教養としての量子物理

教養としての量子物理
著者 Michael G. Raymer 著占部 伸二 訳
分野 物理学  > 量子力学  > 量子物理学
物理学  > 量子力学  > 量子力学
科学一般  > 科学一般  > 物理系
発売日 2023/07/28
ISBN 9784320036246
体裁 A5・304頁
定価 3,740円 (本体3,400円 + 税10%)
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本書は、物理の専門家でない読者を対象に、数式を一切使わず、Q&Aの形で比喩などを使って、量子物理の基本的な考え方と最近の応用を易しく丁寧に紹介した一書である。
基本的な考え方については、標準的解釈に基づいて、古典物理とはどのように異なるか、また我々の日常の直感にいかに反するものかという点を強調して、量子状態、ユニタリ発展、測定過程などが易しく丁寧に説明されている。
応用については量子通信、ベルの不等式の破れ、量子テレポーテーション、量子コンピューティングなど最近大きく注目されている量子情報分野、および原子時計や原子干渉による重力計などの計測分野が取り上げられており、最近の技術の進歩を把握するのに十分な領域がカバーされている。さらに、量子場の考え方や量子力学の解釈問題も課題として扱っている。
  [原著: Quantum Physics: What Everyone Needs to Know, Oxford University Press, 2017]

第1章 量子物理
1.1 量子物理とは何か?
1.2 量子物理は日常生活にどのように影響するのか?
1.3 物理理論とは何か,そして物理の目標は何か?
1.4 物理に言及するときはなぜ「モデル」という言葉を使うのか?
1.5 なぜ2015年は量子物理にとって特別な良い年だったのか?
1.6 なぜ古典物理理論で記述できる物体と,量子物理的な記述が必要になる物体があるのか?
1.7 物理的世界を作り上げている根源的な存在は何なのか?
1.8 古典的な記述と量子的な記述において,光はどのように異なるのか?
1.9 光検出の不連続性は何をもたらすのか?
1.10 1個のみの光子の生成または検出は可能なのか?
1.11 量子物理はどのようにして発見されたのか?
1.12 電磁場は量子的性質をもつのか?

第2章 量子測定とその結果
2.1 古典物理における測定とは何か?
2.2 光の偏光とは何か?
2.3 光の偏光はどのようにして決定,または測定されるのか?
2.4 もし光が偏向の混合からなるならば,何が起るのか?
2.5 もし,光がHまたはV以外に純粋に偏光しているならば何が起るのか?
2.6 この偏光の測定結果の背後にある物理は何か?
2.7 コヒーレンスとは何なのか,そして何の役割を果たすのか?
2.8 1個の光子の偏光を測定できるのか?
2.9 どのようにして特定の純粋な偏光をもった光子を準備できるのか?
2.10 量子測定によって1個の光子の偏光を決めることができるか?
2.11 光の偏光の古典的概念と量子的概念の違いは何なのか?
2.12 どのようにして光子の偏光測定に対して確率を予測できるのか?
2.13 量子の領域において測定することはどういう意味をもつのか?
2.14 測定の相補性とは何か?
2.15 もし構成要素である個々の量子的な物体が明確な性質をもたないならば,どのようにして人間の大きさの物体がその明確な性質をもつように見えることになるのか?
2.16 物体の状態とは何を意味しているのか?
2.17 量子状態とは何か?
2.18 ボブはアリスによって準備された量子状態を実験的に決めることができるか?
2.19 ボブは単一光子の状態のコピー(複製)を作れるのか?
2.20 量子コヒーレンスとは何か?
2.21 量子力学の指導原理は何か?
2.22 量子力学は本当は何を記述するのか?

第3章 応用:量子的なデータ暗号化
3.1 完全に安全なインターネット通信を作るのに量子力学を利用できるのか?
3.2 どのようにして暗号化はメッセージを安全に保つのか?
3.3 ほとんどの暗号化法は一般的に解読されるのか?
3.4 解読できない暗号化法があるのか?
3.5 どのようにして二進符号を使ってテキストが表現されるのか?
3.6 どのようにしてテキストメッセージを二進法の鍵を使って暗号化および解読するのか?
3.7 安全な暗号鍵を作るのに光子の偏光はどのように使われるのか?
3.8 どのような物理原理が量子鍵配送の基礎になっているのか?
3.9 量子鍵配送はどのようにはたらくのか?
3.10 もし盗聴者がいる場合にはどうなるか?
3.11 ボブとアリスはどのようにしてイブの存在を検出できるのか?
3.12 もしイブが常に存在しているとどうなるのか?
3.13 イブはもっと良い他の盗聴システムを考えることができるだろうか?
3.14 量子鍵配送の現状はどうなっているのか?

第4章 量子的な振る舞いとその記述
4.1 測定されないとき,量子的物体はどのように振る舞うのか?
4.2 電子とピンボールはどのようにして異なった振る舞いをするのか?
4.3 なぜ電子はいつも山羊に向かっていくのか?
4.4 装置を変更してみると何が起るのか?
4.5 1つの経路を遮断したら何が起るのか?
4.6 ここまでで何を結論づけることができるのか?
4.7 どちらの経路を通ったのかを測定することができるのか?
4.8 なぜこの同じ論法をピンボールに適用できないのか?
4.9 ユニタリな振る舞いとは何か?
4.10 どのようなユニタリ過程の例によって主要な点が説明されるのか?
4.11 ユニタリな過程の帰結には何が追加されるのか?
4.12 2つの経路の実験において,物質は光子と同じように振る舞うことができるのか?
4.13 光子は時には古典的確率に従って振る舞うことができるのか?
4.14 これまでの考察を物理原理としてどのようにまとめることができるのか?
4.15 量子物理における測定とは何か?
4.16 量子的な物体は同時に2つの場所に存在できるのか?
4.17 量子鍵配送ではユニタリ過程がどのように使われているのか?
4.18 2つの可能性がある状態を量子論はどのように記述するのか?
4.19 量子論は2つの可能な経路をもつ電子をどのように記述するのか?
4.20 マクロな物体の状態を表すのに矢印が使えるのか?
4.21 結果の確率は可能性とどのように関係しているのか?
4.22 どのようにして電子を2つの経路に分離できるのか?
4.23 経路の干渉が起るとき,状態矢[状態ベクトル]は確率を見つけるためにどのように使われるのか?
4.24 経路の1つを変化させたら何が起るのか?
4.25 どのようにしてこれまでの考えを指導原理にまとめることができるのか?
4.26 さらに大きく経路長を変化させるとどうなるか?
4.27 この実験から推察できる一般原理があるのか?
4.28 この章の留意点は何なのか?

第5章 応用:量子干渉による重力のセンシング
5.1 センシング技術とは何か?
5.2 重力の強さのセンシングはなぜ役に立つのか?
5.3 重力を検知するのに量子物理はどのように使われるのか?
5.4 この干渉計は前の章で議論したものとどのように違っているのか?
5.5 この装置は実用的な重力センサーなのか?

第6章 量子的な可能性と波
6.1 どのようにして波の概念が量子論に入ってきたのか?
6.2 波とは何か?
6.3 波の干渉とは何か?
6.4 量子的な可能性の波とは何か?
6.5 ψ波はどのようにして内部のタイミング(計時)を保持するのか?
6.6 粒子の内部時計のサイクル時間あるいは時を刻む速さは何によって決められているのか?
6.7 どのようにして,これまでの指導原理を集めて,首尾一貫した量子論へと組み立てることができるか?
6.8 運動量とは何か,また何がそれを変化させるのか?
6.9 エネルギーとは何か?
6.10 シュレーディンガー方程式は量子物体が空間を動く様子をどのように記述するのか?
6.11 量子波は確率とどのように関係するのか?
6.12 シュレーディンガー方程式を使った例には何があるか?
6.13 どのようにして量子的粒子は確率ゼロの位置を通り抜けるのか?
6.14 ハイゼンベルグの不確定性原理とは何か?
6.15 電子は粒子と波の両方であるということは正しいのか?

第7章 マイルストーンと分岐点
7.1 量子物理のどのような側面をこれまで見てきたのか,そして次にどのような話題を議論すべきだろうか?
7.2 これまでにどのようなマイルストーンを通過してきたのか?
7章  訳註

第8章 ベルテストと局所実在論の終焉
8.1 実在の本質が実験で探求できるのか?
8.2 相関とは何か,そしてそれは何を教えてくれるのか?
8.3 相関をもつ性質の例には何があるか?
8.4 相関のある振る舞いの例には何があるか?
8.5 相関はどのように定量化されるのか?
8.6 古典的相関と量子相関の違いは何なのか?
8.7 実在論とは何か,またどのようにしてこれを実験的に試験できるのか?
8.8 実在論の実験的な試験のための舞台の設定
8.9 部分的な測定だけを行うとしたらどうなるのか?
8.10 実験における両者の間の交信を禁止しているものは何なのか?
8.11 局所実在論とは何か?
8.12 どのような種類の実験が局所実在論を終わらせることができるのか?
8.13 原子によって放出される光のすべての状態は,これと同じ結果を生むだろうか?
8.14 我々の議論に何らかの弱点や抜け道があるか?
8.15 どのような実験によって潜在的な弱点が克服されたのか?
8.16 どのようにして測定の設定が独立であると確かめることができるのか?
8.17 ジョン・ベルはこのような実験の結果を何と思ったか?
8.18 局所実在論の崩壊は,我々が古典的な直観や古典物理をともに捨てなければならないことを意味しているのか?
8.19 我々は局所因果律あるいは局所実在論,あるいは両方ともを捨てるべきか?

第9章 量子もつれとテレポーテーション
9.1 量子もつれとは何か?
9.2 どのようにして複合的存在の状態を表現するのか?
9.3 どのようにして光子対の量子もつれ状態を表すのか?
9.4 どのようにして光子対に対してベル状態を作ることができるのか?
9.5 どのようにしてもつれたベル状態は局所実在論を破るのか?
9.6 量子的な複合的存在の成分について何を知ることができるのか?
9.7 複合的な量子的存在について,知るべきことすべてを知るということは実際には何を意味しているのか?
9.8 量子もつれを使うことによってこれまでできなかった何を達成できるのか?
9.9 どのようにして量子もつれによって量子テレポーテーションが可能になるのか?
9.10 アリス側で起ったことがボブ側で起ったことに影響を及ぼすのか?
9.11 量子テレポーテーションは瞬時に起るのか?
9.12 人間をテレポートできるのか?
9.13 量子テレポーテーションは何に使えるのか?

第10章 応用:量子コンピューティング
10.1 情報は物理的なものなのか?
10.2 コンピューターとは何か?
10.3 コンピューターはどのように動作するのか?
10.4 単一の論理ゲートをどのくらい小さくできるのか?
10.5 量子的な振る舞いを利用したコンピューターを作ることができるのか?
10.6 キュービットとは何か?
10.7 どのような物理原理が古典コンピューターと量子コンピューターとを区別するのか?
10.8 量子コンピューターはどのような論理ゲートを使うのだろうか?
10.9 量子コンピューターはどのように動作するのだろうか?
10.10 素因数分解はなぜむずかしいのか?
10.11 どのようにして量子コンピューターは因数分解の問題を解くことができるのだろうか?
10.12 量子コンピューターは他のどのような計算科学問題を解くことができるのだろうか?
10.13 物理と化学のどのような問題を量子コンピューターは解くことができるのだろうか?
10.14 なぜ量子コンピューターを作ることはそんなにむずかしいのか?
10.15 量子コンピューターを実現する見通しはどうなのか?
10.16 量子コンピューターを作る有望なアプローチは何だろうか?
10章  訳註

第11章 エネルギーの量子化と原子
11.1 量子力学におけるエネルギーの量子化とは何か?
11.2 なぜ粒子が閉じ込められるとエネルギーが量子化されるのか?
11.3 どのようにして原子の中の電子は量子化されるのか?
11.4 なぜ電子は谷の底に静止することができないのか?
11.5 どのようにして原子は光を吸収するのか?
11.6 どのようにして原子は光を放出するのか?
11.7 原子内の電子は核の周りを回るという古典物理的な考えはどうなったのか?
11.8 三次元における電子のψ波[波動関数]はどのように見えるのか?

第12章 応用:量子技術を使った時間,運動,重力のセンシング
12.1 量子物理に基づいたセンシング技術とは何か?
12.2 時間の科学的な定義は何か?
12.3 時計とは何か?
12.4 どのようにして時計を同じ性能にすることができるのか?
12.5 なぜ根源的な量子的物体が最も完全な時計を作るのか?
12.6 なぜ良い時計は技術的に重要なのか?
12.7 現在の原子時計はどれほど正確なのか?
12.8 基本型の原子時計はどのように動作するのか?
12.9 最も性能の優れた原子時計はどのように動作するのか?
12.10 慣性センサーとは何か?
12.11 加速度計とは何か?
12.12 従来の加速度計はどのように動作するのか?
12.13 加速度計は何の役に立つのか?
12.14 重力計とはどのようなもので,何の役に立つのか?
12.15 従来の重力計はどのように動作するのか?
12.16 基本的な量子重力計はどのように動作するのだろうか?
12.17 高性能量子重力計はどのように動作するのだろうか?
12.18 原子干渉計が重力波を検出できるだろうか?
12章  訳註

第13章 量子場とその励起
13.1 古典的な粒子と場とは何か?
13.2 粒子と場の概念は,量子物理のどのような原理によって統一されるのか?
13.3 もし量子場を測定したら何が起るだろうか?
13.4 格子の量子論はどのようにして光に応用されるのか?
13.5 量子場とは何か?
13.6 光子とは何か?
13.7 粒子と場は同じものの側面なのか?
13.8 場と粒子の統一は電子にも適用できるのか?
13.9 なぜ我々は普通の物体が現れ,また消えるのを見ないのか?
13.10 宇宙は何から出来ているのか?
13.11 量子真空とは何か?
13.12 素粒子はどのようにして質量を獲得したのか?
13.13 他のどのような事実が量子場の存在を裏付けるのか?
13.14 量子場の理解はベルの相関のミステリーを取り除くのか?
13.15 量子場の理解は量子測定のミステリーを取り除くのか?
13.16 なぜ量子場の議論がこの本の終わり近くまで遅らされたのか?

第14章 量子科学が将来向かう方向と残された課題
14.1 さらに発展するためには何が必要なのか?
14.2 量子技術について我々は何を知らないのか?
14.3 量子物理について我々は何を知らないのか?
14.4 自然の量子的な側面について何を理解しているのか?
14.5 自然の古典的および量子的な記述はどのように異なるのか?
14.6 量子論を理解するためにはどのような難題が残されているのか?
14.7 観測問題とは何か?
14.8 どのようにしてもつれ状態は更新されるのか?
14.9 ハイゼンベルグの観点は観測問題を解決するのか?
14.10 どのようにしてデコヒーレンスが助けてくれるのか?
14.11 デコヒーレンスで充分なのか?
14.12 量子確率は個人的なものなのか?
14.13 すべてのものが私の頭の中にあるのか?
14.14 永遠のコヒーレンス?
14.15 なぜベルの相関は起るのか?

訳者あとがき

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