中国には60%、日本など友好国にも10~20%、メキシコ産自動車には200%以上。
こんなに関税をかけると主張して米大統領選で圧倒的勝利を収めたトランプ前大統領。公約が現実になった場合、その影響は物価にモロに跳ね返り、ゲーマーを直撃しそうな気配です。
モノの値段が安く抑えられているのは、中国からモノを安く買えるから…なのですが、トランプ氏は任期中、中国と散々やり合って国民の心証がよかったことから、このたびの選挙でも「また関税を上げてやる」と遊説先で訴えて国民の熱狂的支持を得ました。
しかしそれで本当にアメリカの製造業に仕事が回るのかというと、そうとは限らず、単に物価上昇を招いて終わり、ということも充分考えられるのです。
トランプ氏は「税金は外国(の会社)に払わせればいい」と言っていましたが、払うのは会社ではなくて、けっきょくカスタマーですもんね…。現に、AutoZone社CEOも9月の決算報告で「関税をかけられたら、そっくりそのままお客様に回します」と言ってました。同様の発言はほかの外国企業からも出ています。
ノートPCは5割、ゲーム機も4割の価格上昇
具体的にどれぐらい上がるのかというと、ノートPCは50%近く値上がりして、ゲーム機も40%前後値上がりするというのが、CESを主催する業界団体「Consumer Technology Association(CTA)」が10月に発表した報告書にある数値です。
報告書は6割の関税適用が電化製品に与える影響について調べたもの。対象にしたのは、スマートフォン、ノートPC、コネクテッド端末、ゲーム機、PC周辺機器など家電10品目です。まあ、関税で大損を被る業界団体がまとめた報告書という点は割り引いて見るとしても、業界の懸念点や政権交代後のワーストケースシナリオがよくわかる内容にまとまっています。
中国からの輸入電化製品に6割の関税がかけられた場合、短期的には価格上昇を招き、長期的には中国以外の国への製造移転が起こるのだと報告書には記されています。
「あーアメリカに製造が戻ってくるんだね」と思いきや。移転先の国にアメリカは入っていません。アメリカの物価水準じゃとてもじゃないけどコストは低く抑えられないので、単にほかの国に回って終わりです。
また、気になる物価は「あらゆる分野で著しく上昇するだろう」とのこと。具体的には、次のような値上げ幅になるというのがCTAの予測です。
ノートPCとタブレット:46%増
スマホ:26%増
ゲーム機:40%増
これが本当なら、PS5 Proの価格は今の700ドル(約11万円)から1,000ドル(約15万5000円)近くまで行っちゃうし、AI&ゲーム対応の最上位モデルのGPUは900ドル(約14万円)~1,300ドル(約20万円)ぐらいになっちゃう計算です。さらに
モニター:109ドル(約1万7000円)の値上がり
デスクトップPC:74ドル(約1万1500円)の値上がり
ヘッドフォン:35ドル(約5,500円)の値上がり
ともあります。みんなの悲鳴が聞こえるよう…。CTA貿易担当VPはこう言っています。
「関税はアメリカ国民が払う逆進税。外国政府が払うと思ったら大間違いだ」
「アメリカの輸入業者が払う税であり、外国の政府や国が払う税ではない。金持ちほど多く払って貧しい人の負担が少ない累進課税の逆だから“逆進”と自分は呼んでいる。打撃を受けるのは富裕層より貧困層だろう」(Tom’s Hardwareの取材に答えて)
前の大統領在任中にもトランプ氏は中国に50%の関税をかけましたが、あのときはテクノロジー業界ロビイストからの必死の働きかけで、なんとか電化製品は対象から除外してもらうことができました。今回も同じ手が効くかどうかは神のみぞ知る、です。
「パソコンの買い替えやDIY、ゲーム機の購入を考えているなら、2025年1月20日のトランプ次期大統領就任より前に早めたほうがいいよ、就任後ピューンと高くなってからじゃ遅いので」と米Gizmodoは締めくくってますが、日本でも上がるのかな。火の粉が飛ばないことを祈るばかりです。