四川料理マニアの間でうわさに!?Webライターが作る絶品羊肉麻婆豆腐を食べてみた

東京都中野区で開催された盆踊り大会に出店して、1200食を売り切った羊肉麻婆豆腐! 作ったのは四川料理のシェフ……ではなく、なんとWebライター!? 異色の麻婆豆腐の味わいに迫ってみました。

毎週違った場所で大評判。「謎の絶品羊肉麻婆豆腐」のうわさ

こんにちは、メシ通編集部です。

 

すっかり夏らしくなり、汗が噴き出すこの季節。スカッと辛いものでも食べたくなってきますよね。そんなことを考えていたところ、何やら耳寄りな話を入手。なんでも

 

「全国各地、いろんなところで出店しているおいしい羊肉麻婆豆腐屋さんがある」

「作っているのはプロの料理人ではなく、Webライターの仕事をしている人」

「とあるイベントでは1200食も売れたらしい」……

 

こんなうわさを聞いたら、確かめずにはいられません。

早速、出店情報を調べて伺ってみました。

 

Webライターの菅野康太(通称:5歳)さんが、羊肉麻婆豆腐屋さんに?

というわけでたどり着いたのは東京都内にある、とあるバー。

本当にこんなところで? 近づいてみると……。

こちらが絶品羊肉麻婆豆腐を提供しているというWebライターの5歳さん。「プロの料理人じゃない人が作っている」といううわさは、やっぱり本当だったみたいです。

 

──5歳さん、こんにちは。 こちらでおいしい羊肉麻婆豆腐がいただけると聞いてきたのですが……。ここってバーですよね?

 

5歳:そうなんです。ここは友達のお店なんですが、そこを毎週日曜日に間借りさせてもらっていて、僕が作る羊肉麻婆豆腐を提供しています。とりあえず、中にどうぞ。

店内に入ると広がるバー空間

SNSでも評判の羊肉麻婆豆腐。そのお味は……

早速調理開始!

ご飯は土鍋炊きで準備

ほかほかのご飯をよそって……

手際よく調理された羊肉麻婆豆腐と炊きたてのご飯が登場!

こちらが5歳さんの羊肉麻婆豆腐。ご飯とセットで1,500円

──おお〜、めちゃくちゃおいしそう! 

 

5歳:冷めないうちにいっちゃってください!

 

まず驚いたのは、その香り。とてもフルーティーで爽やかな香りが鼻をくすぐります。

激しく食欲を刺激するヴィジュアル……

羊肉麻婆豆腐をすくって、一口。正直、辛さは思っていたほどではありません。大きめにたたいた羊肉のうま味が、まず口の中ではじけます。噛み締めると、通常の麻婆豆腐に使われる豚肉と違い、ほんのりと羊肉独特の香りが漂うのも特徴的! 

 

どっしりしたコクのある味わいは、おそらく甜麺醤。そして、運ばれてきたときから気になっていた香りは山椒ですね。味わいも、いわゆる四川の本格的な麻婆豆腐によくある花椒(ホアジャオ)のしびれるようなものとは違います。

 

どちらかといえば、和食で使われている山椒の風味に近いでしょうか。しびれではなく、柑橘系のフルーツを思わせる香り。そして、主役の豆腐はかなり大ぶり。トロトロになるまで煮込まれていて、ツルッとおなかの中へ滑り込んでいきます。

 

……これは、確かに絶品。そして、なんといってもものすごくご飯に合う!

 

余裕の完食!

──いや、あっという間に食べ終わっちゃいました……。5歳さん、これはちょっと今までに食べたことのないタイプの麻婆豆腐でした。そして、食べ終わった後の汗が尋常じゃないです。そんなに辛くないのに。

 

5歳:ありがとうございます。汗が出るのはまさに山椒の効果ですね。

 

そもそも、なんで羊肉麻婆豆腐を?

──5歳さんってWebライターとか、インフルエンサーとか、そういう仕事の方ですよね? なんでまた羊肉麻婆豆腐を作ろうと?

 

5歳:それ、めちゃくちゃ聞かれるんですよね。一つは僕が飽き性なので、ちょっと今までと違うことがやりたいな〜とここ数年考えていて。それと、料理は昔から好きで、友達とかに振る舞う機会が多かったんですが、中でも自分が作る羊肉麻婆豆腐の評判が良くて。もっとたくさんの人に食べてほしいな、と思ったのがきっかけです。

 

──最初から、羊肉を使っていたんですか?

 

5歳:味わいとかはもちろん、初期と今とでは違います。ただ、羊肉を使うという点は最初からそうでしたね。僕が元々羊肉好きで。羊肉の味わいって絶対麻婆豆腐にも合う、と妄想していたことをカタチにした感じです。

最初は友達に振る舞う料理ですから、近所のスーパーで買った羊肉を使っていました。それでも、だんだん「また食べたい!」と言ってくれる方が増えてきて。ちょっと本腰入れて麻婆豆腐の研究でもしようかと考えているとき、友達に連れて行ってもらった「羊SUNRISE」というお店で食べた羊肉に大感動しちゃって。その後、縁あってお店の方をご紹介いただける機会があったので、思い切って「お肉を使わせてください!」と直談判しました。

手切りした、大ぶりな羊肉を使うのが特徴

──ええ〜、そんなの警戒されなかったですか?

 

5歳:それが、めちゃくちゃ快く「お分けしますよ」と。その出会いは大きかったですよね。高品質な羊肉が手に入るようになって、味のグレードがグッと上がって、これはもしかしたら仕事になる? と思い始めて。

その頃から、これも友達のお店のキッチンを借りて、いわゆる間借り営業も増えてきて。SNS経由でいろいろなところから出店のお誘いもいただくようになってきたんです。大きな転機になったのは、2023年に開催された「中野駅前大盆踊り大会」の出店で僕の羊肉麻婆豆腐を提供できたことです。そのとき、2日間のイベントだったんですが、両日合わせて1200食くらい売れたんですよ。

 

──1200食! すでにその時点で素人の域は十分に超えているんじゃ……。

 

5歳:いや、本当に(笑)。ただ、めちゃくちゃ集客力のあるイベントだから、できる限りの準備はしておこうと思って。終わった後はもう真っ白な灰……って状態でしたけど(笑)。そのイベントを乗り切れたこと自体が大きな自信になりましたし、これだけの人が食べてくれるんだったら、絶対ビジネスとして成り立つと思って。そこからキッチンカーを買ったり、厨房(ちゅうぼう)設備を充実させたり。食品衛生責任者の資格を取得したりして、本格的に始動させました。

 

──そういえば、そのエプロンに書いてある「株式会社マーボードウフ」って?

5歳:わざわざ会社を立ち上げたの? って驚かれることも多いんですが、これは今の屋号みたいなもので。元々、2020年にライターやインフルエンサーの仕事をしていくために、株式会社アマヤドリという法人を立ち上げたんです。

2024年中には登記の変更をして、本当に「株式会社マーボードウフ」をスタートさせる予定です。事業はもちろん羊肉麻婆豆腐作りです(笑)。

 

料理人としてのキャリアの差は、材料へのこだわりで埋める!

──いや〜。本職になっちゃうわけですね。ところで、5歳さんが作る羊肉麻婆豆腐の特徴ってどんなところでしょう?

 

5歳:これまでにあまりなかったタイプだとは思いますね。味のベースは、ニンニクとしょうが、豆板醤、甜麺醤、コチュジャン。それに粗びきの唐辛子も韓国産の甘みが強い品種のものを使用しています。

こちらが味のベースになる麻婆の餡

──正直、辛みよりうま味の方を強く感じる味わいでした。

 

5歳:だから、いわゆる四川料理の「麻辣(マーラー)」の味わいとは違う方向性の麻婆豆腐ですね。

 

──山椒も、いわゆる四川料理の麻婆豆腐だと「しびれ」ですが、むしろフルーツのような爽やかな味わいでした。

 

5歳:そうなんです! この山椒がポイントなんですよ!!(突然の大声)

 

──び、びっくりした……。そうなんですね、これって何か特別な山椒を使っているんですか?

 

5歳:奈良県の吉野で栽培されている「ぶどう山椒」という品種ですが、中でも特に完熟山椒といわれる収穫時期が9月以降の、赤く色づくまで木で熟した山椒を使っています。よくうなぎのかば焼きとかに使われる山椒は、7月から8月にかけて青いまま収穫されるものなんですね。完熟山椒の方がより辛さはマイルドで、香りは華やかです。

この完熟山椒とも偶然の出合いがあって。羊肉麻婆豆腐をこんなに作り始める前のことですが、友人と奈良を旅行していたとき、奈良に移住を考える人向けの説明会のようなイベントに参加する機会があって。そのイベントのコンテンツの一つに、地場の産業を紹介しているコーナーがあったんです。

そこで、この完熟山椒を生産されている農家の方と知り合って。その繊細な香りにすごく感動したんですよね。今では、その農家さんから直接仕入れできる関係性です。

5歳さんが使用している山椒がこちら。赤い色をしています

──なるほど〜。羊肉といい、山椒といい、そういった良い材料との出合いが、今の味につながっているんですね。

 

5歳:本当にそう思います。材料との出合いというか、人との出会いというか。麻婆豆腐の勉強のためいろいろな有名店にも行くんですが、正直、プロのシェフが料理されているところを見ると、めちゃくちゃへこまされますよね……。出てきた麻婆豆腐を食べても、「こんなの勝てるわけない!」って落ち込むし。

でも、そういった料理人としてのキャリアや経験は絶対叶わないけど、巡り合った素晴らしい食材のおかげで、その差を多少なりとも埋められていると思ってるし、だからこそこだわり続けよう、という気持ちにもなるんです。

それに、勉強のために食べに行ったお店のシェフの方にも、おいしい豆板醤や甜麺醤の情報をちゃっかり教えてもらってます(笑)。

 

──人と仲良くなるのが得意っていうことが、5歳さんの一番の才能ですね。その才能を使って、料理を作っている感じがします。

 

5歳:「株式会社マーボードウフ」を始めるにあたっても、友達の料理研究家とか経営者とか、とにかくいろいろな人に助けられていて。お世話になった方たちへ恩返しをするためにも、この羊肉麻婆豆腐をもっと高い完成度にして、ビジネスとして軌道にのせたいと思って活動しています。

会心の笑顔でポーズ!

と言っている間にも、次々とお客様が……

店内はいつの間にか、ほとんど満席に

──取材をしている間にも、どんどんお客様がやってきますね。

 

5歳:こちらのお店のような間借りスタイルをはじめ、週末はイベントなどにもキッチンカーで出店してるんですが、SNSで評判を見た方たちとか、新しいお客様も次々来てくださって、ありがたい限りです。四川料理のマニアのような方たちが口コミで広めてくれることも多いですね。

取材を続けながらも、次々出来上がる羊肉麻婆豆腐

 

──私も、それでうわさを聞きつけた1人ですからね。ところで、5歳さんが調理をする上で、読者の方がまねできそうなポイントとかはありますか?

 

5歳:そうですね……。材料とかはレアなものが多いですから難しいと思いますが、ご家庭でまねできそうなところはいくつかありますよ。

大ぶりに切られた豆腐が、グツグツと煮られています

5歳:よく言われることかもしれませんが、麻婆豆腐に入れるお豆腐は、事前にしっかり下ゆでをしてください。そうすることで、豆腐から余計な水分が抜け、いざ麻婆豆腐の餡に投入したときに味が水っぽくなることを防げます。また、豆腐は長時間煮ると煮崩れしますよね? 事前に下ゆでして豆腐自体を温めておくことで、調理時間を短縮でき、煮崩れも防げます。

しっかり煮たら、よくお湯を切って使いましょう

──なるほど。5歳さんが使っているのは絹ごし豆腐?

 

5歳:そうです。これは完全に僕の個人的な好みですが、やっぱりツルッとした舌触りが好きで。そうそう、麻婆豆腐って「食感を楽しむ料理」でもあると思うんです。

 

──確かに。5歳さんの羊肉麻婆豆腐は、羊肉のプリプリ感とか、豆腐のツルツル感とか、食感がとても楽しかったです。

 

5歳:粗みじんに切った玉ネギも軽く炒めて入れています。これも食感のバリエーションを増やしたかったのと、甘みでさらに味に奥行きを出したくて。上には素揚げしたニンニクの芽と、フライドオニオンもかけています。これも食感と風味を豊かにしたいからですね。ご家庭でも、普段の麻婆豆腐にこういったアクセントを加えるだけで、いつもとはちょっと違った感じを演出できるんじゃないかと思います!

素揚げしたニンニクの芽。この香りがまた食欲をそそります

──ありがとうございます。5歳さんと話していて、麻婆豆腐ってすごく自由度の高い料理だな、と思いました。

 

5歳:あと、僕は調理の最中にめちゃくちゃ味見します。これだけたくさん羊肉麻婆豆腐を作っていますが、やっぱり一皿ずつ大切に、味見しながら調理することも、素人から挑戦している自分の最低限の礼儀な気がして。もしご家庭で料理がうまくいかないなんてときは、とにかくこまめに味を確かめながら、丁寧に調理することをおすすめします。

 

──なるほど〜。いろいろとお話を聞かせていただいて、ありがとうございました。 今日も完売お祈りしております!

 

5歳:ありがとうございました。それでは調理に戻らせていただきます〜。

 

一つの料理を囲み、たくさんの笑顔が生まれる人間交差点

筆者がお店を後にするときも、次から次にお客様がいらっしゃっていました。5歳さんが初めて間借りで料理を出したときから毎回食べに来ているという常連の方。わざわざ大阪から食べに来た方。テレビのグルメコーナーでリポーターをしている方など……。

 

初めての方から大常連まで、たくさんの方たちが笑顔で味わう姿を見て、こういった人と人との出会いが、5歳さんの羊肉麻婆豆腐の、本当の秘密のスパイスかもしれないな、と感じたのでした。

 

さて、そんな5歳さんの羊肉麻婆豆腐は「株式会社マーボードウフ」のサイトでも通販で購入することができます。遠方の方や、実際に食べに行く前にお試しで……と考えられている方は、ぜひこちらから! それでは。

 

▼「株式会社マーボードウフ」公式ホームページ

mabotofu.jp

書いた人:メシ通編集部

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