氏物語』の複雑な人間関係の中にみられる縁(えにし)、仏教にもとづく因縁について解説されました。また鎌倉時代の仏教説話集などでは、紫式部は物語という虚言で人の心を惑わしたため地獄に落ちたといわれており、そのため「源氏供養」が行われてきたことにも触れられました。
最後に平等院ミュージアム鳳翔館の展示を見学しました。秋期特別展として「縁を結ぶ—浄土と源氏物語の情景—」を開催しており、寺院が所蔵する「源氏物語絵」や「阿弥陀来迎図」などを鑑賞しました。
参加者からは「個人で回っていても気づかぬところを教えてもらえた」、「すてきな取り組みであった。また参加したい」などの感想が寄せられました。
紫式部像と宇治橋
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