日本海軍はなぜ過ったか(岩波現代文庫)
海軍反省会四〇〇時間の証言より
- フォーマット
- 単行本 岩波現代文庫
勝算もなく,戦争へ突き進んでいったのはなぜか.海軍エリートたちの生の声.その衝撃的な証言をめぐる白熱の鼎談.
■内容紹介
「あなたは戦,勝つと思ったですか.」
「それはわからないですよ.」
「しかしね,勝つとは思わないでしょ.」
「勝つつもりでやっているわけですよ.」(笑)――「海軍反省会」証言より
戦後35年を経て密かに始められた「海軍反省会」.それは,旧日本帝国海軍の元将校たちが,「海軍は美談も多かったが,反省すべきことも少なくない」として,上司,先輩,同僚,すべての者への批判も含め,忌憚なく意見を交わしあう場として設定されました.会は毎月1回,10年以上にわたり,130回を超えて開催されましたが,それが部外者に公開されることは決してありませんでした.
その反省会を記録した録音テープが残されていることがわかり,収集されたのが2006年.最後の反省会から15年余経ってのことです.録音テープの長さは合計400時間.そこには,これまで知られることのなかった海軍トップエリートたちの実像,そして戦争突入への実際の経緯が生々しく語られていました.
本書では,それらの肉声の証言がもたらした衝撃をめぐって,戦争を実際に経験し,あるいは長く取材をおこなってきた三人の著者たちが,白熱の議論を繰り広げます.戦争を知らない若い世代にもぜひ読んでいただきたく,脚注を施して作りを工夫しました.また,現代文庫に収録するにあたり,戦後70年にあたっての著者たちの言葉が加わりました.
勝算もないまま,なぜ日本は戦争に突き進んでいったのか? 海軍反省会の「反省」が本当に活かされるために,あらためて読み直したい一冊です.
海軍反省会と,その記録については 戸髙一成
1 海軍反省会,生の声の衝撃
取材で関わった海軍の人々
反省会を構成したメンバー
2 海軍という組織
軍令部総長,伏見宮
開戦前の日本をめぐる国際情勢
第一委員会の問題
軍事予算と軍備計画
海軍の作戦構想
3 海軍はなぜ過ったのか
長期展望の欠如
「それで勝てると思っていた」
排除の論理
組織の思考能力
エリートたちの過ち
4 戦争を後押ししたもの
日露戦争以来の大国意識
開戦のための計画
国民の熱狂
一銭五厘の葉書
特攻計画への決断
5 海軍反省会が伝えるもの
責任の所在
歴史を学ぶということ
次世代へ伝えたいこと――私の戦争体験
歴史から人間を学ぶ――東京大空襲の夜
無知なる恥ずかしさ――満州からの引き揚げ
中継ぎ世代の任――代わりに言う
戦争体験の物語化への危惧
おわりに 半藤一利・澤地久枝・戸髙一成
特集番組「日米開戦を語る 海軍はなぜ過ったのか~400時間の証言より~」番組スタッフ