ばばーんっ!!
お分かりいただけますでしょうか。街灯という街灯に下げられた、「TED」という旗。
上記の写真は空港からホテルへ向かう車内から撮ったのですが、なんて言うか、もう街中がTED一色という感じでした。
【BLACKのTED出演記 Vol.01】ジョブズも出演した世界最大級の講演会に、空気を読まずヨーヨーで出演してしまいました。
次回以降の記事はこちら【BLACKのTED出演記 Vol.03】いよいよ本番、TEDメインステージへ登壇。リハーサル〜当日までの一部始終を完全公開!
【BLACKのTED出演記 最終回】TEDステージで、まさかのスタンディングオベーション。その後に待っていた反響と、そこから見えたTEDの正体
TEDに聴衆として参加するには、75万円の年会費と25万円のイベント参加費、合計100万円を払う必要があります。そんなセレブ達を迎えるわけですから、運営側も最高の環境作りが出来るよう全力を尽くしています。
そんなイベントの会場として選ばれるというのは街としてもかなり名誉な事のようで、オフィシャルホテルも外壁にTEDのロゴを夜通し投影していたりと、街をあげてTEDというイベント・参加者を歓迎している印象を受けました。
まさかの来賓扱いに当惑...
ホテルでチェックインを済ませ部屋へ向かおうとすると、明らかに重鎮と思われるスタッフさんが、手紙をスっと差し出し、こう言いました。
「こちらは、私どもホテルからの手紙でございます。何かお困りのことがございましたら、いつでもおっしゃってください。どんな些細な内容でも結構でございます。」
と。
お分かりいただけますでしょうか。「VIP Coordinator」と書いてあります。
TEDには、過去にクリントン元大統領や故スティーブ・ジョブズ氏など、名だたる方々が登壇されています。そういった方々が、最高の環境で最高のプレゼンを行えるよう、おもてなしも最高クラスが基準となっていたようです。
しかし、言うまでもなく僕はそんな扱いを受けるのは生まれて初めてですし、普段の練習もスタジオ代の節約のため深夜0時から早朝6時までという時間帯で行っているくらいです。(「寝てないわー」というアピールではないです。)
分不相応甚だしいのは明白で、「自分なんかがこんな扱いをしていただくなんて、その裏でどんなフラグが立っちゃってるんだろう...」という気持ちでいっぱいでした。ガクブル。
豪華すぎる「TED Gift」
ホテルへのチェックインを終え、会場である「LONG BEACH PERFORMING ARTS CENTER」へ向かいました。
受付では、出演者用のパスと合わせて、「TED Gift」と呼ばれるギフトバッグを受け取りました。
TEDには、沢山の企業スポンサーがついています。彼らが提供する商品サンプルの詰め合わせが、この「TED Gift」です。しかしその内容は、僕の想像していた「サンプル詰め合わせ」の内容をはるかに越える、異常とも言える豪華さでした。
このギフトバッグを受け取る人、つまりTEDの聴衆に商品を気に入ってもらう事は、スポンサー企業にとっても大きなビジネスチャンスにつながるのだと思います。そのためか、各企業はどう見ても本気を出しすぎとしか言い様のない内容を詰め込んでいました。
例えば、
「Microsoft OFFICE 365 HOME PREMIUM」。
いきなりマイクロソフトさんがやってくれました。OFFICEの最上位版、HOME PREMIUMです。1年間の期限付きではあるものの、約3000人へ配るギフトバッグに入れる物としては、明らかに常軌を逸しています。
「SUBSCRIPTION Movie Pass」。
こちらは、映画の見放題パスです。映画館でこのカードを見せると、タダで映画を観られるとの事(3ヶ月分)。よく見ると、「TED VIP」と書いてあります。これ見せて映画館入るとか、カッコ良すぎる...。
会場に出展しているブースと連動したギフトもありました。こちらはメガネ専門店glasses.comのブースで、独自開発した試着サービスのデモを行っていました。
専用QRコードを表示したiPhoneを顧客側が額に掲げ、その顔をスタッフさんがiPadで撮影すると、iPad内にそのお客さんの3D顔データが生成されます。その顔データに、お店が取り扱っている各メガネをかけた画像が一覧で表示される事により、1つひとつ掛け替えて試着をしなくても一気に比較できる、という仕様でした。
メガネをかけた3Dの顔モデルはグリグリ回転させることができて、横顔も確認することが可能。普通に試着をしていたら、違う種類の眼鏡をかけた自分の顔を同時に比較することはできないので、これは素晴らしいサービスだなと思いました。
今回お店側は、商品そのものは持って来ておらず、全商品のデータのみをiPad内に取り込んでおり、参加者が選んだモデルを後日発送、というスタイルでギフトを提供していました。お店側としても大量の在庫を持ち込む必要がないので、こうしたイベントへの出店時に便利なのかもしれませんね。
その他にも様々なギフトが詰まっていて、推定ですが20万円分くらい入っていたように思います。一部、アメリカ在住者しか利用できない内容はありましたが、それでも、参加費を払っていない僕がタダで受け取るのは申し訳なさ過ぎるくらい強烈な内容でした。
最も心配していた、参加者の皆さんとの交流
翌日、いよいよTED2013開幕となりました。僕の出演はイベント3日目でしたので、初日・2日目は、他の登壇者の方のプレゼンテーションを聴いたり、参加者の方との交流などが中心となります。が、この「参加者の方との交流」こそが、ある意味で自分のプレゼン以上に心配していた点だったんです。
「100万円という参加費をポンっと払えるようなセレブな聴衆」、あるいは「ビル・ゲイツ氏、クリントン元大統領クラスの出演者」。自分の英語力が足りないことを差し引いても、そんな方々とまともに交流できるとは到底思えず、会場内ではぼっち確定だと信じて疑いませんでした。
ところが、意外にもその心配は杞憂に終わりました。
聴衆の皆さんは本当に気さくで、「ヨーヨーパフォーマー」というワケの分からない肩書きで乗り込んできた僕に対しても、わけ隔てなく接してくれました。それどころか、僕のプロフィールを読み込んできてくれていたり、過去のTEDxTokyo出演時の動画で予習してくれていたりして、「BLACKさんの、こんなストーリーが面白いですね。詳しく話を聞かせてもらえませんか。」などと、興味を持って接してくれるんです。
出演者として選出された事により、完全に、勘違いして過大評価されています。
全力で恐縮しつつ、光栄にも皆さんと交流させていただく中で強く感じたのは、「尊敬の連鎖」です。聴衆の皆さん・出演者の皆さんともに各界を代表するような方ばかりですが、決しておごる事無く、誰に対しても強い尊敬の念を持って接しているように感じました。新しい何かを得たい、学びたい、誰のどんな話からでも得られる物はあるはずだ。そんな強い学びの姿勢を感じました。
お互いが相手に対し敬意を持って接するため、会話はとても上品な雰囲気です。そんな中での交流なので、自分自身が上のステージへ引き上げられたような錯覚を覚えます。もちろんそれは凡人たる僕の勘違いなのですが、それでもその瞬間だけは、普段よりはちょっと知的っぽい話を自然とできていたように思います。
cheeroモバイルバッテリー大活躍の巻
TED側もこのような交流を推進すべく、参加者専用のSNSアプリ「TED Connect」を提供していたりして、現地でも何かとiPhoneは活躍していました。
そんなモバイル環境を影で支えてくれたのが、simフリーの携帯電話と、おなじみcheeroのモバイルバッテリーです。
今回は9日間のアメリカ滞在だったのですが、auの海外ダブル定額サービスなどを利用した場合、毎日大量に通信を行うと、通信費は約2万7000円となります。
TEDに参加こそしているものの、セレブとはほど遠い僕にはちとお高いなと感じたので、今回は対策を講じました。テザリングが可能な、simフリーの携帯電話を用意したんです。
手前は、Huawei社の「IDEOS U8150-A」です。これに、アメリカの通信会社T-Mobileのsimカードを入れて使用することにしました。日割りの「Pay by the Day」というプランだと、1日あたりわずか3ドルで、通話し放題・通信し放題・さらに200MBまではLTEの速度で通信が可能、という信じられない安さで使用することが出来ます。
しかしこのIDEOSは、たまに通話でも使用しますが、あくまでiPhoneのためのテザリングが主な目的です。
今回の滞在中、iPhoneのモバイルデータ通信は常にオフにしておき、会場とホテルではWi-Fiを、移動中はIDEOSのテザリングを利用して接続することにより、通信費を格段に抑えることが出来ました。IDEOS本体は約6000円で手に入れたので、3日間以上使用した場合は、今回のプランの方がお得、という計算になりますね(参加費100万円とかスケールの大きい話をしていたのに、急にセコい話になってしまって申し訳ありません)。
ただ、この作戦には1点だけ問題があって、長時間IDEOSをテザリングに使用していたため、電池の消耗が激しかったんです。そこで大活躍してくれたのが、おなじみcheeroのモバイルバッテリー(画像奥)です。
カバンの中に、IDEOSをモバイルバッテリーに接続した状態で放り込んでおけば、電池切れの心配はゼロ、いつでもどこでも安定した通信環境が手に入った、というわけです。
同製品を買った当初は「普段使いにはちょっと重いなー」と思っていたのですが、今回のような使い方をする際には、10000mAhという大容量はとても助かりました。
コラム:現地で見たTEDの正体その1「スピーチでは終わらない講演会」
時系列では書ききれない、イベントを終え落ち着いた今だから書ける内容にも少し触れさせてください。
TEDとは一般に、「講演会」であると言われています。しかしそれは、あくまでTEDの一面に過ぎず、本質ではなかった、と今は思います。
今回の記事で、「参加者の皆さんは、互いに尊敬の念を持って交流をしていた」と書かせていただきました。この「交流」の部分こそが、TEDにおいて最も重要な要素であったように感じました。
TEDの会場には、約1500人を収容できるメインホール以外にも、敷地内に多くの建物や部屋が用意されており、どんな場所でも大型モニターやスクリーンで、パブリックビューイングのような形でプレゼンを視聴することが出来ます。これは、TEDxTokyoなどでも同じです。
当初は、「なんで会場内にいるのに、ホール外でプレゼンを見なきゃいけないんだろう?収容人数の関係かな?」などと思っていました。しかしそれは、全くの誤解でした。それどころか、ホール外の中継エリアの方がむしろ特等席であるかのように扱われていました。
ホール内は、生でプレゼンを聴く事ができる反面、聴衆の方同士でのおしゃべりは厳禁です(当たり前ですが)。それに対し、中継エリアはソファなどが並べられリラックスできる雰囲気で、おしゃべりもし放題です。
こうした雰囲気の中で、聴衆の皆さんは、プレゼンの感想などについて、カジュアルに、しかしとても真剣に意見交換をされていたんです。
ステージで披露されるプレゼンが世界最高峰であることは間違いないわけですが、それすら実は、そうした意見交換のための呼び水に過ぎなかった、というのが率直な感想であり、TEDで受けた最も大きな衝撃の1つです。最高のプレゼンを議題とした、熱い聴衆による意見交換。そこから生み出される、新たな企画やアイデア。これこそが、実はTEDにおいて最も重要な部分であるように感じました。
いよいよ本番! 15年の努力の結果や如何に...?
心配していた参加者の皆さんとの交流も、思いのほか良好な形で楽しむことができ、いよいよ2月27日、本番を迎えるわけですが、すみません。ちょっと長くなってしまったので、続きはまた次回とさせてください。
最強の助っ人到着、無心で臨んだ本番、まさかのスタンディングオベーションなど、今思い返しても、実に感情の起伏に富んだ1日でした...!
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(BLACK/Official Website)