コロナ前から冷凍食品自動販売機を考案、2年間で8000台販売した「ど冷えもん」広報部にあれこれ聞いてみた

街を歩いているとさまざまな食品がラインナップされている冷凍食品自動販売機を見かけませんか? 一体どんな仕組みになっているのか、開発元のサンデン・リテールシステム株式会社に直撃してきました。

▲(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

こんにちは、ライターの大塚たくまです。

いきなりですが、最近さまざまな食品がラインナップされている冷凍食品自動販売機をよく見かけませんか?

私の身近なところでは、飲食店前や駅前などに食品がラインナップされている冷凍食品自動販売機が次々に登場しています。売られているものは、ラーメンや餃子、焼き鳥など多岐にわたっています。

▲(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

この場所で冷凍食品が売れるの……?

そんな疑問を抱えつつ、見慣れない冷凍食品自動販売機をチェックしてみると、ど冷えもんという商品名が付いていまして。みなさんもこのロゴを見かけたことはありませんか?

ど冷えもんについて調べてみると、サンデン・リテールシステム株式会社が開発した商品で、さまざまな形状の冷凍食品を販売できるんだとか。

冷凍食品自動販売機の世界がどうなっているのか気になってしまったので、サンデン・リテールシステム株式会社広報部にオンラインでお話を伺いました。

飲食業界からの口コミで広がったど冷えもん

──今日はよろしくお願いします。まず、ど冷えもんとは何か簡単に教えていただけますか?

サンデン・リテールシステム株式会社広報部(以下、サンデンRS広報部):ど冷えもんは2021年1月に発売した冷凍食品自動販売機です。さまざまな形状の冷凍食品を販売できる商品です。

──現在、ど冷えもんは全国に何台ぐらい普及しているんでしょうか?

サンデンRS広報部:2023年の8月に設置台数が8000台を超えました。

──8000台も! では、すぐに売れ始めたんですか?

サンデンRS広報部:いえ、発売当初はむしろ問い合わせばかりだったと言えます。

▲2021年1月に発売したど冷えもん(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

──2021年といえばコロナ禍でしたし、時代の潮流に乗ってすぐに売れたのかと……。

サンデンRS広報部:最初は知る人ぞ知るみたいな感じだったんです。そこから、実際にど冷えもんを設置された方の口コミによって、じわじわと広がっていった感じです。

──ちなみに、ど冷えもんが生まれたきっかけは何だったんでしょうか? やはりコロナ禍に合わせて、冷凍食品自動販売機の需要が伸びると予想されていたんですか?

サンデンRS広報部:いえ、コロナ禍の前からすでに開発を進めていました。その時点で個食としての冷凍食品需要が高まっていたんです。

──コロナ禍の前から、おひとりさま志向の流れはありました。開発のきっかけは冷凍食品の需要の高まりにあったんですね。

サンデンRS広報部:そうですね。開発を進めている間にコロナ禍に入り、当初の予定より発売を早めました。

なぜ増え続けた? ど冷えもんの5大ブーム

──最近、ど冷えもんを目にする機会が増えた印象ですが、そこに特徴などはありましたか?

サンデンRS広報部:実は、ど冷えもんが広がっていく過程で5大ブームがありまして。

──何なんですかそれは。聞きたいです。

サンデンRS広報部:第一次は、個人営業の飲食店ブームです。緊急事態宣言で時短営業となり、ど冷えもんが導入されるようになりました。

──第二次の食品と関係のない異業種ブームはどんなものだったんですか? 

サンデンRS広報部:食品と直接関係のない異業種の会社が、セレクトした商品をど冷えもんで販売するような事例が出てきました。

──食品分野ではない企業が食品業界に参入するのを、ど冷えもんが後押しするんですか。この段階で、既にすごい飛躍ですね。ビジネスチャンスと踏んでいるわけか……。

サンデンRS広報部:第三次はアンテナショップブームですね。地方ならではの料理を集めてど冷えもんで販売されるケースが増えました。

──なるほど!  お取り寄せの代替ですね。

サンデンRS広報部:ECサイトと違って、配送料がかからない点で注目されました。ど冷えもんであれば、設置場所に困らない点も大きなメリットとして活用いただきました。

──たしかにど冷えもんなら、すぐにアンテナショップが開店できますね。

サンデンRS広報部:そして、第四次は大手飲食チェーン店ブームですね。

──最近いろんな場所で大手飲食チェーン店がど冷えもんを利用しているケースを見かけます。

サンデンRS広報部:お食事をされた後に「おいしかったから買って帰ろう」という需要を満たすために、ど冷えもんを使用されるパターンです。

外食の時に時間が合わなかったご家族に、ど冷えもんで冷凍されたものを買って帰ろうといったパターンもあります。

──これはありがたいですね。

サンデンRS広報部:第五次は新しい設置場所ブームですね。空港内や駅構内・新幹線ホームなど、新たなロケーションにど冷えもんが設置されるようになりました。

──私の最寄り駅の中にもど冷えもんがあります。意外と思われる場所にど冷えもんを設置することにどんなメリットがあるんでしょうか?

サンデンRS広報部:店舗前だけでなく、さまざまな場所にど冷えもんを設置することで、新たなユーザーの発掘や拡大の機会を提供することができます。

また、広告塔としてど冷えもんを利用できるメリットもあります。ラッピング(外装)もカスタマイズできるので、商品を販売しつつ、商品名などを低コストで周知できる広告塔になる点が喜ばれています。

──ど冷えもんを冷凍食品自動販売機だけではなく、広告塔として捉えて利用することもできるんですね。ある程度の売り上げがありながら、場所を選ばずにPRできることは、企業にとってはメリットかもしれません。

顧客が新たなビジネスを生み出していく

──こういったブームは2年間で起きた出来事なんですね……。これは狙って起こしたことですか?

サンデンRS広報部:いえ、お客様からの自然なニーズの高まりで起こったことです。

──お客さんがど冷えもんを見て、何ができるかなとアイデアを考えているわけですね。

サンデンRS広報部:おっしゃる通りです。

──ビジネスマンにそれほどまでのインスピレーションを与えているど冷えもんはすごいと思います。

サンデンRS広報部:中でも面白い使い方だなと思ったのは、ど冷えもんで肉ガチャができるようにした事例です。

──肉ガチャとは一体何ですか?

サンデンRS広報部:ど冷えもんは、さまざまな形状の商品をラインナップできる冷凍食品自動販売機なんですが、価格帯の異なる肉をランダムに入れることで、ガチャの要素を追加した使い方です。

──お客さん主導で、何か面白いことをやりたい気持ちが生まれることはいいですね。

ど冷えもんの可能性

──実際にど冷えもんを導入された方からはどのような声があるんですか?

サンデンRS広報部:ど冷えもんの機能として、購入された商品と購入時間帯がわかるようになっているんですが、「こんな時間にこの商品を買ってくれてるなんて思いもよらなかった」などの感想をよくいただきます。

──ちなみにそれはどういった時間だったんでしょう?

サンデンRS広報部:お店が閉店した後の夜中3時に商品がよく売れているなどですね。

──それは想像できないです。

サンデンRS広報部:閉店後や週末に買っている方が多いようで。飲食店としては予想外の消費動向だそうです。

──販売記録が残ることで、新しい気づきを得られるのでしょうね。

サンデンRS広報部:ど冷えもんでテストマーケティングを行うケースも増えてきています。実際にお店を出そうとすると、2,000万円以上かかることもありますので。

店舗を出そうか検討している段階で、事前にど冷えもんで商品を販売してみるといったケースです。

──これまでとは違うデータが手に入ることが刺激になっているんですね。

サンデンRS広報部:「自分ではこれが売れると思ったけど、実際にやってみると全く違った商品が売れる」ケースもあります。「なんでこれが売れるのか、研究しないと」と、新たなマーケティングがスタートしているようです。

──単に売るだけではなく、新たなビジネスの可能性を広げていることがすごいです。

サンデンRS広報部:商店街の方がお金を出し合ってど冷えもんを1台購入して、それぞれのお店の商品をど冷えもんで売って商店街の活性化に繋げるといった事例もあります。

複数のど冷えもんを1カ所に配置して、さまざまな商品を購入できる場所を作るケースも多くなっています。

──ちなみに、ど冷えもんで販売したことで、売り上げが大きく上がっている商品などはあるんですか?

サンデンRS広報部:例えば食品工場のそばにど冷えもんを設置したら、ものすごく売れた事例があるようです。行列ができて食品工場の人もびっくりしたみたいです。

──それはすごいですね。元から直売所自体はあったんですか?

サンデンRS広報部:もともと、工場の前に直売所がありましたが、そばにど冷えもんを設置したら反響があったと。直売所と違って、年中無休で24時間営業なところも要因になっているそうです。

──もはや人の手で売るよりも、ど冷えもんの方がお客さんにとっては便利というケースもありそうですね。

ど冷えもんのこだわり

──ど冷えもんはさまざまな商品を販売できることが大きな魅力ですね。

サンデンRS広報部:そうですね。街中の冷凍食品自動販売機って、アイスクリームが主だったのですが、ラインナップできる商品のサイズが決まっていて、アイスクリームのサイズを自動販売機に合わせる必要がありました。ところがど冷えもんは、最大11種類の形状の商品を販売できます。

──11種類! それはすごいですね。

サンデンRS広報部:大きい商品を入れることもできますし、小さな商品も販売できます。棚(ストッカー)を工夫することで、いろいろなサイズの商品を売れるようになった点が大きな強みです。

▲(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

──なるほど。ところで、屋外に冷凍食品自動販売機を置くなんて、大丈夫なんですか? 最近の夏の暑さは尋常じゃないので、機械内の温度も上がってしまうのではないかと心配です。

サンデンRS広報部:庫内を冷やす他に真空断熱材を各所に入れることで、ど冷えもん内の温度を保持できるように対策しています。また、マイナス15度以上が90分続くと販売停止となりアラートが送られる仕組みになっています。

──温度が保持できるのであれば衛生面も安心ですね。ちなみに、防犯対策はどうしているんですか?

▲(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

サンデンRS広報部:ど冷えもんはキャッシュレス決済を推奨しており、さまざまな決済方法に対応することで、防犯対策をしています。

飲食業界の困難を軽やかに乗り越えたど冷えもん

──ど冷えもんは、まだ発売して約3年ですが、今後どのように発展させたいと考えていますか。

サンデンRS広報部:今までにないロケーションで、新たな商品を販売する可能性を広げたいですね。

──コロナ禍で飲食業界が絶望していた中で、ど冷えもんの登場により、むしろコロナ禍以前よりも可能性は広がったと思います。飲食業界の困難を軽やかに乗り越えた部分も大いにあるのではないでしょうか。

サンデンRS広報部:そう言っていただけるとありがたいです。今後は、弊社の持っている精密温度保持の技術や搬出技術を合わせた取り組みを積極的に行っていきたいと考えています。

──今後のど冷えもんの展開にも期待したいですね。ありがとうございました!

奥が深いど冷えもんの世界はまだ広がるかも

ずっと気になっていたど冷えもんについて詳しく知ることができ、大満足のインタビューでした。

今すぐにでも「ど冷えもんで買い物をしてみたい」と思っている方もいるのではないでしょうか。そんなあなたに、おすすめのアプリがあります。ど冷えもんGOです。

▲(画像提供:サンデン・リテールシステム株式会社)

ど冷えもんGOを使えば、現在地近くのど冷えもん設置場所、在庫状況および商品情報の検索ができるようになります。「自宅近くにこんなにあったのか!」という、驚きが待っているかも……。

さ、今日も焼き鳥でも買って帰ろうかな〜。牛タンもいいかも。では。

書いた人:大塚たくま

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福岡に住む九州を愛するライターで二児の父。グルメ、旅行、子育てに関する記事を多数執筆。便利で心を動かす記事を書きたい。取材が大好きで、情報量の多い記事を目指しています。

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