火星へより効率的に行ける方法を数学者が発見

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火星へより効率的に行ける方法を数学者が発見

火星に行くことは簡単なことではありません。そこにはたくさんの理由がありますが、その中でも火星行きを妨げる大きな問題が2つあります。それは、「1.火星に行くのに大量な燃料が必要」だということ、そして「2.地球と火星がちょうどいい位置に来る発射のタイミングが26ヶ月に一度しかない」ということです。

でも数学者たちが火星行きの新たな経路を計算して、この両方を解決してくれました。効率的なこの新たな経路ですが、直線ではありません。

地球から火星への経路を考えるのは、地球上のどの二点への経路を考えるのよりも難しいのです。というのも、2つの惑星間の距離は常に大きくなったり小さくなったりしているのです。これは太陽を回るそれぞれの惑星の軌道によるもので、だからこれまで「発射のタイミングが26ヶ月に一度」しかなかったのです。それ以外にも、宇宙船に影響を与える要素として重力も考慮しなければなりません。地球の重力、火星の重力、そして太陽の重力などです。

数学者のフランセスコ・トップートさんとエドワード・ベルブルノは、火星の動きを上手く利用して経路を弾き出しました。これは「Ballistic Capture」(弾道捕獲)と呼ばれる方法を使ったもので、現在使用されている「ホーマン遷移軌道」とは違う方法です。Scientific American誌がこの2つの方法の違いを教えてくれています。

それによれば「ホーマン遷移軌道」というのは、火星の軌道上で、宇宙船が到着する時に火星が来る予定の位置に向けて宇宙船を発射するというもの。対する「弾道補足」では、火星の軌道上に、宇宙船が火星よりも先の位置に来るように投げ込みます。

発射と航行に掛かるコストは同じですが、「ホーマン遷移軌道」の火星にピッタリ止めるために速度を落としたりしなくてもいいんです。火星そのものの軌道周期速度よりも少しだけ遅い早さで火星軌道状を宇宙船に航行させます。すると火星がだんだんと宇宙船に近づいていき、自然と火星と合流できるのです。

この「弾道補足」が「ホーマン遷移軌道」よりも優れている点は、宇宙船が速度を落とすためにこれまで必要と考えられていた大量の燃料を積まなくてもいいということ。これでこれまでの25%分の燃料を節約でき、そのため打ち上げるロケットはより小さく、打ち上げ費用も安く住むわけです。そして発射のタイミングもより自由度が増します。なので火星に人を送った際にも、必要物資をもっと頻繁に届けることができます。

ただ、良い面ばかりではありません。この「弾道補足」方法では、より長く時間がかかってしまうのです。これまででも6ヶ月かかるこの地球~火星のフライトに、数ヶ月ほど加算されてしまいます。人間を宇宙船に載せる場合は、放射線暴露への時間も長くなりますし、精神面での不安も増します。

NASAのジェームズ・グリーンはScientific American誌に、これはまさに「目を開かせる」と語っています。これでもっと火星への有人旅行や移住の可能性が広がりそうですね。もっとも、火星人との戦争が起こらなければの話ですが…。

top image by JPL/NASA

source: Scientific American, arXiv

Sarah Zhang - Gizmodo US[原文

(abcxyz)