生命科学部 遠藤 斗志也 教授・河野 慎 研究助教等の研究グループが、ミトコンドリアのプレ配列をもつタンパク質の内膜透過に必須の膜電位の役割を解明しました!
2019.06.19
生命科学部 遠藤 斗志也 教授、河野 慎 研究助教等の研究グループは、ミトコンドリアのプレ配列をもつタンパク質の内膜透過に必須の膜電位の役割を解明することに成功しました。
1000種におよぶミトコンドリアのタンパク質の大部分は、ミトコンドリアの外(サイトゾル)で作られてからミトコンドリアに運ばれます。特にミトコンドリアのマトリクスのタンパク質の場合は外膜と内膜の2つの膜を通過してはじめてマトリクスに到達できますが、このとき、マトリクスのATPと内膜の膜電位という2つのエネルギーが必要となります。ATPはミトコンドリアタンパク質をマトリクス側から引っ張るモータタンパク質Hsp70の作動に必要です。しかし膜電位の役割については十分に解明されていませんでした。
内膜の膜電位はマトリクス側が負、膜間部側が正なので、ミトコンドリアタンパク質のN端にある、正に荷電したプレ配列をマトリクスへと引っ張ることで、後ろに続くドメインのアンフォールディングを引き起こすという考え方が提唱されていました。しかし今回の研究で、この説が間違っていることが明らかになりました。内膜の膜電位は、基質タンパク質のプレ配列が内膜からはずれないようにすることで、プレ配列にマトリクスのモータタンパク質Hsp70が結合しやすくするのです。Hsp70がプレ配列にしっかり結合できると、Hsp70は「ブラウニアンラチェット」という仕組みで、タンパク質をマトリクスに効率よく引き込むことが可能となります。本研究の成果により、ミトコンドリアに運ばれる効率が低い、比較的プレ配列が短いタンパク質であっても輸送効率を上げることが可能となり、ミトコンドリアの機能低下などの障害を回復する道が開けることが期待されます。
この研究成果は、Scientific Reports誌に掲載されました。
論文タイトル&著者
タイトル | Role of the membrane potential in mitochondrial protein unfolding and import |
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著者 | Takehiro K. Sato、Shin Kawano & Toshiya Endo |
掲載誌 | Scientific Reports |
掲載日 | 2019年5月21日 |
URL | http://dx.doi.org/10.1038/s41598-019-44152-z |