本稿では、日中戦争期に俳句雑誌『俳句研究』に掲載された戦争俳句アンソロジー『支那事変三千句』を研究対象として、その編集のポリティクスと、実作品の相克を明らかにした。
編集に携わっていた山本健吉より『支那事変三千句』の実質的な編纂を依頼された俳人の島東吉は、俳句による報国を強く意識していた。しかし、銃後のモダン都市を表すモチーフである、年末年始にかけての戦勝祝賀行事、戦時下における労働などの観点から『支那事変三千句』を読解すると、これを俳句による報国の体現とするには難しい。
本稿は、このような、ときに編集の意図と相反する内容を含み込むアンソロジーの力学を資料・実作品の検討から明らかにした。
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