性能はいいのに「買う」まではいかないノートPC。どうしてそう思っちゃうんだろう?

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性能はいいのに「買う」まではいかないノートPC。どうしてそう思っちゃうんだろう?
Image: Kyle Barr - Gizmodo US

Lunar Lakeも最上位が間に合ってないし。

Acer(エイサー)からIntel Lunar Lakeチップ搭載のCopilot+ PC、Swift 16 AIが海外で発売されました。ばりばり強力に使えてAMOLEDでキレイ、バッテリーも1日持つ(はず)、お値段約1,200ドル(約18万2000円)と聞くとちょっと心が動きますが、実際どうなんでしょうか? 米GizmodoのKyle Barr記者がレビューしています!


Acer Swift 16 AIは、Acerロゴがなければ工事現場に落ちてる建設資材みたいに見えます。Intel最新のLunar Lakeチップ搭載で中身は有能ですが、外側のクオリティがそれに釣り合っていないんです。

Swift 14でなくSwift 16 AIを選ぶ理由は、その美しいAMOLEDディスプレイです。バッテリーライフは20時間とされ、薄くコンパクトなパッケージにCopilot+ PC認定の性能を備えています。

でも、薄いがために、キーボードを強く押すと本体が凹む感覚があり、1,200ドルでこれはどうかと思います。ツインスピーカーの音質も納得できないし、バッテリーライフも実は疑問です。さらにSwift 16 AIには、Lunar Lakeの最上位モデル Core Ultra 9搭載モデルがあるという触れ込みだったんですが、現状それはまだ買えず、2024年内の発売は無理かもしれません。

Acer Swift 16 AI

価格:1,199.99ドル(約18万2000円)

評価:★★★☆☆

好きなところ:美麗な有機ELディスプレイ、手堅いバッテリーライフ(ただし売り文句ほどではない)、シャーシの黒の仕上げがスッキリ

好きじゃないところ:本体の真ん中を押すと凹む、音質が残念、最上位のLunarLakeがまだ使えない、パームリジェクションに問題


押すと凹むビルドクオリティ

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Image: Kyle Barr - Gizmodo US

Swift 16 AIの控えめな色や薄いボディ、3.37ポンド(約1.5kg)の軽さを好きになりたいのはやまやまです。サイズの割にポート類も豊富で、USB-AにThunderbolt 4対応USB-Cが各2、HDMI、Wi-Fi 7対応、テンキー、1TBのSSDと、強力な馬車馬になれるポテンシャルを感じます。

でも、ビルドの質はまた別の話です。本体の凹み感はキーボードだけじゃなく、パームレスト部分でも感じます。構造的にデバイスのサイドで全体を支えてる感じなんですが、真ん中が特にペコペコしています。画面に一番近い部分をちょっと押すだけで半インチ(1.2cm)くらい沈みます

キーボードにはもう1つ変わったところがあります。カチャカチャというよりはメカニカルでゴムっぽい、変わった打鍵音がするんです。机に置いて強めに打てるときはいいんですが、膝に置いたときは打鍵に妙に力が要る感じがしました。マウスパッドの感触自体はナイスですが、ときどきパームリジェクションが効いてないことがありました。

本体が薄いのと、画面側はフラットでタッチ操作可能なのは良いのですが、それ以外は標準以下です。

事務系仕事ならOKのパフォーマンス

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Image: Kyle Barr - Gizmodo US

Acerの資料には、Swift 16 AIはLunar Lakeで最強のCore Ultra 9 288V搭載、とあるんですが、レビュー機はCore Ultra 7 256V搭載で、Lunar Lakeでは中間からローエンド寄りになります。GPUはARC 140Vです。記事執筆時点でAcerのストアページを見ても、Swift 16 AIにはCore Ultra 9搭載モデルがまだラインナップされていません

でも、少なくともこの16インチモデルでは、他社の同じチップ搭載の14インチモデルよりパフォーマンスが若干上がっています。Core Ultra 7 256Vは、そのコア数にしては良いチップですが、あと数万円足せばもっと高性能なCore Ultra 9 258Vの他社のノートPCが買えます。

ただCore Ultra 9でも、マルチコアのベンチマークではQualcomm Snapdragon X Eliteにかなわないかもしれません。さらにM4 MacBook Proと比べると、純粋なベンチマークでは大差を付けられてしまうはずです。

Cinebenchのスコアでは、Swift 16 AIはAsus Zenbook S 14やDell XPS 13といった同じチップ搭載の14インチラップトップよりはかなり優位な結果でした。

でも、Snapdragon X EliteやMacBook AirのM3チップと比べると、純粋なレンダリング性能は低い結果で、特に3DMarkのグラフィックステストではっきり差が付きました。ARC 140Vはヘビーな処理に向いてないんです。Blenderのテストでは、Swift 16 AIは所要時間4分40秒と悪くなかったのですが、それでもデザイナーが仕事で使えるレベルではありません。

Core Ultra 7 256Vは、データ変換のテストでも遅れを取りました。Handbrakeで4K動画を1080pにする処理では、AMDのAPU、Strix Pointの最上位モデルのRyzen AI 9 HX 370と比べると、3分以上余計にかかりました。Swift 16 AIは文書やスプレッドシート作成のようなタスクには長けていますが、動画や画像処理といった重めの作業にはパワー不足です。

キレイな画面に残念な音、Webカムは頑張ってる

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Image: Kyle Barr - Gizmodo US

Swift 14 AIじゃなくSwift 16 AIを選ぶ理由になり得るのが、3K OLEDのタッチスクリーンです。2,880×1,800の画面はピーク輝度が340ニトで、すごく明るいってものでもないですが、普通に使う分には満足です。

このPCで映画を見るなら、良質なイヤホンかヘッドホン使用をおすすめします。音が薄っぺらくキンキンしてるんです。ステレオスピーカーではありますが、音量最大でも低音はあまり聴こえません。

それから、一般的にノートPCにおいてWebカムってさほど興味を持たれてないとは思いますが、Swift 16 AIのWebカムはQHDで、解像度2,560×1,440で撮れます。ビデオ会議で使ってみたところ、たしかに暗めな部屋でもディテールがかなり撮れています。

PurifiedView機能で映り具合を調整したり、PurifiedVoice機能でノイズを除去したりもできるみたいですが、会議の相手側に何かメリットがあったかはわかりませんでした。こちら側もそんなに違いが見えません。むしろこの機能のポップアップが通話中に何回も出てくるのが気になりました。

公式スペックよりだいぶ割引なバッテリー

Swift 16 AIでフル充電の状態から、Chromeを開いて3時間くらいWeb閲覧したところ、バッテリーが半分くらい減ってました。Windowsの電源設定はバランスモード、画面輝度は中程度にしてたんですが、半分減ったんです。

公式ではWeb閲覧なら13.5時間持つことになってます。Chromeじゃなければ改善するかもしれませんが、この分だと「最大20時間持つ」という売り文句も微妙です。それでもコンスタントに使いつつほぼ1日近くは使えたので、一般的な仕事目的では十分なのだと思われます。

バッテリーテストとしては、ベーシックな電源設定で、輝度を低くして24時間のYouTube動画を再生したところ、バッテリー残量55%から0までが8時間弱でした。Acerは動画再生19.5時間可能と言ってますが、それには届かないようです。容量が70Whrあり、プロセッサも省電力なLunar Lakeということで、バッテリーはそこそこ持つんだけど、超長持ちではない感じです。

結論

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Image: Kyle Barr - Gizmodo US

Lunar Lake搭載の薄いノートPCをどれか選ぶとしたら、僕がSwift 16 AIを最初に選ぶことはなさそうです。1,000ドル超えのラップトップに求めるビルドクオリティを満たしてないからです。

Swift 16 AIの画面はすごくキレイですが、それほど明るくもないです。画面とそこそこのバッテリー以外には、この価格帯にふさわしいクオリティが見られません。キーを打ってると本体が凹むPCに1,200ドルも出すのは、うーん…。

Swift 16 AI ほしい?

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Acer

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