【BLACKのTED出演記 Vol.01】ジョブズも出演した世界最大級の講演会に、空気を読まずヨーヨーで出演してしまいました。
【BLACKのTED出演記 Vol.02】現地に到着! そこで見た物とは?
【BLACKのTED出演記 Vol.03】いよいよ本番、TEDメインステージへ登壇。リハーサル〜当日までの一部始終を完全公開!
反響その1:いきなりラスベガス
本番終了後、舞台袖へ退場した後は、そのまま待機エリアのソファへ倒れ込みました。
「舞台上での記憶は曖昧だけど、間違いないのは、TEDのステージでスタンディングオベーションを受けてしまった、ということ。いやいやありえない、どうしよう...」
そんな気持ちと、興奮しきった感情とが相まって、何も考えられない放心状態のまま10分くらい倒れていたように思います。しかし、あまり長時間ソファを占拠するのも次のスピーカーの方のご迷惑となってしまうので、なんとか起き上がり、ある程度道具を片付け、ホールの観客席へ移動しました。
最前列入り口付近の関係者席でプレゼンを聞いていると、TED参加者用SNS「TED Connect」を通じ、メッセージが1件届きました。
「本当に素晴らしいパフォーマンスでした。ぜひ、ラスベガスへご招待させて下さい! 連絡先をお教えいただけますか?」
えっ、えっ。
反響その2:怒濤の質問攻め
いきなりのメッセージに戸惑っていると、セッションが終了。TEDの本懐とも言える、休憩時間=交流時間のスタートです。
止まらない。止まりません。感想・賞賛・質問の嵐。誰かと話しているときも、常に待ちの人が途切れないほど。しかも、たまに忘れそうになりますが、声をかけてくださる皆さんはTEDへの参加を認められた聴衆の方々です。本当に、おそれおおすぎる...。
パフォーマンスに対する感想だけでなく、スピーチについての感想や、僕の経歴や背景について深く尋ねて下さる方も多く、本番の疲れも残る中、頭をフル回転させ必死に英語で答えていました。
反響その3:取材攻勢
次のセッションが始まり、ようやく質問攻めが一段落しました。とにかく休みたかったので、メイン会場のホールではなく、別棟のラウンジエリアで視聴する事にしました。
コーヒーを受け取り、ソファに腰を下ろすと、またメールが届きました。
「CNNの者ですが、取材させていただけませんか?」
TEDは参加者だけでなく、メディアに対しても厳しい制限を設けていて、現地での取材を許可されているのはごく少数のメディアのみです。CNNは正式に許可を得ていて、専用の個室に取材用の簡易スタジオが用意されていました。
当たり前の話ですが、質問は全て英語です。聴衆の皆さんとの会話と違い、こちらは映像に残るのだと思うと、また違う緊張がありました。ある意味、本番のステージよりも緊張したかもしれません。
また今回、日本からは個人ジャーナリスト2人だけが取材を許可されており、松村太郎さん、野々下裕子さんにも取材いただきました。この経験は日本に向けてもぜひ発信したいと強く思っていただけに、日本のメディアへつながりを持つおふたりに取材いただけたのもとても嬉しかったです。
反響その4:評価が高かったのは、パフォーマンス以上に「スピーチ」だった
その後も多くの方に話しかけていただいたのですが、その際に意外だったのは、パフォーマンス以上にスピーチを評価いただいた、ということです。
パフォーマンスについては、自分の専門分野ですし、可能な限りの努力もしてきたつもりでしたので、それなりの自信はありました。しかし、スピーチについては、果たして自分の身の上話なんかがTEDのステージで話すに値するのか、という疑問は最後まで拭えませんでした。
ところが、実際にプレゼンを終え、聴衆の皆さんからいただいた反応は、むしろスピーチについての感想や質問の方が多かったんです。
「情熱を持てる物を見つけ、そこへ向かって邁進したキミは、これからの若い世代のロールモデルになるべきだ。」
「先行き見えない経済情勢の中、これからの若い世代が生きていく上で『情熱を持てる物』を見つけるということは、とても重要だと思う。ぜひ、『教育』という分野に力を貸して欲しい。」
そんな声さえいただいてしまいました。
出演前に抱いていた不安として、「ideas worth spreading(広める価値のあるアイデア)」をスローガンとするTEDに、日本から出演したのはパフォーマーだった、ということに対して、「なんだ、パフォーマーか。スピーカーに出演してもらって、『日本人はプレゼンが下手』という印象を払拭してほしかったな。」と思っている方が多いのではないか、という懸念がありました。
しかし結果として、もちろんパフォーマンスに対しても最高の評価をいただいたのですが、それ以上にスピーチも評価していただけた、というのは、意外であると同時に、とても嬉しかったです。
改めて、TEDとは?
準備編、到着編、本番編、そして今回の反響編と、全4回に渡って、TEDにまつわる体験を一通り書かせていただきました。
自分としては、数百行に渡るメモの中から重要と思われる部分だけを抜粋して書かせていただいたつもりなのですが、それでもやはり長くなってしまいましたね(汗)。長文駄文、失礼致しました。
というわけで、思い切って「一言で」TEDとは何なのかを言わせていただくとしたら。それは、「世界を革命する力」だと思います。
そこにいる全員が、「世界を良くしたい」という願いを持っている、と強く感じました。なんか小学生みたいな事を言っているように聞こえるかもしれませんが、これを大人が本気で願って行動に移すって、意外と難しいんじゃないかと思うんです。
TEDに聴衆として参加するには100万円を払う必要があるのですが、それに加え、「社会的功績・貢献の有無」が審査されます。お金さえ払えば誰でも参加できるわけではないんです。聴衆や取材メディアに対しこうした厳しい制限を設けるのは、「本気で世界を良くしたいと願い、それを実行に移せる人」に参加して欲しいというTEDの強い目的意識が根底にあるのだと思います。
高額の参加費の話だけが先行してしまうと、「金持ちの選民意識か」といった話も出てしまうかと思うのですが、全くそんな事は感じませんでした。参加費はあくまで運営費の一部を負担してもらっているだけで、真の参加基準はこの「社会的功績・貢献の有無」なのだと思います。「世界を良くしたい」を本気で考え、それを実行に移す事の出来る人に参加してもらうことにより、交流を濃密にし、新たな「世界を良くする」アイデアや企画が生まれやすい環境を作ろうとしているように感じました。
スタッフの皆さんもこの目的意識を強く持っていて、だからこそ最高の環境作りを全力でしてくれるのだと思います。決して、「セレブのイベントを手伝ってるオレカッケー」といった表面的な「意識高い(笑)」理由で参加しているのではなく、本当に世界を良くしたいという高い意識を「真面目に」持っていると感じました。
最高のスタッフが、最高の環境を作ってくれる。その環境で、スピーカーは最高のプレゼンを行う。プレゼンを聴いた聴衆は、その内容を議題に世界をどう良くするかを真剣に話し合う。そこから生まれる新たなアイデアは、本当に世界を良くしうるものであると思いますし、そこには確かに「世界を革命する力」があった、と感じました。
コラム:TEDxTokyo 2013の感想
去る5月11日(土)、今年のTEDxTokyoが開催されました。
今年のTEDxTokyoで最初に感じたのは、「日本語でスピーチをされる方が増えてる!」、「スピーチ内容の原稿を持ち込みもOKになってる!」という2点です。
僕が出演させていただいた2011年当時は英語でのスピーチが基本で、よほどの事が無い限り日本語でのスピーチはNG。原稿の持ち込みも禁止、と聞いていました。英語でのスピーチが人生初であった自分は、それはもう苦労したのを覚えています。今でも、前日の焦り方を悪夢のように思い出します。
それだけに、そのルールが緩和されていたことには驚きました。正直、「え、ずるい!」と思いました。しかし結果として、その緩和はプラスに働いていたように思います。日本語で話されたり原稿を持ち込まれたりしていた方のスピーチの質が低かったかというと全くそんなことは無くて、むしろ生き生きと話され、時に聴衆の笑いを誘い、スタンディングオベーションを受ける方も多くいらっしゃいました。
プレゼンテーションとは、スピーカーと聴衆のコミュニケーションであると思います。無理に不慣れな言語で話すことにより表現がおろそかになるよりも、スピーカーが伝えたいことをきちんと伝えられる形であることの方が重要だと思いますし、事実「自分に対して語りかけてくれている」と感じるスピーカーの方が多かったように感じました。
「TEDx」とは、すごく荒い言い方をすると、TEDのコピーイベントです。主催団体も、TEDとは全く別です。しかし、決して劣化版とかいう事ではありません。TEDxイベントを開催するためには本家TEDから認可を受ける必要があり、その際に数え切れないほどのルールを課せられます。主催団体こそ違えど、TEDの理念が体現されるような仕組みになっているんです。
TEDxTokyoは、聴衆として参加するにあたり、入場料や参加費等は一切かかりません。そのため、予算も本家TEDと比べかなり限られており、何かと制限や難しいこともあるだろうと思います。しかし、そうした限られた条件下であっても、「スタッフ・スピーカー・聴衆がお互いに尊敬の念を持って接し、可能な限り最高の環境を作り、そこで可能な限り最高のプレゼンを行い、そこから次のアイデアが生まれる」というTEDの本質は、間違いなく体現されていたように感じました。
BLACK 「ヨーヨーの達人への道」[TED]
(BLACK/Official Website)