こんなに楽しいカメラがあっていいのでしょうか。
ぼくがカメラに求めるのは「持ち歩く気になること」です。スマホで写真を撮り始めたぼくにとって、いかに高性能であろうともカメラはプラスαで持っていかなければならない“荷物”です。必携品のスマホでも写真は撮れるのですから。わざわざ持っていく気になるだけの性能があるのか否か、そんな目線でカメラを選んでいます。
CP+2019で触れたリコーの「GR III」は小型・高画質路線を貫いてきたGRシリーズの最新機種であり、ポケットサイズながらセンサーはAPS-C。持ち歩きのしやすさにも画質にも期待が持てます。刺さらないわけがありません。レビューのために使ってみると癖を感じる部分もありましたが、「常にカメラで美しく撮れる」というのは控えめに言って最高です。
Ricoh GR III
これは何?:ポケットに入ってハイクオリティな写真が撮れるデジタルカメラ
価格:12万1500円(税込)
好きなところ:コンパクトさと画質を両立しているところ、低照度でも使いやすいところ
好きじゃないところ:AFに癖があるところ(特にマクロモード時)
コンパクトで速写性も優秀
このコンパクトさがGR III最大のウリであり、魅力です。ズボンのポケットに入るサイズです。どこにでも持ち込めますし、どこででもスッと抜き出せます。
撮るのも速いです。電源ボタンを押してから撮れるようになるまでの時間が非常に短く、スマホでカメラアプリを呼び出すよりもすばやい撮影が可能です。シャッターボタンを押してからの反応も速く、編集部・綱藤が「GRってこんな速かったっけ?」とつぶやいていたくらい。
出てきたGRIIIに感動する開封職人。 pic.twitter.com/PGoGIiR9nV
— ギズモード・ジャパン (@gizmodojapan) 2019年3月15日
携帯性に優れ、すばやく撮れるという性質上、スナップカメラ・旅カメラとして極めて優秀です。
ポートレートも撮りやすいです。仕事の合間に同僚たちが見せるちょっとした表情なんかもさくさく拾えました。
GR IIIを持っているのが当たり前になるのに時間はかかりませんでした。撮る枚数も格段に増え、多く撮ればうまく撮れるものも出てくるわけで、「オレ、写真うまいんじゃね?」という幸福な錯覚に浸れる回数も激増。
「ポケットサイズでこの画質」が生み出す中毒性
GR IIIのセンサーサイズはAPS-Cで、有効画素数は約2424万画素。レンズは焦点距離が35mm換算で28mm、開放F値が2.8。ボケ感・解像感ともにすばらしいです。寄り気味でパースをつけた絵は本当に撮りやすく、綺麗ですね。以下、特に記載がない作例はISO100で撮影しています。
使っていてダイナミックレンジ広めに感じました。快晴の日中など、ハイライトや影が飛びやすい状況でもそこまで設定に苦労しなかったです。
レンズが単焦点なので工夫が必要なシーンも多いですが、的確なアングルを見つけられただけいい絵になるのであまり苦にならないですね。持ち運びが楽なので、足で適切な撮影ポイントを探しに行く敷居も低いですし。GR IIIとのシンクロ率が上がれば撮れる枚数がますます増え、さらに楽しくなっていきます。
低照度でも使いやすい
ダイナミックレンジの広さは低照度でも生きます。その場に漂うエモみをうまく写真に収めていける感。レビュー期間後半は暗いところでばかり撮っていました。
ノイズが本格的に目立ち始めるのはISO2000〜3000くらいからでしょうか。5000でもそれなりに見栄えはし、SNSやWebの記事で使う分には実用範囲かなーと思います。
基本的にマニュアルで撮影しています。
携帯性が高くシャッターチャンスを逃しにくいうえに対応力も高め。想像以上にオールラウンドに使える性能で、かなり懐が深いです。すぐに飽きるカメラではなく、かなり長く使えるのではないかと。
AFに癖あり
ただ、AFが妙に効きにくくなることがあり、それにはあまり慣れられず終いでした。被写体を中央に捉えても延々と迷い続けて焦点がちっとも定まらないときがあるんですよね。マクロモードで発生しやすく、諦めてノーマルモードに切り替えてしまうことがほとんどでした。マクロモードのAFには謎が多く、明るいところでも延々と迷い続けることがありました。ノーマルモードでは滅多に発生しないので、決定的な問題になることはありませんでしたが…。
※低照度・暗所でのAF性能を改善するファームウェアのアップデートが4月23日に公開されました。
外観とユーザーインターフェース
UIについては素朴に使いやすいなと。
UIでいちばんよかったのは背面液晶が綺麗なこと。ちゃんと撮れたことがすぐにわかるのは大事。背面液晶はタッチ操作に対応していて、フォーカスもできればメニューも選べます。強いていうなら、液晶はチルトしてくれてもよかったかなーと。レンズが広角な関係で下から煽って撮りたくなるシーンがとても多いので。あ、ファインダーはありません。
GR IIIだから撮れる1枚がある
あれこれ書いてきましたが、スペックで因数分解して見ていくとGR IIIというカメラの真価がかえって見えにくくなる気がしますね。その良さはやはりスマホでもフルサイズでも撮れない写真を撮れる可能性を秘めているところにあります。
SDカードの中には「GR IIIがなかったら撮らなかったな」という写真がたくさん残っています。たとえば、作例で出した同僚たちの写真なんかはスマホではうまく撮れなかった気がします。オフィスって結講ライティングが厳しいですから。かといって、わざわざフルサイズを持ち出すかと言うと…?
GR IIIがあれば、そんなささいな一瞬で遊び、楽しみ、切り取ることができるのです。
プラスα:GR IIと比べて
前モデルGR IIと比較すると結講なスペック差があり、価格差を考慮しても今買うならGR IIIがいいように思います。
・画素数:1620万画素→2424万画素
・手ブレ補正なし→あり
・さらにコンパクト化
・価格差は約3万円:GR IIの価格は8万9100円(税抜)
Source: Ricoh
2019年4月25日18:45:誤字を修正いたしました。