森の奥へ

街の喧騒に惹かれて森を出た山猫はいつの間にかずいぶんと歳をとった。いつかもう一度故郷の森の奥へ帰りたいと鳴くようになる。でも、街の暮らしはなかなか捨てられるものじゃない。仕方ないから部屋の壁紙だけ森の色に染めてみた。

春一番地球を未来へ運んでく ~俳句tweetより~

俳句tweet振り返り記事です。
今回は2月14日~18日と2月21日~25日までのtweet句10句です。
2月24日プーチンはウクライナ東部で「特別軍事作戦」を開始すると発表し、首都キーウ近辺を含むウクライナ各地への砲撃や空襲を始めました。わたしは今回の10句以降数カ月ほど、ウクライナ侵攻に関する句だけを詠みました。

俳句tweet振り返り記事は、今回からまた以前のスタイルに戻ります。相変わらず拙い俳句ばかりですが、、、俳句自体よりその句をトリガーにして、どんなふうに思いを深めていけるか、どんなところまで発想を飛ばせるか、それぞれの句の解説をあれこれ考えながら書くのが楽しくて続けています。
よろしければ、またお付き合いください。
どうぞよろしくお願いします。
俳句tweet振り返り記事は久しぶりの更新ですので、全然季節感のない句ばかりになってしまいました🙇

 

 

春空が我を呼ぶ子供の我を

春空のせいにしていますが、本当は子供の我を呼んでいるのは大人の我です。春から始まる新年度、これからの一年をより良い時間にするために、いろいろ細かいことを言いたいのです。アドバイスじゃないです。後悔です。去年の我に対しても言いたいことは山ほどあります。

 

坂下るその先に海風光る

わたしの家は六甲山の中腹にあり、自宅の標高は170mほどです。最寄りの駅との標高差は120m。そこそこ急な坂を15分ほど下ります。数年前までは登りも下りも歩いていましたが、今は出勤時の下りだけ歩いています。冬の冷えた朝は路面がところどころ凍結しています。凍っていそうなところを避けて歩くのです。春風の吹く朝は顔を上げて坂を下ります。視線の先に海が光って見えるのです。

 

裏街の表へ裏へ春の宵

表と裏。
表通りと裏通り、9回の表と9回の裏、表日本と裏日本、表街道と裏街道、表看板と裏看板、表書きと裏書き、表方と裏方、表返ると裏切る、表書きと裏書き、表口と裏口、表芸と裏芸、表声と裏声、表作と裏作、表表紙と裏表紙と表紙裏と裏表紙裏、表と裏の裏、、、表裏一体。

 

どこへゆくその先は海寒鴉

陸上に棲む生き物は二次元を移動するしかない。地表にアップダウンがあるからある程度は上に行ったり下に行ったりできるけど、空に棲む生き物はさらに上へ下へ、三次元を自在に移動できるのだ。だから、寒鴉の飛んでいく先にあるのは海じゃない。そこにあるのはやっぱり空だ。余計な心配するなよ、と鴉はニンゲンを見下ろして鳴くに違いない。

 

空風や空つぽの缶空へ蹴る

「空」の文字を三回使いたかっただけです。ただそれだけです。「空風」は「からかぜ」と読みますが「からっ風」のことです。「空つぽ」は「からっぽ」と読んでください。
この句を詠んだのは二月でしたが、今は夏です。蝉の抜け殻が玄関の柱にとまっていたりして驚きます。この抜け殻のことを空蝉というのだと思っていましたが、蝉自身のことも空蝉というのだそうです。そして、この世に生きている人間のことも指すのだそうです。

 

昨日より今日明日明後日春そこに

三寒四温。曇りのち晴れ。七転び八起き。八勝七敗。三歩進んで二歩下がる。こんな感じで、結果として前に進んでいれば良いのかな。渦中にいるときは進んでるなんて全然思えないんだけど、その渦中の自分からちょっと離れて、俯瞰して見ることができれば。と、渦中にいたかつてのわたしに伝えたくて。

 

陽だまりに猫の尾丸し春隣

尻尾だけが別の生き物みたいに、右に伸びたり左に伸びたり丸まってみたり。ネコジャラシを振り振りして遊んでるみたい。
手でも足でもないそいつは一体何モノ? 一体何をしてる?
大きなあくびを一つして、そいつの動きを不思議そうに猫は眺めている。

 

春霞昼の三日月さまよへり

昼間の空に浮かぶ月が好きです。青空を流れる雲に紛れて浮かんでいる月が好きです。見逃してしまっても仕方ないほど白くて淡い月です。春霞の日です。霞なのか雲なのか、ひょっとして月かもしれない。そんな月が好きです。知ってるかい、ぼくはここにいるよ、ずっと前からここにいるよ、これからもずっと一緒にいるよ。と控えめにこっそりと浮かんでいる月が好きです。

 

春一番空つき抜けて宇宙まで

木枯一号アンドロメダを吹き落とす(土見敬志郎)に憧れて詠みました。宇宙まで、と詠んだのが月並みですね。
春一番地球を未来へ運んでく(遠野山人)
季節風という風があります。風が季節を運んでくるのです。冬から春へ、春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へ。季節が巡り続ける限り命は永遠に続くような気がします。

 

春風を突つ切る自転車背に朝陽

風を突っ切る。突っ切るのは、それも春風。陽が昇り始める早朝。全身に風を感じる。新しい酸素がたっぷりと肺を満たす。たっぷり吸った分、大きく吐き出す。風が身体を循環する。春風が身体を循環する。風になる。春になる。

 

 

 

 

もし、お心に留まった句がおありでしたら、コメントいただければ幸いです。感想をいただくことで、たくさんの気付きを得ることができます。
また、いただいたコメントをブログ中で紹介させていただくことがあります。どうぞご了承くださいますようお願いします。

 

 

① 春空が我を呼ぶ子供の我を

 

② 坂下るその先に海風光る

 

③ 裏街の表へ裏へ春の宵

 

④ どこへゆくその先は海寒鴉

 

⑤ 空風や空つぽの缶空へ蹴る

 

⑥ 昨日より今日明日明後日春そこに

 

⑦ 陽だまりに猫の尾丸し春隣

 

⑧ 春霞昼の三日月さまよへり

 

⑨ 春一番空つき抜けて宇宙まで

 

⑩ 春風を突つ切る自転車背に朝陽

 

 

 

 

 

以下、大変手前みそで恐縮ですが、、、前回の記事

www.keystoneforest.net

にいただいたコメントから、良かったよと言っていただいたコメントと句を紹介させていただきます。

 

⑤ 春の月枝ひとつづつ照らしをり

「春の月枝ひとつづつ照らしをり」枝越しに月を見ている山猫さんを想像しました。優しい光景ですね。

④と⑤が好きです。④は力強い感じがします ⑤は山猫さんの解説にあったように >月明かりは一枝一枝を輝かせます 神聖な感じがします。

⑤月と枝の関係がなんか印象的でした。

おはようございます、山猫さん。わたしは⑤がすきです。やわらかな春の月明かりをかんじます(#^.^#)。

④と⑤が好きです。私は葉のない冬の木が好きなのかもしれません。西陽に照らされて枝ばかりの影を踏んで歩くのも好きです。枝は空に手を広げて太陽の光を求めているように感じるので。(^O^)

「春の月枝ひとつづつ照らしをり」遠い宇宙から届いた月の光。それに照らされる春の夜の枝。静かだけど、壮大な宇宙を感じさせる句だと思いました。

こんばんは。山猫さま。私は⑤がすきです。月明かりが、全てにそそがれるって贅沢ですてきです。葉がでてくる前の、樹々への月からのプレゼントですね。素敵です!!!

 

 

 

 

たよらこ (id:tayorako)さん、このはずく(id:mkonohazuku)さん、3回連続10cm(id:sankairenzoku10cm)さん、すふれ(id:sufuretan)さん、チャーコ(id:harienikki)さん、ururundo(id:URURUNDO)さん、happy-ok3(id:happy-ok3)さん、そしてこのほかにもコメントをくださったみなさま、ありがとうございました。

 





 

 

 

 

 

 

よければtwitterものぞいてみてくださいね。山猫 (@keystoneforest) | Twitter
 

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山猫🐾@森の奥へ

似顔絵はバリピル宇宙さん (id:uchu5213)に描いていただきました。
 

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