去年6月に一通のメールが届きました。
「書籍出版についてのご相談」
この度は、突然のご連絡で大変恐縮ですが、
かんそう様と一緒に書籍を作らせていただきたく、
そのご相談でメールさせていただきました。
いや〜、ついに俺も作家デビューか~。長かった~。ブログやって10年か〜〜〜。いやもっと早く来てくれても良かったんですけど?なに書けって?
日常を面白おかしく綴った爆笑コラム?赤裸々な恋愛エッセイ?それとも、すっぴん写真やモーニングルーティンを載せたフォトスタイルブック?
どれでもいい…早く…早く書かせてくれ…
かんそう様に『文章術の本』をご執筆いただけないでしょうか?
なんでだよ
やるわけねぇだろ。なんでよりによって文章術の本?俺マジで嫌いなんだよ文章術の本。つまんねぇし、しょうもねえから。
自分で「文章上手いからその書き方を他人に教えます!」とかのたまう人間、確実にヤバいじゃないですか。合コンで「俺キス上手いからさ〜笑」ってイキってた友達めっちゃ息臭かったぞ?それと一緒なんですよ。
そもそも「文章」の「術」て。気持ちの悪い言葉。しかも仮に「文章術」なんてもんがあったとして知らねぇ他人に教えるわけないだろ。
わざわざ本読むくらい意識高いやつなんて教えてるやつにとっては「未来の競合」であり「未来の敵」じゃないですか。自分の食いぶち減るかもしれないのに確信的なことなんて書くはずないんですよ。
それなのになんでそんな本出すかって「生徒にしたいから」以外の理由ないだろ。ツルハシで山掘るよりツルハシ売ったほうが儲かるんだよバカ。
で、耳触りだけはいい、上澄みだけすくったような薄いテク載せて、ゆくゆくは文章講座とか謎のセミナー開いて鬼の課金させて骨までしゃぶるだけ。
世阿弥も言ってるんですよ「秘すれば花」って。 秘めるからこそ花になる、 秘めねば花の価値はないに等しい。一言で言えば文章術の本は「品がねえ」。あんなもん喫茶店でマルチ商法か宗教勧誘してるやつと変わんねぇんだよ好きだった超絶かわいい同級生から
「久しぶり…二人きりで会えないかな…?」
って言われて死ぬほど興奮して行ったらゴリゴリの勧誘だった時の俺の気持ちがお前らに分かんのか?腹立つクソが…
などとキレてたんですが、このたび「文章術の本」を出版することになりました。
この世に存在する全ての文章術の本を終わらせたい。
文章術の本を誰よりも忌み嫌っている私だからこそ書ける、ぐうの音も出ない完璧な文章術の本が完成しました。
10年間ブログを書いて培ってきた、考え方、技、性癖、全てをさらけ出しています。文字通り「全て」を。
「この日記の、この部分は、このタイミングで、こういう言い回しをすればウケると思って、こう書きました」
「この感想の、この部分は、このテクニックを使えば、たくさんの人に共感されると思って、こう書きました」
書く前に、書いている最中に、脳内で考えてること、なにもかも書いてます。
本当に苦痛でした。どうウケたかを説明するのなんてこの世で最もダサい行為。気を失うほどダサい。生き恥以外の何者でもない。しかし歯を食いしばり全てをさらけ出しました。
つまり、これは文章術の本ではなく「全裸本」、「ヌード文章本」です。
この本が発売した時点でブログ『kansou』は終わったと言っていいでしょう。
今までは勢いだけで狂って書いてると思わせていたのに、これから書く文章は全て「そういう目」で見られかねません。
「うわあ、またあのテクニックやってるよ」
「あー、本で言ってたあのパターンね。はいはい」
夢が醒めてしまう。完全に廃業です。
それでも、この本を完成させようと思ったのはこれを読んで少しでも「今日、俺すごい良い文章書けたな…」「私の書いた文章めっちゃ面白いな…」と思ってもらいたいから…
世界を素晴らしい文章であふれさせたい…それくらい「文章」そのものを愛しています。そのためだったらこんなふざけたブログなど、いくらでも踏み台にしてくれていい…
あと、どうしても本を出した事実がほしかった。『王様のブランチ』のBOOKコーナーで特集されたい。そしてワイプに映る佐藤栞里ちゃんに俺の本で笑ってもらいたい。むしろそれだけのために書いたと言ってもいい。これはブランチ本です。
死ぬほど面白いのに、死ぬほど役に立つ、読むバケモノ『書けないんじゃない、考えてないだけ。』は、店頭では5月20日発売です。
ちなみに帯を書いてくれたのは宇内梨沙アナウンサー。もはや帯が本体…