ノーベル平和賞の授賞式が行われた12月10日、被爆地・広島でも核兵器廃絶を願う様々な動きがあった。広島市の原爆資料館で「被爆者の想いを聴く会」が開かれ、会場は満員。12人の被爆者がメッセージを発した。
原爆ドーム前で核兵器廃絶の訴え強化
広島市中区の原爆ドーム前に佐久間邦彦理事長が代表を務める県被団協と、県原水協の呼びかけで労働団体の関係者などが集まった。
この記事の画像(7枚)参加者全員ですべての核被害者に黙とうを捧げたあと、被爆者や平和運動に携わる人々がリレー方式で演説。「ノーベル平和賞を契機に核兵器廃絶への活動を強化しよう」と訴えた。
活動に参加した被爆者の高東征二さん(83)は「ノーベル平和賞もらったということは本当にうれしいんですが、まだまだこれからが大変だ。核廃絶、特に戦争をなくす方向での運動がいるんじゃないか」と話す。
被爆者12人が原爆資料館で思い語る
一方、原爆資料館では12人の被爆者が集まり「被爆者の想いを聴く会」が開かれた。アント広島、ひろしまNPOセンターなどの市民団体が、オスロに行けない被爆者の思いを聞きたいと企画。満員の聴衆を前に、広島で被爆した一人一人が今の心境を語った。
15歳のとき被爆した切明千枝子さん。
「亡くなった方たちのことを思い出すと喜んでばかりもいられないような気がしています。生き残ったものたち、次の世代の人たちが必死で平和を守っていきましょう。そのことだけが、あのときむごい死に方をしてこの世を去った方へのたった一つのご供養だと私は思っております」
9歳のとき入市被爆した豊永恵三郎さん。
「被爆者だけじゃなくて核の被害者はたくさんいるじゃないですか。これからは被爆者だけの運動ではなく、多くの核被害者、グローバル被爆者としての運動をわれわれはやっていく必要がある。特に若い人にそれを望みたい」
亡くなった被爆者にもノーベル賞を
今回、選考にあたったノーベル賞委員会のフリードネス委員長はFNNの単独インタビューに応じ、「被爆者が何十年にもわたって、すでに亡くなった方も含めて証言活動を続けてきたことを重視している」と述べた。被爆者の心から亡くなった被爆者への敬意が消えることはない。
2歳のとき爆心地から2.3キロで被爆した山田寿美子さん。
「私の両親を含め、苦しんで亡くなった多くの被爆者、そして今なお苦しんでいる多くの被爆者、そういう人たちのためにこのノーベル賞は与えられたものだと思う」
14歳のとき爆心地から1.5キロで被爆した森下弘さん。
「若い人たちに本気で自分のこととして頑張ってもらいたい」
集まった人々は、被爆者の声に熱心に耳を傾け、ここにいる被爆者もノーベル平和賞の受賞者だと温かい拍手を送っていた。
(テレビ新広島)