スウェーデンの首都ストックホルム北42kmにあるアーランダ空港に、
古くなって現役引退したボーイングがあるという話をOscar Diösさんが聞いたのは、2006年のこと。
この1976年製造のボーイング747-200は国内のTransjet社が所有し、イスラム教巡礼者をメッカに運んだり、世界中を飛び回ってた飛行機ですが、「組織上の問題」で2002年から地上に謹慎になってました。
中はひどく傷んでましたが、オスカーさんはひと目見るなり「これはビジネスになる!」とビビンときます。一日中アクアビット(45度ある)したたか飲んだ後だったんでしょう。このオンボロ飛行機買って中身を改造し格安ホステル開いちゃおうと、なんとも無謀なことを考えたのです。
2006年、ちょうどホステル事業を拡張したいと思ってた矢先に、アーランド空港で古い飛行機の廃品を売りに出してると聞いたんです。ずっと昔からアーランドにビジネスの基盤を築きたいと思ってましたから、こんなうまい話はないと一瞬も迷わず飛びつきました。長い話の続きは、ギャラリーと一緒に以下でどうぞ。
途方もないアイディアですけど、オスカーさんはウプサラという町に「Uppsala Vandrarhem och Hotell」というホステルを構えている堅実な人です。アーランダ空港みたいな客の出入りの多い空港近くで土地を探して一からホテルを建てると、どれだけ高くつくかも、よーく分かってます。
ジャンボの遺体の話を聞いたオスカーさんの頭にはもう、安く泊まれる部屋のことしかありませんでした。「格安ホテルのビジネスをこの場所で続けるなら今しかない」、そう判断したのです。国内で最も混み合う、国内最大の国際空港なら格安の宿を探すお客様も大勢いるだろうし。
ところが事は容易には運びません。買ってからが長くて、まず空港の土地を管轄する地元自治体Sigtuna村からOK取んなきゃならない。氏の売り込みは完璧でした。これは「世界に類を見ない観光名物になる!」と訴えて、どうせやるなら空港の入り口の真正面にコンクリの土台作ってその上に置こう、着陸用設備は鉄のクレードル2台に繋ごうと、提案したのです。すると驚いたことに役所もすっかりその気になって、氏の建造プランを承認、実現までに必要な認可を全部出してくれたんですね。いやあ、やってみるもんです。
ホテルを泊まれる状態にすること、これも大変でした。ベッド何個か並べて清潔なシーツ敷いて機内の二流カフェテリアでカレー味のマッカと缶ビール、ピーナッツの袋、コーヒー売ってお仕舞い…というわけにはいきません。
ボーイング747-200は全450席。これを全部外に出して中をきれいに殺菌して、25室(各6㎡×高さ3m)に分け、配線工事も全部やり直しです。水道管もトイレも浴室も空調設備も新しいのに総入れ替えしました。飛行機は窓が開きませんからね…。
そして完成後は、スウェーデン国内の厳しい建築基準をすべてクリアするという最後の難関があります。
こうして壮大な冒険の結果、とうとう氏は2年がかりで完成。「Jumbo Hostel」と名づけたこのホステルは、今夏最終目的地まで牽引されていきました。
予約受付開始は12月です。パイロットとスチュワーデスの甘いファンタジーを乗せ(この近場でそれはないと思いますけど…)、クレイジーなスウェーデンの観光名所、格安ホテルが今ここに誕生というわけですね。僕も次回スカンジナビア観光の折には是非このアクアビット・オスカーさん夢のホテルにチェックインしたいと思います!
[Jumbo Hostel via Random Good Stuff]
Jesus Diaz(原文/訳:satomi)
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