そんな水素を安全かつ効率的に貯蔵できる技術を日本の産業技術総合研究所とアメリカのブルックヘブン国立研究所が共同で開発したそうですよ。
この技術...何が凄いかということ以下の3点を実現したことにあるそうです。
・二酸化炭素と水素からギ酸、ギ酸から二酸化炭素と水素への変換をpHで制御できる触媒を開発したこと
・新開発の触媒により、常温常圧の水中で二酸化炭素と水素をギ酸に変換することが可能になり、貯蔵や運搬が容易になったこと
・新開発の触媒により、ギ酸を分解し、二酸化炭素と燃料電池に適した高圧水素の供給が可能になったこと
これまでの技術だと、高圧高温下の環境や、燃料電池が劣化しないように、触媒により発生した一酸化炭素の量をコントロールする必要があるなど、色々と制約があったそうです。なので、水素を貯蔵したり、供給したりするというだけで多くのエネルギーが必要になる...という状況でした。そのため、エネルギー効率を大幅に改善できる高性能な触媒が待ち望まれていたようです。
今回登場した水素と二酸化炭素をギ酸に変換する触媒のおかげで、ガソリンや液化天然ガスのように貯蔵や運搬ができるようになっただけでなく、変換するために必要なエネルギーも大幅に減らせることに成功したと言えそうですね。
では、この技術のおかげで、水素燃料の未来が一気に明るくなったのか? というと、まだまだ課題が残っているようです。
水素はもっとも軽い元素で、地上に水素が単体で存在することがほとんどないので、他のものから作り出すことなります。水素の原料としては、天然ガスや石油を利用することが多いようですが、これって別のエネルギーを利用してエネルギーの再生産をやっているような...感じでちょっと微妙ですよね。一方で、そんなことをしなくても水を電気分解すれば、水素なんて簡単に作れるじゃない! とも思ったのですが、水を電気分解に使う電気エネルギーよりも、得られた水素を反応させて作られる電気エネルギーの方が少なくなる...ので、元の電気エネルギーをそのまま使った方がいいような気もします。
いずれの場合も、水素を作るのって、エネルギーを作るために、別のエネルギーを利用する...ことになるようで、ちょっと残念な気持ちになってしまいました。
水素燃料のデメリットばかり書いてしまったようですが、エネルギーとしての質量あたりの密度は、ガソリンの3倍で、液化天然ガスや石油と比べても非常に大きいそうです。なので、水素を低コスト、低エネルギーで生成する技術が開発されると、一気に水素燃料の時代が来る...かも知れません。水素燃料の今後に期待したいですね。
Photo by Hugo90
二酸化炭素とギ酸を相互変換するエネルギー効率の高い触媒を開発[産総研]
水素燃料[Wikipedia]
液化水素[Wikipedia]
(KENTA)