料理の「さしすせそ」、順番違うとどうなるの?
煮付けがよりおいしい味で食べられるのも、「さしすせそ」のおかげなのです。
「料理(調味料)のさしすせそ」といえば、さ:砂糖、し:塩、す:お酢、せ:醤油(せうゆ)、そ:味噌―これが、料理に入れる調味料の順番からきていることは、おそらく誰もが知っていることだろう。

醤油や味噌は風味が大切だから後で入れるとか、だいたいの理屈も知ってるつもりだし、昔から一応、順番を守るようにはしているが、でも、実際のところ、どれだけ重要なのかはわからない。
この順番をひっくり返したら、台無しになるものなのか。
また、これは和食の煮物のイメージだが、他の調理法や、他の国の料理ではどうなのか? 料理記者の友人に聞くと、「あくまで経験に基づいたことと伝聞による個人的な返答だけど……」と前置きし、こんな回答をくれた。

「『さしすせそ』は、料理に味を染みこませる順番であり、煮物の知恵と言っていいのではないかと思います」
砂糖は親水性が高く、先に入れないと味がしみにくいこと、「塩」は浸透圧作用でタンパク質の表面を固める、などの理由でこの順番だが、一般の家庭でそこまで味にこだわる人はそう多くないのでは? という。
「例えば肉じゃがなんか、全調味料を一度に入れたりすることもあるでしょうし、昔、田舎などでは調理の知識がなくて、いきなり醤油とかで煮てじゃがいもが硬くなってしまう場合もあったようです。でも、それが普通だと思って育った人は硬めに煮えたじゃがいもが好みという場合もありますよね」
また、醤油や味噌のような発酵調味料は、基本的には加熱することで風味が損なわれていくので、本来は火をとめてから味噌を溶かすくらいでちょうどいいくらいだとか。
「ただし、八丁味噌のような煮込むべき味噌もあるので、一概には言い切れない。そういうところが調味料の面白さでもありますよね」

ちなみに、和食以外ではどうなのか?
「西洋料理では、砂糖を料理に使うこと自体がまれなので、発酵調味料で煮込む料理はおそらくないと思います。また、インド料理にも砂糖を加えて煮込む料理はないのでは?」

では、「さしすせそ」以外の調味料、たとえばマヨネーズやケチャップなどは、どんなタイミングで入れたらいいのか。
「ケチャップは、要するに濃いトマトソースなので、好みのタイミングで入れればよいのでは? 焦げやすいから炒めるなら最後、煮るならはじめの方からでも、味を調える目的とするなら最後でも。マヨネーズは本来、加熱には向かず、加熱すると分離します。入れる順序というよりは、短時間で調理するに尽きますよね」

「さしすせその原則」はあくまで原則。要は、料理の性格と素材と調味料の性質をよく理解した上で、調理することのようです。

(田幸和歌子)
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