まさかのパワーユーザーにまで対応!
パソコンといえば、数十万円はするのが当たり前だった時代に、1,000ドルPCなる破格のデスクトップモデルが世に出て人々を驚かせたのもいまや昔…。それから、どんどんと価格競争が進み、5万円前後で購入できるGatewayやeMachinesブランドのデスクトップPCが人気を博したこともありました。でも、さすがに2万円からデスクトップPCを買えるようになるとは、まさかだれも予想すらしていなかったのでは?
そんな常識を覆すサプライズ価格で登場し、海外で注目を集めているモデルがあります。今年1月に米国ラスベガスで開催された2015 Internation CESにおいて、HPが発表し、ちょっと「Mac mini」のようなデザインにもみえる「HP Stream Mini」の販売価格は179.99ドル(約2万1000円)。
この値段でデスクトップPCが、本当にどこまで仕事にバリバリ使えるものか米Gizmodo記者Sean Buckleyさんが徹底検証してくれました!
2万円台で買えるPCといわれると、あの一世を風靡したネットブックのことを思い浮かべる人も少なくないでしょう。実際にHPは、ほぼ同じ価格帯で「HP Stream 11」というラップトップデザインのモデルも投入してきています。しかしながら、HP Stream Miniは、あくまでもモニターにつなげて使う、れっきとしたデスクトップPCですよ。
普通はラップトップPCよりもデスクトップPCのほうが、同じ値段ならば、よりパワフルな性能を実現していると期待されるものです。そして、HP Stream Miniでも、HP Stream 11と比較するならば、より新しいHaswell世代のインテル製Celeronプロセッサー2957U(1.4GHz)が搭載されています。つまり、コンパクトなディスプレイを装備した携帯性重視のラップトップが必要ないのであれば、デスクトップスタイルで利用するHP Stream Miniを購入したほうが性能的には上になることは確かでしょう。
とにかく場所をとり、置くスペースにさえ困ってしまう多くのデスクトップPC本体とは異なり、HP Stream Miniは非常にコンパクトなサイズです。本体の大きさは約145×146×53mmと、CDケースを横に置くくらいの設置面積しか必要としません。少しがんばればチョコンと手のひらに載せられるコンパクトさですよね。
キュートに丸みを帯びたコバルトブルーのデザインは、パソコンというよりも、テレビのわきに設置するストリーミングボックスと形容されそうです。しかしながら、前面・背面にUSB 3.0ポートを各2個装備するほか、有線LAN接続ポート、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN、Bluetooth 4.0、SDカードスロットなど、豊富なインターフェースが揃っています。
さすがに、HP Stream Miniの内部をこじ開けて簡単に拡張・増設まではできないだろうなと思いきや、意外にも難なく外側のケースは取り外し可能です。HP Stream Miniを裏返し、ネジを3本だけ外せば内部の基盤にまでアクセスできる構造のようですね。つまり、デフォルトのスペックに満足できなければ、メモリの増設からSSD換装によるディスク容量アップにまで対応する、なかなか拡張性の高いモデルとなっているのでした!
とはいえ、まずは最小構成モデルをデフォルトの設定のまま使用したときの感想を記しておきましょう。つまり、Windows 8.1を1.4GHzのCeleronプロセッサ、2GBのメモリ、32GBのSSDで使い倒してみるというわけですね。
結論からいうならば、ここまでできるのかって新鮮な驚きを覚えたというのが正直なところです。普通のPCユーザーならば、日々のタスクをHP Stream Miniでもこなすことは不可能ではありませんよ。
例えば、複数のチャットアプリを同時に立ち上げておいても固まったりはしません。メールの作成画面を複数開いたままにして、お気に入りブラウザのChromeのタブを10個以上開いたまま作業することだってオッケー。そのままMicrosoft Officeを仕事に使うことも問題ありませんでした。ただ、ここへPhotoshopまで立ち上げるときには要注意……。1度に編集できるのは1つの画像だけです。さすがに2つ以上の画像を同時編集しようとしたり、PhotoshopとOfficeソフトをマルチタスクで使いまくるとなると苦しかったですね。あと、大量にタブを開いてブラウザを使う人は、ストレスなくインターネットを使うためにも、まずはPhotoshopを閉じてからブラウザに戻るといった工夫が必要でしょう。
HP Stream Miniをこじ開けると、なんだかシャーシのほうが内部のパーツよりも大きく出っぱって、サイズが合っていないのでは? そんな疑問を抱く人もおられるでしょう。実はその通りで、HP Stream Miniには、より大容量のHDDやパワフルなプロセッサーを採用した「HP Pavilion Mini」という姉妹モデルが存在しています。このSATAインターフェースのHDDが標準装備されるHP Pavilion Miniと同じシャーシを使いまわす形で、HP Stream MiniへmicroSATAインターフェースのSSDを、そのまま装着。こうして開発費を削りつつ、より低価格なHP Stream Miniがリリースされた経緯があるので、ちょっぴり不格好なデザインなんですよね。
さてさて、どうせ中身まで普段は目にすることもないのですから、念願のスペックアップ作業へ黙々と着手してみましょう。SO-DIMMメモリスロットは2スロットが用意されており、最初から使われているのは1スロットのみ。ここへ4GBのDDR3 RAMを挿しこんで、初めから搭載されていた2GBに加え、合計で6GBメモリのパワフルマシンへ手軽にHP Stream Miniをアップグレード!
ネットブックならばいざ知らず、仕事に性能も求められるマシンを利用したい人には、このスペックアップ仕様が絶対にお勧めですね。だって、先ほどは動きが重かったマルチタスクでさえ、今度はスイスイと利用可能。Photoshopで複数画像の同時処理ができるのはもちろんのこと、そのまま大量にタブを開いたブラウザでもストレスなく作業できるようになりました。
つまり、HP Stream Miniは、最小構成モデルで購入してそのままの設定でも、かろうじて仕事に支障をきたすことなく使えるとの評価でした。しかしながら、簡単なメモリ増設を行なうだけでも、バリバリと仕事に使えるマシンへと変身してしまうのですから、たいしたものではないでしょうか。
さて、ややビジネスよりな使用感ばかり伝えてきましたので、今度は標準装備のインテルHDグラフィックスの性能をゲームプレイで評価してみましょう。先ほどスペックアップした増設メモリは取り外し、再び購入したときの最小構成仕様に戻してありますよ。
このレベルの格安マシンで、グラフィックス性能の求められるPCゲームをプレイするのは、正直にいって無理があります。ただ、それを承知でプレイしていくと、意外にも使えるものだなと驚かされるパワフルな一面もみせてくれましたよ。少し古いゲームソフトであれば、思ったよりもストレスなくプレイできるものはありました。
例えば、Xbox 360やPlayStation 3でプレイした人もおられるでしょうけど、Falloutシリーズの名作をHP Stream Miniでプレイ。1080pの動画設定で、Falloutシリーズ4作目となる「Fallout:New Vegas」をプレイしたところ、設定によっては十分にプレイ可能であると判明。でも、もう少し最近の新しいゲームをプレイするのはやめておいたほうがよいでしょう。800×600ピクセルという低解像度でならば、かろうじて「Tomb Raider(2013)」のPC版をプレイできないことはないといったレベルでしかありません。HP Stream Miniに、ハイスペックなゲームPCとしての性能を求めるのは酷でしょう……。
それでは、結局のところ、HP Stream Miniはパソコンとして買いなのでしょうか? まずはそこそこの性能で使えるWindows 8.1マシンとして、これ以上にコストパフォーマンスに優れたモデルは他にはないという意味で、十分に買いだと思いますね。同じ値段で、同じ性能のデスクトップPCを自作することさえ至難の技のはずです。他の主要メーカーのモデルにはつきものの、余分なソフトウェアが大量に入っているというようなこともありませんよ。
そして、最小構成モデルの性能に不満があれば、簡単にメモリを増設したり、SSDを換装して容量アップを図れるのもうれしいポイントです。HP Stream Miniには、32GBのmicroSATAインターフェースのSSDがセットされていますが、この容量に満足できるユーザーは少ないでしょうね。なぜならば、32GBというのは名ばかりで、すでに購入当初からWindowsのシステムファイル関係で大量のスペースが使われてしまっています。ですから、ユーザーが自由に使えるのは22GBのみ。これではすぐにディスク空きスペースが足りなくなってしまうことでしょう。
とはいえ、いまこのタイミングで格安のWindows 8.1マシンを入手しておけば、今年の夏にはWindows 10がリリースされてくるのがボーナスポイントとなってきますよ。だって、無料でアップグレードが保証されているうえ、HP Stream MiniにWindows 10をインストールした途端、ディスクの空き容量がグンとアップしてくることまで明らかになっていますからね~。
最後に、HP Stream Miniを購入して、大いに不満に感じたこともまとめておきましょう。この値段なので、まさか箱を開けたら、HP Stream Mini本体に加えて、USBキーボードとUSBマウスまで付属しているとは思いもしませんでした。ただし、その性能はチープなので、これに満足できる人は少ないでしょう。
そもそもHP Stream Miniには、標準でHDMI出力ポートやDisplayPort出力機能が備わっているので、テレビへつないでリビングでソファーに座って利用するというスタイルのユーザーも多いはずです。それなのに、常に邪魔な有線ケーブルで接続して使うしかないキーボードやマウスをデフォルトでセットされるくらいならば、キーボードもマウスもなしでよいです。その代わり、もっとHP Stream Miniの販売価格を下げてくれたほうがうれしいかも。あるいは、オプションで高性能なワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスへアップグレードできる選択肢を用意してくれると、やや購入価格はアップしても買いたいユーザーはいるでしょうね。
なお、上記のレビューは、すべて北米で発売されたHP Stream Miniをベースに執筆してあります。日本国内では、HPが「HP Stream Mini 200-020jp」のモデルで、やや北米モデルとは異なるセット内容にて同製品を販売中。最小構成モデルの価格が2万7400円とアップしているものの、ワイヤレス日本語キーボードとワイヤレスマウスがセットされています。3万円を切るデスクトップPCとして、やはりHP Stream Mini 200-020jpはコストパフォーマンスに優れたモデルと評されそうですよね。
Sean Buckley - Gizmodo US[原文]
(湯木進悟)